111、狩りの帰りに
《暴食》を殺し、主犯の第二王子を生け捕りにしてから一週間が過ぎた
主犯を押さえた今事件が起こることはないがその情報はネロや姫様達には教えていない
故にネロ達は今も意味もなくサンドラ王国中を駆け回っている
一週間、拐われている子供がいないことから住民達はもしかしたら例の人拐いは誰かに成敗されたんじゃないかという話が出回っている
実際に始末されているから噂を加速させるようにジーノに指示を出した
あの眼鏡は俺が何かしたと感付いていやがった
人拐いというネタは古くなり、新しく第二王子が失踪したという話がサンドラ王国を騒がせている
第二王子が失踪した時期と人拐いの活動が止まった時期が一致していることから人拐いに第二王子が関わっているんじゃないかという噂も反乱軍に流させている
ジーノの疑いが確信に変わったが別に眼鏡にバレようと困ることはない……たぶん
姫様は実の兄が失踪したことで意気消沈している――ように見せてネロに抱き着く口実を得ているところ実にあざとい
第二王子はともかくとして楽園(笑)から生還を果たした子供四人は少し記憶を弄って騎士団の詰所の前に放置し、不死にされた奴だけをシルヴィアに預けた
そのときシルヴィアが二人の子供がどうたらこうたら言ってたが馬鹿の言うことは理解できないことだと無視した
ショコラは未だに意識が戻らずアンナの図書館で治療を受けている
ショコラに射たれた毒は面倒なものばかりらしく、この一週間俺は解毒に必要な材料を探し奔走していた
「ポイズン・リザードマンの舌、バイオレット・ベアーの肝、ゲットだぜー」
俺は今日も解毒に必要な魔物を狩り必要な部位を抉り引き千切る作業をしていた
紫色なだけで大したことないバイオレット・ベアーの死体を蹴り飛ばす
そして、バイオレット・ベアーの転がった先にオーク三匹に慰み者にされそうな女を見付けてしまった
その印象は異世界版貞子
桃色の髪で長く伸ばしている
それため顔の半分が隠れているオークより怖そうなんだけど……
雄樹はどうする
助ける
傍観する
帰る
皆殺し
うーん、紅茶飲みたいし帰ろうかな
魔物の行為なんて見ても気持ち悪いだけだろうし
勇者らしくないからこそ俺
見て見ぬ振りをしてその場から離れようとした
「助けて助けて助けてください……!」
向こうもこちらを見付けていたらしい
そんなこっち見るなよオークに気付かれ……たな
まぁ、バイオレット・ベアーの死体転がってきたら誰でも気付くよな……はぁ
『ゴアアアア!』
はい、戦闘開始ですね
分かってました
オークは不気味な灰色な皮膚、鉤爪が生え……ようはゴブリンのデカい版
ゴブリンとオークの違いは大きさと皮膚が濁った緑か灰色かの差しかない
『ゴゥ!ゴアゴゥ!』
何言ってるが分からないが大方一斉に襲い掛かろうぜとかそんなんだろう
その推測は当たりだったようで一斉に襲い掛かってきた
足は人間の速度と大差なく俺から見ると遅い
「そーい」
奴等が俺に殺到するまでに首を短剣で撥ねることは容易だった
まさに瞬殺
これは戦いというより一方的な狩りとしかいえないな
魔法でオークを殺して付着した肉の脂と返り血を流し、オークの頭を【亜空間】にぶち込む
ギルドで換金すれば少しくらいは金になるだろう
オークに襲われていた女を放って帰ろうとして
「あのあのあの」
引き留められた
「ん?助けてやったんだ。もういいだろう?」
「実は実は実は、まだいます」
女の声が合図とでもいうように森からオークが姿を見せる
『ゴア!』
『ゴウー!』
『『『ゴアアアア!』』』
デスヨネー
オークって最低五匹の群れで行動するんだよねー
後、少なくとも二匹いると思ってたよ
二匹どころか二十匹いそうだ
四方、完璧に囲まれたぜ
……気になるな
俺がこの量のオークに気付けない訳がない
それなのにオークの気配は今突然現れたようだった
誰かが【空間転移】で運んできたのか?何のために?
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。巻き込んでしまって」
オークに襲われていた女が謝ってくる
「別に問題ねぇ。雑魚しかいねぇから」
【スキャン】を使ってみるとLv30~50程度のオークしかいないことが分かる
さっき殺ったバイオレット・ベアーのほうが強い
ただの紫熊のくせにLv90あったし
『ゴア!ゴー!』
オークはさっきと同じように突っ込んできた
「馬鹿の一つ覚えだな」
「短い短い短い人生でした……」
膝を抱えて諦めの声を出す異世界版貞子
オークの群れごときで諦めちまうのが一般人のようだ
まぁ、チートがないと言われながらも充分チート性能の勇者には関係ないことだ
「四方から襲えば対処できないと思ったか?余裕だ【ダーク・パイル】」
闇属性下級魔法の紫の杭を360度全方位に撃つくらいで雑魚一掃に足りる
オークはそれを躱す術なく残さず串刺しになり絶命した
「今度こそ助けたからなー」
読んでいただきありがとうございます!
今回の話は半分が第二王子を片付けた後のことになっちまいましたね
あとがきでもやるけどね後日談
ネロ『ユウ様、神様から何か授かったんですか?』
黒勇者『あとがきのお前は知ってるよな?なんで聞くの?』
全裸『馬ーぁ鹿、ノリに決まってんだろノリに!』
黒勇者『馬鹿に馬鹿って言われてもなぁ……』
全裸『体罰じゃなくて憐憫の眼差しだと……!?』
黒勇者『体罰なんて言葉知ってたんだな偉い偉い』
全裸『オイオイ!褒めてもモザイクしか出せないぜ?』
約全員『馬鹿だ……』
復讐娘『貴方の覚えた【暴食の口】って私の毒、無効に出来るの?』
黒勇者『超級魔法も難なく喰えるんだ毒も問題ないだろ……たぶん』
復讐娘『なら、ちょっとやってみて、それで死んで』
黒勇者『直接飲む訳じゃねんだ死なねぇよ』
天使『【暴食の口】はぁ喰ったものをぉ魔力に変換してぇ力にする能力ですからねぇ』
盗賊頭『なら、安心だな』
黒勇者『…………ャバィ』
スカイ『……主が倒れた』
約全員『ショコラの毒マジパネエエエエ!』
復讐娘『アハ、アハハハ!お父様、殺れる殺れるよ!私は今日復讐を遂げる!』
強欲『これは本編なら本当に死んでたねぇ』
天才『ショコラがリュパン四世みたいになってる!』
黒勇者『人が死にそうな時に楽しそうだなお前等……』