113、ゴブリンと全裸
何故か俺はゴブリンの住処でお茶をいただいておりますですはい
「おい、全裸なんでこうなった?」
隣で物珍しげに茶を取る全裸に状況の解説を求めた
「知ら……茶不味ぅぅぅ!」
全裸は茶を吹き出す
悪食なゴブリンの出す紫色でブクブク沸騰してる茶が美味いと思ってたのだろうか?
『グキャ、ギギョ』
ゴブリンが何か言ってるが俺にゴブリン語なんざ分からないゴブリン語があるかさえ分からない
ゴブリンの言葉を通訳する魔法は存在しないだろう
ゴブリンなど頭の悪い魔物が理性を持っているとは思わないしゴブリンのような取るに足らない魔物と意思を通わす意味がない
いや、あるかもしれないけど苦労とメリットが釣り合っていないから誰も作らなかった
『グギ、ガギュ』
「礼なんていらねぇよ」
しかし、全裸はゴブリン語が分かるようだ
そもそも、俺と全裸がゴブリンの住処に案内された原因も全裸がゴブリンの言葉を理解し余計なことに首を突っ込んだからだった
それは少し前、ショコラを蝕んでいる毒を解毒するための材料を取るため盾を持って洞窟を探索しているときのことだった
「それ行け、人喰い花ホイホイ!」
「いやあああ、喰われるぅ!」
俺はカニバル・フラワーを誘き寄せるために全裸を適当に血痕がある場所に投げ入れていた
罠にかかったカニバル・フラワーは何もなかった地面から生えてきて巨大な口のような花弁で全裸をパックンし、俺にざっくり斬られた
「よし、カニバル・フラワーの根っこゲットだぜ」
斬ったカニバル・フラワーの寝を引き抜き【亜空間】に放り込む
「なぁ、俺が囮にならなくてもユウなら土属性魔法で引っこ抜けたんじゃね?」
死んだカニバル・フラワーの口から唾液まみれになって出てきたテオが聞いてくる
「馬鹿のくせによく分かったな」
驚きを隠せない
馬鹿のくせにその程度のことなら分かるのか
「あっれ!?じゃ、なんで俺喰われたの?なんで連れてこられたの!?」
「そんな分かりきった事聞くなよ。カニバル・フラワーに餌投げてみたかったからに決まってんだろ」
前世では食虫植物に虫を落とす程度だったが、異世界では人間版が出来て楽しい
素晴らしきかな異世界!
「そんな理由で俺、連れてこられたのかチクショー!」
馬鹿はチャット機を地面に叩きつける
『グギョオオオ!』
そのとき、いつも通りのほのぼのとして雰囲気を打ち破る絶叫が洞窟を木霊する
「さて、帰るか」
まぁ、誰かの絶叫なんて知ったことじゃない俺は【空間転移】で帰ろうとしたのだが
「今、助ける」
急にイケメンフェイスになった馬鹿が絶叫のした方向に全力でダッシュする
「おおおおー!」
俺はそのシュールさとおかしさに吹き出し腹を抑え見逃してしまった
「くっくっ、あの馬鹿、どこ行った?」
笑いの余韻に浸りながら全裸を探していると
再び吹き出してしまった
「お前って奴は最高の道化だな!」
腹を抱えて笑う俺にテオは何も言わない
てか、言えない状態にあった
俺は状況から何があったか推測する
おそらく、テオはカニバル・フラワーに喰われそうになっている子ゴブリンを庇ってカニバル・フラワーに挑みかかり、カニバル・フラワーは子ゴブリンより美味そうなテオに標的を一瞬でチェンジし反応出来なかったテオは頭をパクリされ、今プランプランとカニバル・フラワーの口元で首から下の胴体を揺らしている
何故か力なく垂れている手には親指を立てていた
「晩飯までには帰ってこいよー」
よく笑った俺はカニバル・フラワーに背を向け【空間転移】で帰ろうとして子ゴブリンに足を捕まれた
『グギ、ギョギョ』
何言ってんだがさっぱり分からないが醜い面を更に醜く歪めて何かを訴えてくる
全裸『たすきて』
チャット機にも何を伝えたいのかさっぱりな内容が書かれている
助けてと書きたかった訳じゃなかろうな?
