無理な返還計画は召喚側の負担となります
神官のアルゲディと魔術師のトゥバンとはそれぞれ、大神官と王宮魔術師筆頭に報告の義務があるとかで城の入口で別れた。
勇者のナギサは客室に強制連行。「国王に会わせろ―!!」と叫ぶ声をこだませながら。
俺は自室に邪魔な荷物と装備を置くと、廊下を歩いている使用人を呼び止め、ナギサに割り当てられた部屋を尋ねる。勇者が帰還することは前もって知られていたから、部屋も準備されている筈だ。
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わたしは草薙渚。京都にある出主通学園の高等部に通う2年生。自分で言うのもなんだけど、そこそこ良い容姿をしている。
だけどわたしの通う出主通学園は普通とは異なる学校なのだ。
出主通学園は願書を出せば入学できる、定員オーバーすれば入試の成績の下から順に入学させる、裕福な家の落ちこぼれ救済学校だ。
本来なら鬼畜系18禁乙女ゲーム『三月兎は狂ってる~聖痕学園~』の悪役令嬢であるわたしは聖痕学園に進学するはずだった。
進学出来るだけの学力があれば・・・
そして今、わたしは異世界に召喚されてしまった。
どうしてこうなった?!
わたしを召喚した国の王は、わたしが勇者だと言ったのはまだ良い。
でも、勇者だからって、いきなり魔王倒して来いって、城の外に追い出された!
一人じゃなかったけど、戦士と神官と魔術師がいるけど。
彼らはともかく、わたしはいきなり召喚されて、いきなり城の外に、猫の子でも捨てるかのように放り出された。
召喚された異世界人にはチートがあるから、修行は必要ないって。
わたしのチートはなんなの?
教えてよ、それくらい。
魔物と戦闘させられたけど、初めての戦闘だからまったくの役立たず。
平成の世に生きている日本人が、魔物だからって、殺せるような神経してるわけないでしょ?!
それでもどうにか魔王を倒して、召喚の国(正式名称は『神聖ジュゲムジュゲム・・・』って、長! 覚えられないので、通称・召喚の国)の王城に戻ってきた。
まずは部屋で旅の疲れをお取り下さい?
疲れが取れるはずがない。奴が押しかけてくるに決まっている。報告義務のない、戦士が。
わたしは強引に部屋に連れて行かれる途中、国王への取次を頼んだ。
部屋に通されると、思ったとおり、すぐに戦士が押しかけて来て、用意されてあった菓子やら軽食を勝手につまみ食いして、一瞬、変な顔をした。
国王に元の世界に戻してもらいたいのに会えないと戦士に愚痴ると、「召喚された人物は今まで誰一人として元の世界に戻れなかった」とのこと。
は?
元の世界に戻してくれるから、あの旅を我慢して続けていたのに、元の世界に戻れないなら何の意味もないことじゃない。
更にわたしの食事にどうやら毒が入っていたらしい。
戦士がわたしの部屋に押しかけてきていたせいで、食べてなかったけど、ホント、ふざけんな!
勝手にお菓子やら食事を食べられて、わたしの命が助かったって、なんて冗談!!
わたしは戦士の言葉が本当かどうか確かめるべく、国王に会いに行くことにした。
泣き落としても、怒り狂っても、会えず、仕方がないから国王の寝室に忍び込んで、ナイフを突きつけたら国王は言った、「召喚はできても元の世界に戻す方法はない」と。
ふ・ざ・け・ん・な!!
わたしは城を飛び出し、可愛い魔物たちを集める旅に出た。
後にわたしを魔王だと呼び始める人もいたけど、「これは一大テーマパークだ」って、言っているでしょ!(怒)