17、悪には外道を
この前、爆破した研究所で俺は奴等が人をどこで仕入れているのかを調べていた
この国には奴隷制度がない
否、前勇者により撤廃されてなくなったというのが正しい
奴隷制度がないなら人は買えない
つまり人拐いだろう、それをどこがやっているのか
ベイルよ何故その情報は盗んでない?
資料は殆ど燃えて読めたものじゃないが、アンナから教わった上級の再生魔法でなんとかなった
読んで燃やした
「ふむ、なるほど、異世界ではありがちなことだろうな」
これは貴族の屋敷にお邪魔しにいかないとな
「お待ちしておりました勇者様!」
てな訳で思い立ったら即行動
早速、訪問させていただきました
出迎えてくれたのは人の良さそうな笑みを浮かべたハインツ男爵……だったか?
「いえいえ、いきなりお邪魔してしまい申し訳ありません」
よく出来ている作り笑いだな流石は貴族
こちらも作り笑いをしておこう
「では、こちらへどうぞ」
貴族との世間話、腹の探りあいは専門じゃないからそういうのが得意なミュラーに任せておいて俺は屋敷を観察する、警備の兵は見ている限り五人、罠はなしか……
勇者雑談中……?
「ではぁ、私達はこれで失礼しますぅ」
ミュラーの言葉でお開きになった
屋敷から離れたところで
「ソラ、どうだった?」
後ろに現れたソラに質問する
「……主の予想、当たり」
俺達が男爵と詰まらん会話している間、ソラは単独で屋敷内に侵入して探りを入れていた
拷問室があり、死体もいくつかあったと
「もう少し探るか……。すまんがソラ頼む」
「……了解した」
ソラの調査の結果、ハインツは貧民層の人間を甘い言葉で騙し家に連れ込み、飯に薬を盛り生け捕り、趣味の拷問にかけて殺していると
6割は無傷で研究所に売っているとのこと
判定、ギルティ
貴族の罪なんて金次第でどうにでもなると少し前にあった事件で知っている
しかも王の研究所に必要な材料を売っているんだ罪になるどころか王はこちらを殺りにくるかもしれない
悪は裁かなくてはいけないよな
貧民達の恨み、はらさでおくべきか
その夜、俺、ソラ、ベイルの盗賊団で夜襲を仕掛けた
警備兵は盗賊団で囲ってボコって縛っている
「てなわけで、お前さんを殺しに来ましたー」
ハインツ男爵殿に笑顔で死刑宣告を
「き、貴様それでも勇者か!?」
ハインツは昼とは違う醜い顔を晒していた
「勇者が正義の味方で、どんな悪党でも殺さず裁くとでも?少なくとも俺は違うね。俺は人間なんだから」
俺はドヤ顔でそう言った
「ぐ……ッ!いいではないか!なんの役にも立たない貧民層の家畜を好きに使おうと!私が役に立ててやってるんだむしろ感謝するべきだ!」
俺まだ貧民層のこと言ってないのに自滅したわー
「じゃあ、お前は何の役に立つんだハインツ?」
「この国のためどれだけ身を粉にして働いてきたと思う!?私ほど国に貢献してる人間はいまい!」
「は、無知な家畜がほざくな」
ただの罵倒、意味はない
「こ、この私を家畜だと……!?」
「家畜を家畜と言って何が悪い?お前もそういう人間、否、豚だろうが。
お前の貢献なんてな、実は何の役にも立ってないんだぜ?本当に知らなかったのか?お前は無価値で幾らでも替えのある道具だったってことを。
本当は知ってたんじゃないか?現実から目を逸らしてきただけだろう?」
本当は無価値とか替えがあるとか全く知らん、全部でまかせだ
「貴様ぁ!殺す殺してやるぞッ!」
反論がないだと……!?
「あぁ、いいぜ殺れるもんならなってみな。豚には到底無理なことを」
怒り狂ってるが何にもしてこない
所詮、その程度の豚ということか……
いたぶってじっくりとゆっくりと殺してやろうと思ってたが興が醒めた
「じゃあな、価値のない豚さんよ」
短剣を頭に投擲し、悲鳴を上げられるのも面倒だから喉にも投げておいた
そこにあるのは物言わぬただの肉の塊だった
呆気なく貴族殺しは終わった
「さて……、テメェ等!仕事は終いだ!金目の物を盗って撤退だ!」
ただ貴族殺しにきたと思った?残念!手っ取り早く稼ごうと思っただけさ!
ベイル達は雄樹に畏怖を覚えた
『兄貴をキレさせちゃいけないな……』
『怖い怖いすぎるよ。あの汚物を見るような目!』
『あれは勇者じゃないぜ!悪魔だ!』
「お前等、聞こえてるぜ?」
俺は笑顔で振り返った
『『『ヒィ……!』』』
あれ?笑顔なのに悲鳴あげられた解せぬ
「……主、これ拾った」
ソラが目の死んだ幼女を連れてきた……幼女の頭掴んで
「おい馬鹿、頭掴んじゃ駄目だろ離しなさい!」
ソラは素直にその場で幼女を離した……
下には何故か短剣があるってのに
盗賊連中が全力で走りスライディングをかまして短剣を蹴り飛ばして幼女をキャッチした
『『『場所考えようなッ!』』』
全くだぜ。
俺は悪くないよな?
「で、どこの拷問室で拾ったんだ?」
『他にもあるんですか!?』
『『『探せぇ!』』』
今更冗談です、なんて言えない
「……この娘だけ生きていたから連れてきた」
外見から傷はないようだが、精神的に追い詰められてるのかこの幼女
「そうか。お前はその子をどうしたい?」
「……飼いたい」
「人間を飼うって言っちゃ駄目だぜ!?」
しかし、この幼女、心が死んでる気がするけど回復するかなぁ
「……名はツバキで」
「勝手に名前付けちゃ駄目だろう……」
それにツバキってソラの前の名前だろうが
「…………。」
幼女、無・反・応
「まぁ、ここに置いていく訳にもいかないし、問題ないか」
ネロの家がまた賑やかに……無口、無表情、無反応の子供だからそれはないか
ネロの財布が悲鳴を上げることは確定だが
ハインツ殺害の事件は一時期街を騒がせたが三日で聞かなくなった
異世界でも人間飽きが早いものである
それは些細なことなのだ
問題はツバキが誰にも心を許さなかったのだ
ネロの爽やかスマイルはスルーされて少し落ち込んでた
馬鹿は全裸を初見からスルーされて地に沈んだ
俺は何もせず飯だけやった
ミュラーは見向きもしなかった……こいつヤバいわ
ソラはこの後、一週間掛けてツバキの心を開いた
ツバキがソラに笑顔を見せた時
「「「ソラさん、マジぱっねぇ……!」」」
と俺、ネロ、全裸は心の底から感嘆したのだった
ツバキは白い髪に紅い目、……メイド服だった
先日、ボロ布みたいな服じゃ駄目だろとなり、姫様がクロルにメイド服を持ってこさせ着せた
ソラに抱き付くツバキを見て
「ソラに妹できたみたいだなー」
「そうですわね」
「和みますね」
温かい目で見守るかー
家族が一人増えました
読んでいただきありがとうございます!
「貴族殺しが罪?バレなければよかろうなのだ!」
まさに外道!