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理解がありすぎる(※深刻なのは当事者だけです)



 運命の出会いをした次の日。文化祭ももうすぐというところで慌ただしい校内を友人である隆弘と歩いていた。

「うちのヒメサマが買い出しから戻って以来様子がおかしいってみんな言ってるぜ?」

「あーうん」

 覇気のない声が漏れる。周りの声とかもうどうでもよかった。

 あの時のイケメンが忘れられない。昨夜も夢に出た。

 自分はホモなんだろうかと悶々とし、朝食にも喉が通らない始末。姉からも「しゃんとしなさいよ」と言われる始末だった。

「あのさー……」

「おう?」

「俺が実は男が好きだって言ったらどうする?」

「マジかー、って思う」

「なんでだよ! もっとこう、なんかあるだろ!」

「いや別に俺には関係ないし」

 ドン引きしないだけありがたいことなのだが釈然としない。

「で、誰だよ。イケるクチかそれとなく確認してやっから」

「いらねぇ。ていうか多分うちの生徒じゃないし……」

 あれだけ目立つ顔立ちで同じ中学生とも思えない。というか服装からしてうちの生徒ではなかったし。ジャージじゃなくて制服ならまだヒントになったかもしれないが。

「へぇ、一目惚れってやつか」

「悪いかよ」

「いや、お前いつも俺は男に興味ないって言ってたから意外だなーって」

 確かに俺は野郎からもたまにそういう目で見られたことはあるし、顔も女顔のせいで勘違いされるが女装は好き好んでしてるわけでもないし、カマホモ野郎でもない。

 それなのに初恋は一度ぶつかっただけの男だもんなぁ……。


「仮にもし付き合えたとしてどうすんだ?」

「どうするって、そりゃ……デー……」

 デートと言いかけて口を閉ざす。冷静に考えたら男同士のデートって何するんだ?

「ば、バッティングセンター行く……」

「友達でいいじゃねぇか」

 そう、実際何すればいいのかわからない。ゲーセン行ったりカラオケ行くなら別に友人関係で問題ないし。

「そりゃお前、ヤることは一つだろ」

 そう後ろから声をかけてきた人物に思わず焦って振り返る。今の話をどこから聞いていたのか。

「あ、加山先輩」

 一つ上の先輩である加山大輝。彼は軽いノリで既に何人とも付き合ったことがあると噂される男だ。隆弘が部活で知り合ったのをきっかけに俺面識がある。

「あの……今の話どこから……」

「ん? 付き合ったらどうしたいかってあたりだけど? いや〜草食系だな〜と思って」

「先輩は経験豊富っぽいですもんね」

 何人か既に食ってそうなオーラがある。

 ともかく、さすがに隆弘以外にこの話をするわけにもいかないし早いところ追い払いたい、と思った矢先に隆弘が名案だと言わんばかりに指を鳴らした。

「加山先輩。こいつ、男が好きみたいなんですけどどうすればうまくいきますかね」

「殺すぞ隆弘!!」

 初めて他人に殺意を抱いた。

 一方加山先輩は少し驚いたような顔をしたあと困ったように唸る。

「俺もそこまで詳しくないからなあー。まあいずれ――」


「おい」


 突然、加山先輩が後ろに引かれ、痛そうな声をあげる。

「いでででで!? 歩、耳ちぎれるちぎれる――」

「このバカ山。いつからサボれるほど偉い身分になった?」

 ドスの効いた声の男子生徒が加山先輩を睨む。その人に見覚えがあった。


 参木歩。文武両道のイケメンで女子生徒からの人気も高い人物。生徒会長を務めたこともあった人物で直接面識はないもののよく知っている人物だ。


「ほら歩〜。お前そっち詳しいだろ」

「いきなりなんだ」

 ようやく解放された加山先輩。参木先輩は鬱陶しそうな顔でへらへら笑う加山先輩を睨んでいる。


「ほら、野郎同士の経験ならおまえの方が多いだろ?」


 とんでもない爆弾発言に気絶したくなる。学校一のイケメン元生徒会長が、なんだって?

「……場所変えるぞ、このバカ山」










「どったの琉花。せっかくの王子様フェイスが台無しだよ」

「いや……」

 校内を友人の紘子と歩いていると心配そうに言われ、昨日から悩み続けていることを小さな声で打ち明ける。

「もし僕が実はレズって言ったらどうする?」

「詳しく話を聞こうじゃないの」

 メガネを輝かせる紘子の食い気味な様子に思わず一歩引いてしまう。

「君……腐女子じゃなかったっけ?」

「どっちもいけるだけよ。百合だろうが薔薇だろうがレズだろうがホモだろうが美味しくいただくわ」

「ああ、そう……」


 恋煩い。ただ一度出会っただかの相手にこんなにも夢中になるなんて考えられないことだった。

「まさか女の子を好きになるなんて……」

「ルカたんにもようやく春がきたねー」

「すぐに冬がきそうだよ……」

「なんで? 女の子相手ならルカたん余裕で落とせそうじゃん」

「いや、普通に付き合うとなるとまた違うだろう……」

 学校内にファンとかいう謎の存在は確かにいるがあの子たちのように自分を好きになってくれるとも限らない。

 最悪軽蔑されるまである。

「大丈夫! なんなら私の本貸すわよ!」

「あははは……」

 理解はあるが当事者ではないからか微妙に見えない壁がある。創作物ではなく自分にとっては現実のことだ。

「……どうすればいいかなぁ……」

「あっ、そういえば、そっちの話に詳しい人知り合いにいるけど紹介しようか?」

「そっちの話に詳しい人……?」




当事者は(勘違いしてる)NLですが周りは色んな性癖乱舞なのでタグ見てわかる通り気をつけてください。

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