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船の捜索

「なんだろう、あの人達。一人の女の子を乱暴に扱って!」


 エルルが怒りながら魔法使いの女の子に駆け寄る。


「あ、あなた達、何者ですか? なぜあなた、古代語、話す?」


 魔法使いの女の子が少し警戒していた。エルルの言葉は古代語と言う物のようだった。どうやらチムチムはエルルの言葉がわかるようだ。


「大丈夫。私はエルル、ただの通りすがりの大神官よ」


 そういうと、エルルは擦りむいていた魔法使いの女の子の傷をあっという間に治した。エルルにはチムチムの言葉はわからないようだが、雰囲気で把握したようだ。それを受けて、チムチムは古代語でエルルと話すようになる。


「何か揉めていたようなんだけど、なにがあったんだ?」


 俺は魔法使いの女の子に話を聞こうとした。が、先ほどの船から船員が一人顔を出し、まだ居たのかといわんばかりの表情をしたため、場所を変えることにした。


―ザーラムの港沿いの喫茶店―

温かなお茶を頂きながら、俺達は魔法使いの女の子の話を聞くことになった。


「私、チムチム。この国の遥か南、別の島から、来た。魔法使い、見習い。修行、するため」

「チムチムは先ほどの船と何の関わりが?」


 エルルがチムチムに尋ねた。


「あの船、チムチム、船旅に使った。この街着いた時、降りようとした。荷物、杖が無かった。あれ、大事なもの。無くす、困る」


 チムチムはお茶も口にせず、うつむいてしまった。


「ひどいこともあるものだな。エルル、ここは一つ彼女に協力しよう」

「シシトウもそう思う? わかった。何をするの?」


 エルルは最初から乗り気だったようだ。


「先ほどの船員がにやにやしていたのが気になる。杖が宝石を埋め込んだ高級品であるらしいことも気にかかるんだよ。ここは一つ、深夜にあの船に乗り込んでみよう」


「あのガラの悪い船員達、何か隠しているわけね」

「かも知れないって話さ。あの船は明日に出港するらしいから、まだ今夜に忍び込める」


Quest Set! 「停泊船を捜査せよ!」 Get Ready? ………Go!


―夜のザーラムの港―

日中は船員達がせわしなく作業をしている為、俺達は深夜になるのを待った。

 夜の停泊場。波の音がちゃぷちゃぷと聞こえるばかりで、人の気配などは無い。船員達は皆酒場へ出払って酒盛り中のようだ。当然見張りなどは置いていない。


「そろそろ良さそうだ。みんな、準備は良いか?」


 俺はエルルとチムチムに尋ねる。バウエルも連れて来ていた。危険感知に優れ、警戒スキルを所持した人間以上の能力がある。

 人気の居ない桟橋を渡る。


「よしよし、予想通り誰も居ないぞ!」


 明日から出向となる船。となれば、当然船員達は今のうちに遊んでおこうと思うわけだ。予想通りだった。

 俺達は人気の居ない船の中の捜索を始める。エルルには港側の見張りを頼んだ。


「船内は誰も居なさそうだが、もし仮に誰かと遭遇した場合、顔を見られる前に逃走するぞ」


 俺はチムチムに作戦を伝える。


「わかった。それまでに、荷物、見つける」


 今日を逃せばチャンスは無い。明日には彼らは出航してしまう。


「まずは客室を探そう。チムチム、案内してくれ」

「わかった」


 チムチムはこの船で島から船旅してきた。ならば、まずは自分の客室に荷物を忘れてきた可能性を考慮した。

 甲板から船室へ下りる入り口を見つけ出して降りていく。中は真っ暗の為、持ってきたカンテラ(500G)に火を灯す。通路に窓は無い為、外から明かりが見つかることもなさそうだった。


「場所は覚えているか?」

「309号室」


 チムチムは短く答えて、先導して歩き始めた。

真っ暗で人の居ない船の中。しばらく歩くと、壁に309号室と書かれたプレートのある部屋の前に来る。


「ここ」


 俺はチムチムに促し、彼女は船室を探し始める。探すこと数分。


「やっぱり、無い」


 チムチムが残念そうにうなだれる。と、そのときであった。バウエルが「ワンワン!」と元気そうに吼えた。


「どうした? バウエル」


 バウエルは、ダダダッと走り始めた。


「え、どこに行くんだよ、バウエル! まさか、ついて来いというのか?」


 以前の薬草探しの時のこともあった。ここは一つバウエルを追いかけてみることにした。

 バウエルの鳴き声を手がかりに後を追う。船倉を二つ下がった最下層。とある倉庫の扉の前にバウエルは居た。


「どうしたんだよ。こんなところで・・・」

「ここ、倉庫、みたい。チムチム、探す」


 チムチムが扉を開けて入っていく。中は明かりが無いので、俺もカンテラを片手に後を追う。

中には沢山の積荷が置いてあった。輸出入品が置いてあるようだった。


「ありました」


 チムチムがうれしそうに叫んでいる。

 彼女の杖は雑貨品が積み込まれている場所に置いてあった。


「まさか、危うく売り飛ばされるところだったんじゃないだろうな」


 話を聞く限りは高級品らしいので、ありえない話ではなかった。


「ありえる。この宝石、かなり値打ちある」


 チムチムが紅玉のはめ込まれた杖の先端を指さす。そこには大粒のルビーがあり、カンテラの光に照らされて、赤く輝いていた。かなり目立つルビーの為、狙われるのも当然だった。


「しっかし、この船の連中は盗品まで売りさばこうとするのか。ろくなことしやがらないな」


 俺は近くの積荷の箱に被せられていた布を開ける。と、その箱の中にあった葉っぱの束を見て、チムチムの表情が変った。


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