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閑話、聖夜の喫茶店




今年も一人でチキンとケーキを食ってクリスマスを過ごすものだと思っていたが


昔の俺よ、信じれるか?死んで異世界生活してんだぜ?


まぁ、殺されるのは兎も角異世界は絶対に信じなかったろうな俺


「いらっしゃい、ユウさん」


「メリークリスマス!ユウさん!」


てな訳でクリスマスである

異世界なのにクリスマスあるんだね……

たぶん過去の勇者が持ち込んだんだろうけど過去の勇者は魔王を倒しに行かず何を馬鹿やってんだか

あれ?人のこと言えない気が……細かいことは気にしないでおこう

今年のクリスマスは初老の男とウサギの獣人が営む喫茶店ホープ・オブ・ヒルで静かに平和に過ごすとしよう


「よぅ、期待通り客いねぇな」


いつも通り客のいない小さな喫茶店

俺はカウンター席の左端にいつも通り座る


「今日、客が来るほうが珍しいのだがね」


苦笑する初老のマスター


「ユウさんはクリスマスなのにどうしてこんな冴えない所に?もしかして私に可能性が……ハッ!違いますよーう!友達との約束を泣く泣く断って、貴様も彼氏持ちだったのか!と根も葉もない噂を拡散されてもユウさんを待っていた訳じゃないですよーう!」


「なんだ俺には友達との予定より価値があるのか?」


俺が維持悪く問うと露骨に狼狽えるミミル


「べ、別にそんなことないですよーう!好きだからとかそういうことじゃないですよーう!?」


その否定する様はとても滑稽だ本音だだ漏れなのに気付いてないのだから


「好きじゃないかー寂しいねー俺はお前のこと結構好きなのにー」


アホなところが実に好感を持てる


「え?それって……ええええー!?」


ミミルは動揺し跳びはね始めた

からかい甲斐がある


「ユウさんは棒読み過ぎる。それに取り乱すバイトも未熟だがね」


「わざと棒読みにしたんだけどミミルは思ってたよりお花畑だったぜ」


クリスマスだというのに《ホープ・オブ・ヒル》は今日も通常運転だ


「ところでユウさん、こんな日まで何故、場末の喫茶店に来るのかな?」


「いや何、俺は今日静かに過ごしたい気分なんだよ」


ネロの家は今、お祭り騒ぎである

初めはいつもの面子で騒いでいたのだがネロのファンである女共とソラのファンである老若男女がネロの家に押し掛けた

それで見ろ人がゴミのようだという状態になったのに追加でクリスマスは娘と過ごしたいとかボケたこと抜かして国王までがネロの家に来やがったのだ

当然、国王一人で来れる訳もなく大臣なら騎士団やらを率いてきた

で、国王がいると聞きつけ野次馬がヒャッハー言ってネロの家周辺に群がった

雑音が凄いんだよ寝れないんだよ殺そうかと思ったぜ……国王を

なんとかネロの説得で俺は短剣を収め人がいない喫茶店に避難したのだ


「まぁ、騒がしいのは嫌いじゃないんだけど度が過ぎるんだよ」


「羨ましい限りだな。ご注文は?」


未だ茹で蛸のように顔を赤らめている……とまでは言わないがやり過ぎたなと思う程度には赤かった


「そんじゃ、マスターのおすすめでいいや」


「畏まりました」


厨房に引っ込むマスター


マスターはそのときの俺の気分に合わせた物をピンポイントに出してくれる

心読まれんのか?

まぁ、困ることがあれば殺るだけだから問題ないしマスターも理解しているだろう


「別にここではなくても静かな場所はあるだろう?ここを選んだということは……バイトを抱きにきたのかな?」


厨房からマスターが言葉を投げてくる

抱くと聞いてミミルが直立したまま倒れたが大丈夫だろうか?


