なんか‥生まれ変わりました
「‥‥‥‥、‥‥‥ミ‥ア!」
誰かに身体をゆすられたような気がして。
眠いんだよーと思いながら、うっすら目を開けて‥
目に入ってきた光景‥正確には髭面大男の顔に一瞬硬直して、
結論、ギャン泣きしました。
心の中では、まだ夢見てるのかなーとか、久々のリアルな夢だなーとか、私寝過ごしてないかなーとか考えてるんだけど、なんか膜を一枚隔てたように感じるのだ。うーん、やっぱりこれは夢かぁ。
「あらあらあら」
優しい声と共に身体に浮遊感を感じ、『夢の中の私』は思わず泣き止んだ。そのまま抱き上げられ、優しい手が背中を軽くトントンと叩く。
「ダリウス。ダメじゃない‥ちゃんとおヒゲを剃ってからじゃないと‥ミリアちゃんが驚いちゃうわ」
ねー、こわかったわよねぇと微笑む女の人をじーっと見つめる『私』。輝く金色の髪に澄み切った碧色の瞳。すごく優しそうな女の人だ。そして、心配になるぐらいの色白美人さん。
「ヒルデ‥‥いや、だってラクシミリアにすぐ会いたくてさ‥」
僕だって待ちきれなかったんだよ、とボサボサの頭をかきながら言う髭面大男さん、ことダリウス。くすんだ灰色の髪に、伸び切った前髪の間から覗く瞳は穏やかな茶色をしているが、それには羨望の色が見て取れる。
「そんなに慌てなくったっても逃げたりしないんだから。ほら、おヒゲとついでに髪もさっぱりしてらっしゃいな、あなた。」
「愛する奥さんにそう言われたら行くしかないな‥すぐ戻ってくるから!」
二人を観察してると、話がまとまったのか、ダリウスさんは部屋を慌ただしく出て行った。そして、それをにこやかに見送るヒルデさん。
(なるほど‥この二人は夫婦なわけね。
なんか美女と野獣みたい‥)
ふむふむと一人失礼なことを考えていると、『私』を抱き上げていたヒルデさんがもとのベットに『私』を寝かせて。
「ほんとに仕方のない人ねぇ。
ミリアちゃん、あの人がお父様よ。仲良くしてあげてね。」
くすくす笑いながら告げられたその言葉に、『私』はビクンと身体が勝手に反応してしまった。
(‥あれ?)
なんかさっきまで感じてた膜みたいなのが、なくなった‥?
五感が、急にリアルに感じて戸惑う私に、ヒルデさんはよしよしと頭を撫でてくれる。
「ミリアちゃん‥元気に育ってちょうだいね。‥‥この子は絶対見つけるわ‥!
‥‥‥私の命に代えても」
ヒルデさんが最後になんて言っていたかは小さくて聞き取れなかったが、強い決意を宿した瞳に私は視線を向けることしかできなかった。
この後、息を切らせて戻ってきたダリウスさんが見違えるような別人仕様になっていて、人見知りした私が再びギャン泣きしてダリウスさんを落ち込ませるイベントがあったのだがこれはまた別の話だ。