群狼
―北方の森 湖のほとりの山小屋―
山小屋の中には3人の人間がいた。
一人はベッドで横たわる男。もう一人は狩人のような女性。もう一人は大きなロッドを持った魔法使いのような格好の、牛乳の瓶底みたいな丸眼鏡をした女性だった。
「サリアリ!」
チムチムが女性に話しかけた。
「チムチム! どうしたの、こんなところで?」
その質問は俺達も相手にしたかった。
「屋敷の人にあなた達の帰りが遅いと聞いて、探しにやってきました」
俺はサリアリと呼ばれた女性の疑問に答えた。
「予定より帰りが一日遅れてしまったからな。心配もされるか」
狩人の女性が話しに加わった。
「私達、湖のほとりで採取中に魔物に襲われたの。キラーグリズリーは倒したんだけど、ジャイアントスパイダーの麻痺毒に道案内の人がやられちゃって・・・」
ベッドに横たわる男を見た。
「自然治癒に任せていたの」
サリアリが付け加えた。エルルは言葉がわからないので、俺が翻訳した。
「あら、そちらの方は古代語で話されるの?」
サリアリがものめずらしげに俺とエルルの成り行きを見ていた。
「エルルなら、麻痺毒も直せるみたいです」
俺の言葉に、サリアリと狩人の女性は喜んだ。
「麻痺治療!」
エルルが神聖魔法を行使する。徐々に横たわっていた男性の容態は徐々に良くなった。
「・・・ありがとう。何とか動けそうだ」
そう言うと、横たわっていた男性が起き上がった。何とか歩けると言った感じだった。
「携帯する保存食などは殆ど無い。多少大変かもしれないが、早めに帰ろう」
狩人の女性がそう語った。
身支度を済ませ、早急に帰還する準備を整えた。
徐々に日が暮れ始めた頃、山小屋で合流した3人と街への帰路に着く。
「まずいわね。日が暮れ始めた。山の獣達が活発になり始める」
女狩人の言葉に、サリアリが周囲を警戒し始めた。
「え、ここまで俺達はまだ何にも遭遇してこなかったんですが・・・」
そう言いかけた時、俺はバウエルがそわそわしている事に気がついた。そして、後方にうなり始める。
と、遥か後方で狼の遠吠えが聞こえた。
「昨夜、あれらが小屋の周りを取り囲んでいたの」
サリアリが話を付け加えた。
「群狼、執拗に狩り、する。恐らく、追いかける」
チムチムがサリアリと頷きあった。
「病人が居るから早く進めないけれど、なるべく急ぎましょう」
エルルの言葉に俺は同意した。
みんな帰り道を急ぐ。・・・また狼の遠吠えが聴こえてきた。前よりも距離が近い。
「みんな。気をつけて! 間違いなく狼はこちらを狙っている!」
Battle Encounter! 「群狼」
隊列を変更し、いかなる状況にも対処可能なようにした。
俺とバウエルを先頭に、中間に病み上がりの男とサリアリ、その後ろにエルルとチムチム。最後尾に狩人の女性。なんて後衛向けの人だらけのパーティなのだろうか。
「しんがりはこちらで引き受ける。だけど、必ず後方から来るとは限らないから気をつけて!」
狩人の女性はそう叫んだ。厄介な事になった。前衛が一人も居ない状況で、狼達に包囲されている。
俺は弓に矢を番えた。獣との争いであるならば、狩りスキルでも対処可能な範囲だ。獣の気配を読む。バウエルの様子を注意深く観察しながら、狼達のおおよその方角を計る。
「後ろだ!」
俺は叫んだ。バウエルが後方に向かって吼え始めたからだ。
一匹の狼が飛び出してきた。俺は振り返りざまに矢を向け狙い定めて放つ!
ヒュッ!
放った矢はパーティ後方の木の幹に、カッ! と当たった。その脇を狼が走り抜ける。
「みんな、分散しないで円陣を組んで!」
サリアリが指示を飛ばす。
俺と狩人の女性は木々の間に矢を飛ばす。狼の動きはとてもすばやく、そして距離を縮めてこない為、決定打を与えるのは難しい。そもそも何匹居るのかも定かではない。
周囲から獣のうなり声が聞こえてくる。バウエルは周囲へ向かって賢明に吼えている。
ドッ! と地に足を突き、駆けてくる一匹の狼!
「全て、切り裂く、冷徹なる、刃よ。我が敵を、引き裂け、アイスアロー!」
チムチムがアイスアローをその狼へ向けて飛ばす。
狼は避けようとしたが、狙い違わずアイスアローの直撃を受けた。
「魔法、自動追尾。多少、狙い、ずれても、当たる」
チムチムがぐっ、と拳を握った。サリアリがなにやら長い詠唱に入っている。
「サリアリ、範囲魔法、唱えている。時間、稼ぐ」
「とにかく矢を放っているよぉ!」
俺は矢継ぎ早に矢を放ちながらそう答えた。
と、俺が矢を番える一瞬の隙を狙った一匹の狼が飛び掛ってくる。
「しまった!」
俺は思わず腕で狼の突撃を阻もうと身構えた!
そこにバウエルが横から狼へ飛び掛った。横からの突進で、バウエルは狼を退ける。
「みんな、サリアリの周り、集まる」
チムチムがそう叫んだので、全員が一気にサリアリを中心とした密集陣形を取った。
「怒れる大地よ、奮起せよ! グランドプロチュバランス!」
サリアリは大きなロッドの先端を、どんと大地に突き立てた。
と、俺達の周囲に円を描くように、ズドドド! と、大地から岩が突き上がり天を貫いていく。波状に広がり、周囲10から20メートルを一掃する!
隆起した岩に腹部を貫かれた狼、或いは空に跳ね上げられた狼が吹っ飛ばされていく光景が見えた。その数、7,8匹。
狼達が悲鳴を上げるように逃亡して行った。
Victory! Result なし