「そりゃマスターここが一番マシだからだよ」


確かに行く宛は多くある

が、《狐の巣穴》のような暗い、不気味、危険イッパイな所が多いのだ

ここが一番落ち着くのだから仕方ない


「なんだ詰まらんな」


マスターは何に期待していたのか肩を落とす

やっと回復したミミルは立ち上がり


「まぁ、抱く訳じゃないがミミルに会いに来たのはハズレじゃない」


また倒れた

忙しいウサギだ


「バイト喜んでないで料理を運べ」


いや、マスターが持ってこいよ近いじゃんと思わなくもない


「は、はい」


それでもバイトが雇い主に文句は言えず厨房からぎこちない足取りで料理を運ぶミミル

そんなガチガチにならんでもいいだろうに

いつもみたいにピョンピョン跳びはねてこけられるよりはマシだろうな

緊張してるときのほうがうまく運べる奴って珍しいな

頭が弱いのに変わりはないけどな

ミミルは厨房から出てすぐ俺の座ってるカウンターなのに態々回り込むのだった


「お、おまちどうさまです。本日のおすすめ《クリスマス限定 希望の丘ケーキ》になります」


ホールケーキがカウンターに置かれた


「当店のありとあらゆる高級品と技術を詰め込み作った赤字覚悟の一品だ。召し上がれ」


マスターがドヤ顔で腕を組んでいる

そのケーキはカラフルで圧倒的なオーラを放っていた

思わず一歩椅子を下げてしまった

ふ、この俺がケーキを前にして気後れするとはな……

やるじゃねぇのマスター

俺は意を決しフォークを思いの外柔らかいケーキにさしこみ一口分掬う


「いざ」


それを口にした瞬間、俺は別世界に(長くなるので割愛)


「あぁ、実に美味であったぞ。美味すぎて料理漫画の審査員ばりのリアクションをとっちまったよ。羞恥」


リアクションではだけた服を直す俺

そんな俺を顔を覆っている指の隙間からガン見しているミミル

ふっ、と誇らしげにコーヒーカップを傾けるマスター


「いや、ユウさんがキャラではないおはだけをしたのだ。作った甲斐があるというものだ」


「思っていたより筋肉質なん……見てませんよーう!ユウさんの体を脳裏にしっかり焼き付けてなんていませんよーう!」


ウサギが年中発情期と聞いたことがあるが獣人であっても変わらないんだなと思わせるほど鼻息が荒いミミル


「これは発情期じゃないですよーう!生物として当たり前の現象ですよーう!」


何も言っていないのに否定に走るミミル

相手が別のこと考えていたら恥ずかしい奴だったぜ?


「見るなら堂々と見ればいいだろう?」


「そんなのはしたないじゃないですかー!」


何故か憤慨するミミル

いや、どっちも見てるなら変わらんだろと思った


「来年もこのケーキを食いたいもんだぜ」


「それは奮発せねばならんな」


俺は代金に金貨一枚を投げ


「これでも赤字だがいいとしよう」


受け取り様にマスターがボソッと呟くものだから金貨を更に二枚放り投げる

どんな高級品を使ったんていうんだマスター……?


「毎度あり」


マスターは慈しむような目を俺に向けるのだった

え?もしかしてまだ足りないの?マジで?


「……。そうだミミルにクリスマスプレゼントやろう」


馬鹿に高いケーキのことは忘れることにし、こっちゃこいとミミルを手招きする


「そんな悪いですよーう」


口ではそう言いつつ目を期待で輝かせ寄ってくる


「ちょいと屈め」


「こうですか?」


ミミルは屈み俺の手が頭に届く距離になった

今は座っているから小さく見えるだけで俺はチビじゃない俺はチビじゃない


そう自己暗示をかけて【亜空間】から星の髪飾りを取り出しミミルの滑らかな水色の髪に付けてやる


「うん、誰かの髪に髪飾りを付けるのは初めてだがいい感じだな」


納得いく出来に一つ頷き、もういいぞと離れさせる

ミミルは嬉しそうな残念そうな期待が外れたような複雑な顔をしている


なんだ?髪飾りが気に入らなかったのか


「すまんな。気に入らなかったなら別のを用意する」


気に入らないものを押し付けられては迷惑だろうし


「え?い、いえ!気に入らなかったなんてそんな!凄く嬉しいですよーう!ただ期待してたのと少し違ってほんの少し残念に思っただけですよーう?」


「期待してたの?」


はて?全く心当たりがない

首を捻っていると


「…………口付け」


苦笑しているマスターがぼそりと溢す


「……ほほぅ、接吻とな?」


接吻、または口付け、俗にいうキス、敬う心や愛情を表すために、相手の口・手・顔などにくちびるをつけること

それをミミルが期待していたとな?


