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110、外道の楽園ぶち壊し




「これは違うな【ファイア・クロウ】」


檻の中で泣く子供を炎の爪が裂く


「これも違うな【サンダー・アロー】」


檻の中の叫ぶ子供を雷の矢が貫く


「またハズレ【ウォーター・ナイフ】」


檻の中で壊れた子供を水流のナイフが斬る


「助けて……助けて……」


「まだ、戻ってこれそうだから助けてやろう」


ゴブリンに嬲られながら助けを求める子供を檻から出した

オモチャを取られてご立腹のゴブリンを灰にして子供を魔法で眠らせる


今、俺は心が壊れた子供を元の状態に戻してやるのは面倒く……難しいので楽に殺してやり、戻ってこれそうな見込みのある子供は檻から出している


「やめろおおおお!やめてくれええええ!なんでもするからああああ!」


涙と鼻水で端正な顔を醜く歪め懇願する第二王子を一瞥する


「懐かしいな――また、壊してやるよ」


前の世界でも俺はこの楽園という名の作品を完膚ないまでにぶち壊した

正義感からの行動ではない

善意からの行動ではない

嫌悪感からの行動ではない

ただ単に気が向いたから壊しただけだ

面白そうだから家ごと焼いてやっただけだ

その後、燃える家を見て呆然と涙を流していた狂人がどうなったかは知らないし興味もなかった


しかし、その絶望に暮れる顔は非常に嗜虐心をくすぐったのと昔やっていたことを第二王子の顔を見て思い出していた

外道が同じ外道に潰されるなんてよくある話だ

外道は外道を潰したら正義のヒーローになれる信じ、狂った奴等は潰しあっていたのだから

外道を潰そうとクズであるのに変わりないのに馬鹿な奴等だと笑いながら潰しあいの舞台を用意してやり漁夫の利、外道の持っている金をくすねていたものだった


「なぁ?自分の大事なものが全部壊される訳だけど――どんな気持ち?」


「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す絶対に殺す……ッ!」


第二王子はドロリとした憎悪の目を向けてきた

ショコラがかつて俺に向けてきていたものと同じ、見る者を射殺さんばかりの目だ

それは俺の悦を満たす

奪う側だった者が奪われる側に立った途端、自分のしてきた非道を棚にあげ、己の身に降りかかる理不尽をその元凶を睨む滑稽さ

実に愉快だ

されると不愉快なことを自分はするのに自分がされると怒りだす憎みだす恨みだす

実に人間らしい

それでこそ人間だ

俺と違って壊れていない人間だ

俺は母親が殺されようと弟が自殺しようと心が動かなかった欠陥品だが、この外道達は人でなしと罵られようと結局はどうしようとなく普通の人間なんだ

それが言葉では表現できないが面白くてたまらない


「なぁ、人間って素晴らしいと思わないか?」


俺の狂気を覗いた第二王子は怨嗟の声を止める

揺らぐことのないはずだった憎悪に塗られた目に恐怖の色が加わる


「あ、あ、あ、殺す、化け物……殺す、殺される……?」


痛み憎悪を忘れガタガタと震えだす第二王子に俺は笑う嗤う




取り敢えず落ち着いて俺はショコラ探しを再会した

第二王子は相変わらず怨嗟と恐怖の声を口ずさんでいる


「お、いた」


檻を3分の2ほどぶち壊したところで目的の子供ショコラを発見した

ショコラは一糸纏わぬ姿で寝ていた

子供の裸とか誰得だよ

俺は嬉しくない

まだ何もされていないのかと思ったが腕にある注射のあとがその考えを否定した


「毒か中毒性の薬か……どっちにしても面倒な」


連れて帰ったらアンナにでも診せるか


「目当てのもんは見付かったが……助かりそうのは持って帰るか」


気まぐれで残りの檻の中全てを確認したが回復の見込みがあったのは四人、それと壊れていたが不死にされて殺せないのが一人

それ以外は殺した

魔法は万能だが全能ではない

助けられないならせめて楽にしてやるべき、殺す大義名分には充分


「【グラビティ・インパクト】」


地属性上級魔法を持って生きた者のいなくなった檻をコンパクトに壊し潰す

なんということでしょう

幼い女の子が苦しむ姿が一望出来る趣味の悪い隠し部屋だったものが子供の声は一切合切聞こえなくなり、物を言わぬ肉塊が散乱する汚ねぇ一室になったのです

ビフォーでもアフターでも見るに堪えない景色です

まぁ、見るに堪えないどころかテンションがハイになってるけどな


「クハハ、呆気ないな……最高に呆気ない……愉しい時間はあっという間だ」


笑いながらその場でくるくると回る

床は血の海に変わり濡れていない所はなかった

足を動かすたびにピチャピチャと音がする

さっきまで生きていた臓器も転がっている

吐き気のするような臭いだ

気持ち悪いが気分は優れている

久々に壊したのだから気分がいいに決まっている

人の生き甲斐を壊すのは本当に愉快である


「さてさてさてさて、第二王子様様様?俺は今気分がいいのでさっさとメインディッシュにまいりましょうかー」


気分爽快な俺は敬語になる

敬語なのになんか馬鹿にされてるようで腹立つと評判だった……


「…………。」


虚ろな目をしている第二王子は返事をしない


「全てを失って絶望している?そんな貴方にはこれ!」


【亜空間】から黒い液体の入った試験管を取り出す


「…………。あッ!?」


それを視界に収めた第二王子は液体が何か気付いたようでようやく反応を示す


「お気付きですかー?そう!これは第二王子様も子供に射っていた《不死になれる危ないお薬》でーす!」


いつかベイルの部下を回収しに研究所を襲撃したとき、ついでに盗んできた薬である


