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新たなパーティメンバー

「チムチムをこのギルドにか? そうか、俺達の仲間になってもらえばいいんだ!」

「チムチム、ここのギルド、登録? あなた達、ここギルドの人?」

「そう、俺達はここのギルドの新米メンバーなんだ」

「チムチム、あなた達、仲間になって良い?」

「いいとも! エルル? 仲間になるってさ!」


 エルルもうれしそうだ。


「俺達は新しい仲間を探していた!」


 あんな魔法を使える人、こちらからお願いしたいくらいだった。

 さっそくギルドへの登録手続きを進める。書類関連を追え、いつもの水晶球による冒険者診断を始めることとなった。


「お姉さん、朝も早いんですね」


 俺は冒険者ギルドの受付嬢が、いつものお姉さんであることに気がついて挨拶をした。


「ええ、そういうあなた達は珍しく、朝早くから来ているのね」


 そう言いながら、チムチムの水晶球診断が始まる。


「では、こちらの水晶球に手をかざしてください。これはあなたの能力を測る水晶球。あなたの成るべき姿を指し示すでしょう・・・あらあらあらぁ。こちらの女性の方は魔力がかなりずば抜けて高いみたいですよ。他は平均をやや下回るくらいですが、それを補って有り余る魔力の高さです。初期職業は…既にウィッチのようですね」


 元々が魔法使いの家の生まれであったため、職業はウィッチでスキルも基本魔術を所持していたようだった。


「こんごともよろしく、チムチムさん。冒険者ギルド、ゼカイアはあなたを歓迎します」


 受付嬢が始まりの挨拶を述べる。

 新たな仲間の誕生だった。ギルド内から歓声が上がる。登録冒険者の数はそのギルドの規模、強さを表す。ギルドが有名であるほど仕事も増える為、人が来るのは皆が歓迎するし、同じギルドの冒険者達は助け合うことをモットーとしている為、新人が増えることも歓迎していた。

 俺達は頼んでいた朝食に加えて、エールを頼んで祝杯を上げた。早朝からお酒を呑むのも初めての体験だった。祝いの席だから問題ないよな? エルルとチムチムは喜んでがばがば呑んでいたが。


「よろしく、チムチム!」


 エルルがチムチムとジョッキを打ち鳴らす。こつん、じゃなくガツン、とやるのがこの世界の流儀のようだ。木のジョッキをがっちり打ち付けて、エールの泡が飛ぶ。


「よろしくな、チムチム!」


 俺もチムチムとジョッキを打ち合う。雰囲気だけでも楽しかった。


「よろしく、エルル、シシトウ」


 俺の苗字、本当はシシドウなんだが、もうこのままでもいいかなと思えた。最近はそのほうがなれた。自分でもそう名乗っていたしな。


「新しい仲間との出会いを神に感謝~」


 エルルが手を重ね、目を閉じて神への感謝を伸べた。


「これで俺達のパーティにもアタッカーが増えた! 討伐系のクエストもいけそうだぜ!」


 アタッカーではあるが、後衛2、非戦闘員1、犬1のパーティだった。


「私、詠唱、時間がかかる。その間、敵をひきつける、人が必要」

「ん、そこは肉の壁。シシトウがいるから大丈夫」


 ゲームでも壁役は重要であるが、それを自分がやれるかと言うと・・・。


「まて、俺に壁役は無理だ! いいとこ囮役と言ってくれ!」

「じゃあ、シシトウは囮役で決まりね!」


 突撃役や壁役から囮役へのパーティ内ジョブチェンジ。生存率は高まったと思いたい。


「あ、アタッカーが増えたけど、根本的なパーティの問題は解決していないじゃないか!」

「やっぱりね。前衛職の人も欲しいよねぇ」

「シシトウ、前衛、無理?」

「無理無理無理無理! 俺、実は雑用だから! バウエル、一緒に囮役、頑張ってみないか?」


 「バウ?」と、バウエルが不思議そうに俺の顔を覗き上げる。


「なぁ、エルル。バウエル、人間の言葉をしゃべり始めたりしないかな」


 ファンタジーのマスコットは人間の言葉をしゃべったりしている。バウエルも人間の言葉をしゃべり始めたりしないだろうか。


「なぁに言ってんのよ。犬が人間の言葉をしゃべるはずが無いじゃない。プークスクス!シシトウったら夢見がちな少年みたい!」


 エルルが不自然な笑い声を出す。


「え、なんか笑われた」

「魔法使い、使い魔と意思、交わす。それ、覚える」


 チムチムがフォローしてくれた。


「え、雑用でもその使い魔スキル、覚えられるの?」

「動物使い、いる。彼ら、『動物会話』、で、覚える。チムチム、それ覚えていない。だれか、知る人、探す」

「動物会話はコモンスキル扱いなんだ? 知らなかった」


 エルルが意外そうなことを知って感心している。


「動物会話、魔法使い、使い魔を使役する。その為、覚える。動物使い、動物を使役する。その為覚える。用途同じ。同一スキル」


 ゆえに共通スキル。専門のスキルではないと言う事は、村人職でも覚えることが可能。すなわち、雑用でも覚えられるスキル、と言う事だ。


「よぉーっし、いつか覚えるぞ!」


 俺は新たな目標も見つかった。これからが楽しみだった。

 早朝に開かれたささやかな宴。終わるのはまだまだ先だ。


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