「ななな、何を言ってるんですかマスター!?私は別にキスされるんじゃないかと期待してた訳じゃないですよーう!ですよーう!」


マスターに抗議しながらもチラチラと横目で見てくるミミル

マスターは期待に答えなきゃ漢じゃねぇ!というどこぞの主人公のような目で睨んでくる


「まぁ、いいだろう」


俺はミミルの頬に触れる程度の口付けをする

額にしなかったのは届かなかったとかではない断じてないのだ……ッ!


「え?…………はぅ」


ミミルは頭が熱で爆発したようで完全に意識が別世界に旅立った

心の準備や不意打ちがどうたらと呻いているが知ったことではない


「頬より唇にするところだろうに根性無しめ」


マスターが愉悦と苦笑が混ざった新しい笑みを浮かべていた


「俺は気に入ってる奴には軽い気持ちでキスなんざしねぇよ?」


頬はノーカンだと思う

親愛的な意味だからカウントすんなボケと


「どうでもいい女にはするように聞こえるな」


マスターは毛布を持ってきてミミルにかける


「する必要があれば何の感慨もなくしてたからなー。愛のない接吻は金になるぞ?」


前の世界で俺は金を手にするため色々やってきた

心にもない愛を囁きそれを信じる馬鹿から金を搾り取る

本当に最高な下衆だぜ俺、吐き気がするくらいにな


「俺には恋だの愛だのは実はよく分からねぇが、下手に手ぇ出すと傷付けることになるからな」


「本当は抱く度胸がなかっただけだろうに」


「それもあるが、そういう知識はあんまり持ってなかったするんだよなー」


そっちの話には興味がなくて俺のハニートラップなどへの耐性はEXと言っても過言ではないレベル

体はいらんから金だけ寄越せと遠回しに伝えるのが中々面倒だった

俺はプレイボーイじゃないんだよ生涯チェリーボーイだったんだぜ

胸を張って言えることだ、違うか


「それにそんなことしたら責任とらなきゃならんようになる」


「ユウさんは外道のくせにどこか律義な子だ」


一瞬、驚いたようだが破顔するマスター

解せんな


「そうか?」


「バイトは寝てしまったがどうする?夜が明けるまで酒に付き合わないか?」


話を変え、マスターはワインを掲げてみせる

話が打ち切られたならそこでおしまい追求はCOOLじゃない


「俺、酒飲むないから紅茶淹れてくれ」


今年のクリスマスも静かに過ぎていく





読んでいただきありがとうございます!




はいはーい!天の邪鬼でーす!眠くて眠くてしょうがないときに書いたので文章が滅茶苦茶になってるだろうなと思いつつ投稿した天の邪鬼でーす!

今年はもう投稿しないと言っていたな?

閑話は別だデューユーアンダスタン?


ミミルが地味にヒロインだね

雄樹に惚れてるキャラがミミルしかいないんだよねー

シルヴィアは知らん


もう一話あるんだけど完成してない上に受験勉強があるからなー

絶対に投稿するぜ!(えっ




「人間はそう簡単には変われない。ありがたいお言葉や、優しい同情、安い決意表明くらいで変われるなら世界はヒーローで溢れかえっている

人は変われないのだ。もし、変われるとしたら手段は一つ。

何度も何度も痛い目を見て、心に消えない傷を刻みつけて、その痛みからの回避本能によって、結果的に行動が変化するだけだ」


by 寝落ちする天の邪鬼





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