「これって材料に魔王の血を使ってらしいですよー?それを人間が飲むなんて自殺行為だと思いませんか?」


魔族の血は人間にとっては猛毒とアホ毛が自慢気に喋っていたことがあるのだ

本当かどうか実験にクロルの血を全裸に一滴飲ましてみると蒸発した

魔族の血たった一滴で人間は蒸発するのに、魔王の血など正気の沙汰ではないだろう


「あの狸は幾多の屍を築いてまで不死になりたいみたいですねー?第二王子様はどうですかー?不死になりたいですかー?」


自分がどうなるか察した第二王子は顔から血の気が引き、血の海の中で後ずさる


「やめろ……やめてくれ……」


後ずさる第二王子に試験管の中の液体が風魔法で運ばれ近付いていく


「たぶん想像通りですよ?楽園をただ壊すのは可哀想なので第二王子様に楽園の住人になってもらいまーす!――なぁ、本望だろ?」


俺の手駒(ショコラ)に手を出した落とし前はつけてもらわないとな


「う、うわああああああ!」


魔法で加速した液体は第二王子の口から侵入し体内を巡っていく


「…………。」


俺は気分が落ち着くまで血の海で暴れ、跳ね、己の身を掻き毟る第二王子を見ていた




「見え、ない……」


しばらくして完全に不死になった第二王子は視力を失ったようだ

それ以降言葉を発することすらしない

精神的に死んだのだろうか?

まぁ、俺の所有物に手を出したんだ

まだまだ痛め付けるけどな


「しかし、不死の子供が面倒だなー」


回復の見込みがあるならいいが、壊れているのだ

目に光がなく、言葉をかけても叩いても血煙に変えても反応が返ってこない

いつかのツバキに重なるものがあるが、こっちのほうが重傷だ

元々がどんな子供だったかは知らないが壊れる前の状態に回復は望めないだろう

寝かしてある四人は回復させてから親の元へ(生きていたらだが)返すとして、これはどうするかな……

などと考えていると


『カイオス様、どうかなさいましたか!?』


『返事をしてくださいカイオス様!』


ドンドンと扉を叩く音がしてきた

まぁ、あれだけ騒いで壊してやってたら衛兵も駆け付けるか

どこから逃げようかなー

窓ねぇとかおかしいだろこの部屋

あったら幼女監禁なんざ出来ないか

子供六人と第二王子を連れて見付からず安全に帰るには【空間転移】しかないか……

子供殺すのに魔法使ったし、今更魔力痕とか気にする意味ないな

バレなきゃいいなー……無理か


『よし、開いたぞ!』


『開いたというより扉ぶち破ってるぞ!?』


『普通開ければよかったのでは……?』


衛兵も入ってきたことだし、おいとまするか


「【空間転移】」


第二王子の部屋から衛兵以外の生きている者は姿を消した




「あれ、誰もいない……?」


何故か扉を破った若い衛兵は部屋に明かりが付いてないことに気付く


「おかしいな……確かに叫び声が聞こえたのに」


それはつまり第二王子が部屋に不在ということを示していた


「それは先輩の空耳かと」


後輩の衛兵は頭の弱い先輩をジト目で睨む


「扉ぶち破って勘違いでしたじゃすまないぞ!」


頭の弱い衛兵の相棒は怒鳴り声を上げる


「クビかな?」


「えぇ、首が飛ぶかと」


後輩の冗談に笑えないぜと顔を真っ青にする衛兵


「臭いな……」


怒鳴り声を上げていた衛兵は部屋の異臭に気付き誰もいない部屋へ踏み込む


「おい、マズイって!」


頭の弱い衛兵はバレない内にずらかろうぜ、と相棒を止めようとする


「……おい、お前達これ見てみろよ」


部屋に踏み込んだ衛兵は顔を盛大にしかめて仲間を呼ぶ

衛兵達が目にしたのは誰のものか分からない肉塊


「ヒィ……!」


頭の弱い衛兵は凄惨な光栄に悲鳴を出し


「これは酷いかと……」


後輩の衛兵は目を反らす


「大臣に急いで報告だ一大事になる」




この後、第二王子失踪という話が王城内を駆け回った

――ついでに大臣にそのことを報告した衛兵の三人も姿を消したが気付くものは少なかった





読んでいただきありがとうございます!




はいはーい!天の邪鬼でーす!

常識とか倫理観とか理解できない天の邪鬼でーす!

今回の話は嫌な人には嫌なものですかね?

しかーぁし、これはまだ軽めの外道、絶望の形としてはベターですね

書いててこの程度かと思いましたしね

精進せねば!勉強のため漫画読もう!読みたいからとかじゃないですよ?


雄樹からしたら壊れた幼女は物でしかなく殺した者にはカウントしないんですよー

まさに下衆!

雄樹にとっては暇潰し以上の価値はないことなのですがネロなら正義感からキレるところですね

てな訳で参考に意見を並べてみようか


・人殺しの場合


雄樹「殺される奴が悪い」

ネロ「どんな理由があってもやっちゃいけない」


・惨たらしい拷問とかの場合


雄樹「はいはいワロスワロス」


ネロ「なんでそんな酷いことが出来るんですか……!?」


・死体弄りの馬鹿


雄樹「死体なんざ肉の塊」

ネロ「死人を弄るなんて人間のすることじゃない!」


てな感じです



これ見てると雄樹がとことんクズですね

でも、雄樹はそういう人間なんですよ

前の世界で自分を殺されたことも大して気にしてませんからね

犯人が目の前に現れても何の感情も抱かないでしょうし

雄樹はラノベとかのお人好し主人公の逆を歩んでほしいからグッドですけどね!




「所詮世の中弱肉強食。強ければ生き弱ければ死ぬ」


by 縮地とか使いたい天の邪鬼

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