『ガチョ、グギギ』
子ゴブリンが二匹しつこく何か言ってくる
元気がいいし――殺るか
俺は機嫌がいいときほど何かを殺したくなるのが悪い癖だ
前世では小物で堪えるしかなかった衝動憤を異世界では魔物で晴らしたい放題だ
異世界万歳
全裸『はやかたすかた』
チャット機には解読不能のメッセージが増えていく
ネロ『ユウ様、テオさんに何かあったんですか!?』
唯一、テオを心配するネロが遂に馬鹿の危険に反応する
全裸は不死だから心配するだけ無駄なのだが、ネロは苦しんでいる人がいたら手を差し伸べるタイプの人間
馬鹿で八割は自業自得のテオにも手を差し伸べる
俺が前世でよく利用にしてきたタイプの人間であり、俺がもっとも嫌いなタイプの人間
黒勇者『ちょっと捕食されてるだけだ気にすんな』
ネロ『いや、気にしますよ!助けましょうよ!』
偽善者であるネロを精神的に壊したくなることはよくあるが、聖剣を持っていてクロルより強く俺の手駒で最強、それがなくても色々利用する予定なので我慢している
まぁ、気分屋の俺は今そういう気分ってだけでいつもネロを不愉快に思ってる訳じゃないから苦労はない
第六姫『ユウ様?ネロが助けろと言ってますのよ』
愛しのネロのため援護射撃をする姫様
黒勇者『姫様が言うなら仕方ねぇや』
姫様の執事であるクロルも俺より強く、ネロと違い俺を殺すことに躊躇はない
主である姫様も俺を始末することをネロのためなら些事と思う性格
姫様の機嫌を損ねるのは得策ではないので従っておく
「【サンダー・ボルト】」
高電圧の雷がカニバル・フラワーを打つ
『『ギョギョ!?』』
子ゴブリンは驚き跳びはね俺から離れていった
そして、全裸を足まで飲み込んでいたカニバル・フラワーを黒焦げになり、中身の全裸も黒焦げになった
「上級魔法じゃ焦げすぎだな。炭しか残らねぇや」
カニバル・フラワーは踏むと砕け散り中から血煙が吹き出し全裸が再生した
「俺は生き返ってきたー!」
「よろしい。ならば帰るぞ」
【空間転移】のため全裸にアイアンクローをかける
「ユウ、ちょい待ってくんね」
アイアンクローで頭蓋をミシミシと軋ませながら全裸が真顔で待ったをかける
頭蓋陥没させているのに真顔を保つとは痛みに大分慣れてきたようだ
人としては何か終わってるけどな
「カニバル・フラワーにパックンされるのが癖になったか?変態め」
全裸にはソフィーレと同じ景色が見えているんだな
だが俺は寛容だ
盾が痛め付けられて喜ぶ気持ち悪い変態野郎でも捨てずに使い続けるさ
「違ぇよ!?なんでそんな蔑んだ目で見るんだ!?パックンさせたのお前だろうが!」
蔑んでないよー
これはデフォルトだよー
前世では常に他者を挑発する生き方だったからな
「二回目は好きでパックンされてたじゃねぇか」
「おいおい、それじゃ俺がまるで変態みたいじゃね?」
テオの中で全裸は変態のカテゴリーに属していないようだ
「助けてって叫び声が聞こえたから助けただけだぜ!」
「は?幻聴聞こえてんのか?だからあれほど落ちてる毒キノコを食うなと……」
「俺が毒キノコに負ける訳ないだろ?そっこで死ぬからな!」
なんでキメ顔なんだ?
アイアンクローされながらだとキモいことこの上ないぞ?
と、足にザラザラした感触が擦り寄ってきた
見下ろすと逃げた子ゴブリンだった
『ギョ……ゲギ』
ゴブリンの肌ザラザラだな
こっち見んな
潤んだ目で見るな
可愛くないから
せめて見るなら子猫に生まれ変わって出直してこい
「そいつ、ユウに『ありがとう』って言ってるぜ」
全裸が馬鹿みたいな笑みではなく優しく微笑み頷く
「…………。え?何?もしかして感動的場面のつもりか?頷いても何してほしいか伝わんねぇぞ?」
なんかウザい空気になったから取り敢えず嘲笑しブレイクしておいた
俺さ、こういうありがちな茶番嫌いなんだよ
「以心伝心で汲み取れよおおおお!」
「以心伝心の意味言ってみろ」
「ふ、以心が伝心することだろ?」
「予想通りの答えをありがとう馬鹿め」
アイアンクローで全裸の多少変化した頭を離す
「それでゴブリンの言葉が分かんのか全裸?ソフィーレの行きつけの病院って頭見てもらえたっけか……?」
魔物の言葉を理解できる魔法なんざ全裸ごときに使える訳がない
俺も使えないからな
英語と一緒で面倒なんだよあの魔法
他のは数学みたいなのにあれだけ英語と一緒でよく分からん文字を暗記しなくちゃならない
俺はすぐ諦めた
それを馬鹿が使えるはずがない
確実に幻聴だな
不死だからって殺りすぎて頭に影響が出たか
病院で治るか不安だな
「質問しながら全然信じてねぇな!?そうなんだな!?」
信じる要素がないからな
『ゴギャギギョ』
擦り寄ってきていた子ゴブリンが何かを言い駆け出した
「何?命を救われた礼がしたいから村に来いって?」
馬鹿が通訳して子ゴブリンを追っていく
「短い言葉に長い意味がこもってんな」
やっぱり適当なこと言ってたんだろうなと思いながら仕方なく着いていってやる
馬鹿の遊びに付き合ってやるくらいの余裕はある
大人だからな俺
チビじゃないからな断じて
読んでいただきありがとうございます!
はいはーい!天の邪鬼でーす!
頭のボケが進みまくり祭の天の邪鬼でーす!
この小説さ……ブックマーク抜きにして評価見るとpt11なんよー
でな?
最近、あげた短編小説のブックマーク抜きで評価見るとpt19なんだよー
畜……生……ッ!
なんだろうこの敗北感
半年続けてる小説よりパッとでの短編のほうが評価されるんだね
貴様など短編がお似合いだとでも言うのか……?
た、確かにさ、この小説は滅茶苦茶だよ?Lvの意味のなさといったら絶望的だよ?文才のなさといったら自殺モノだよ?
あれ?なんだか悲しくなってきたわ……
by 空を仰ぎみて感傷を三秒後には忘れてる天の邪鬼