閑話、雄樹の災難
「あー、勇者君危なーい」
ビシャーン!と油断していた俺に何かの薬がぶちまけられる
「……ジジイ、何の薬だ?」
俺は棒読みで転ぶ振りをして後ろから薬品をかけやがった《強欲》に低い声で問いかける
「いやいや、すまないねぇ。手が滑って呪われる液体をぶちまけてしまったよ」
クツクツと笑いぶかぶかな袖を振る老人
「……どういう呪いだ?効果次第ではお前を醜い水没死体に変えるが」
ジジイを包み込める程度の水を浮かべる
「大した呪いじゃあないさ。明日には解けるし命に関わるようなものでもない」
「御託は要らん。今すぐ死ぬか?」
「勇者君は思ってたより短気なんだねぇ」
お悩み相談というなのボランティアでこき使われたからな……大臣に
狐顔のクソ老害の大臣に
普通に部下使えや……!
腹立つわ……!仕事をきっちりやってしまう俺にもなぁ!
八つ当たりに《強欲》殺そうかな?別に大罪人だし誰も文句言わねぇよな……?
水の球体は俺の怒りを受け尋常ではない速度で沸騰する
「待ちたまえよ勇者君。流石に冗談では済まなくなるよ?分かった言おう教えよう呪いと言っても殆どの者は喜んで被る類いのものだ。その効果は――」
ジジイが息を吸い勿体ぶって告げる呪いの効果は
「ラッキースケベが起こるようになる」
「ギルティ。死刑執行する」
ジジイが効果を言い終わると同時にシャレにならない熱湯と化した球体を放り投げる
「残念、時間を稼がせすぎたねぇ」
熱湯球は馬鹿にするように笑うジジイを蒸発させることなくフッ、と消え去る
「ち……、小賢しい大人しく死ね」
【亜空間】から短剣を抜きジジイに肉薄する
「小生はまだ死にたくないねぇ。欲に底はないのだから」
急に視界を白い光が覆う
「目眩ましか……」
反射的に目を瞑りジジイのいた場所に短剣を振るが手応えがなかった
「てか、何処に消えやがった?」
ジジイは素人も素人故、気配を消すなどの芸当は出来ない
それなのにジジイの気配が消えた
野郎、シ○ンバラでも使って逃げたか?
もう光は消えただろうと判断し目を開くと
「何処やねん」
シャ○バラで飛ばされたのは俺の方だったようだ
《狐の巣穴》の中ではなく街中にいた
恐らくはサンドラ王国内
しかしサンドラ王国は大国と言われるだけあって無駄に広い
暇潰しに国を探検することはあったが最近は面倒になりしていない
この国、知らない場所多いのに面倒なことを……
知らない場所は不安になるのが引きこもりの性
さっさと帰ろうと【空間転移】を使おうとして
「……?」
異変に気付く
魔法が使えない
魔力が練れない
「ジジイがぶっかけた薬の効果か……!」
汗が背中を伝う
これはヤヴァイ……
魔力が練れないと帰れないし【亜空間】も開けない
【亜空間】が開けないと俺は手ぶら……いや、ジジイ叩き斬ろうと取り出した短剣だけはあった
兎に角、非常事態である
内心焦りまくりだがそれをおくびにも出さないのだ俺クオリティー
誰がどう見ても普通の――剥き出しの短剣を持った危ない人だ
…………。騎士団に通報とかされてねぇよな?
チラチラと道行く人々が俺を見てくるけど心配しなくていいよな?
「それはさておき適当にさまようか」
よく道に迷う俺は帰り道が分からなくなれば適当に歩き回る
遭難したらその場でじっとして救援を待つ?馬鹿め!待つな!行動しろ!それが俺の実体験で得た答えだ
迷子慣れではない断じてないのだ……!
俺は短剣をどうするか考えながら歩き出す
「わぁ!どいてどいてー!」
遠くから叫び声が聞こえそれが段々と近付いてくる
それと同時に悪寒が走る
そこで俺はジジイにかけられた呪いを思い出す
ラッキースケベが起こるようになる呪い
ラッキースケベとは偶然起こるイベントだというのに呪いで強制発生とかラッキーじゃねぇじゃん
そもそも俺はそういうものを好かないアンラッキーでしかない
ラッキースケベ乱発するハーレム系主人公は脳漿をぶちまければいいと思う
ハーレムは嫌いです
「そこの人どいてー!」
何やら物凄い勢いで坂道を女が滑走してくる……俺に向かって
なるほど、このまま行けば俺の顔面に女が胸やら股やらから突っ込んでくるんだろう
だが、甘い!常人なら避けれなかっただろうが魔法を使えなくても俺の身体能力は物凄い勢いであろうと避けれる!
「たわいなし」
踊るように全身黒タイツの暗殺者のように女を華麗に避けてみせる
そして避けた先にはステルス系女の姿
だが、その胸に無様に突っ込むようなことはなく
「たわいなし」
足を踏ん張り仰け反り耐えてみせる
更に何故か上から降ってきた女を危険なく受け止め
「たわいなし」
スライディングをかましてきた女を跳んで躱し
「たわいなし」
スライディングに足を取られ倒れ込んできた女には落ちてきた女を盾にすることで対処
「たわいなし」
暴漢に襲われそうになっている女を押し倒すや庇うなどの下策をとらず暴漢を蹴り倒し
「たわいなし」
「たわいなし!」
「たわいなしッ!」
ソラと遭遇するまでその偶然という名の襲撃は続いた
ソラが仮面してなかったら大変なことになっていただろう
後日、《狐の巣穴》でジジイが生死の狭間をさまよっていたらしいが俺の知ったことではない
……しぶといジジイだ
読んでいただきありがとうございます!
はいはーい!天の邪鬼でーす!
小説書くペースとモチベーションが下がりつつある天の邪鬼でーす!
今のテンションではこの程度しか書けないんだぜ……
閑話というのに相応しい無駄話だよ
やっちまったな失敗さ
だが、投稿した!後悔はない!
お兄さんは天の邪鬼だからね!
ないわーと思ったら投稿したくなっちまうんだよ!
本能には逆らえないぜ……
こんなお兄さんを見捨てず読んでくれる読者様には感謝いたしますとも!
心の底からありがとう!
そして、批評があれば聞きますよ!
「貴方に残された最後の倫理の砦。この世でもっとも理解に苦しむ常識。これを破壊するのが私の使命――即ち、下着 履かせ ない。」
by あいつら未来に生きてるなとは思わなかった天の邪鬼