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107、暴食との遊び その五




《口》に覆われ見えない《暴食》の顔が歪んだのを感じた


「喰え、ない?進め、ない?見え、ない、壁?」


止められるはずがなかった化物は雄樹の拳に歩みを止められ押し返され下がった


「賭けだったが、空間は喰えなかったようだな……」


雄樹は直接《暴食》を殴った訳ではない


「流石はボウヤでも勇者だねぇ、空間を掌握して打撃するだなんてとんだ化物だ」


ケタケタと笑う老人に足蹴を入れる


「勇者が化物なのは常識だろ」

雄樹は空間を殴った

ただそれだけのことだ

上手くいったならそれでいい


だが、雄樹は先程と違った理由で冷や汗を流していた


《暴食》を殴った腕が紫色に腫れているのだ


「(超絶痛ぇ……あいつトラックかよ……)」


過去に自分を死に至らしてた乗り物を脳裏に浮かべるほど《暴食》の突進は力強かった

トラックの時は即死で痛いもクソもなかったが


これで腕が使い物にならなくなった

代わりに目がスッキリ醒めた

あー、涙出そう


《暴食》は警戒して少しの間近付こうとしなかったが、また突撃してきた

やはり、獣だな


「なら」


雄樹は空間を――蹴り上げた


「吹っ飛べや!」


「ぐ!?がふ、ッ!」


空間、見えない壁は《暴食》の顎にクリーンヒットしガチリガチリという音を高くして宙に浮く


足の裏が見えた

ジジイの言う通り《口》に覆われていない素足を晒されていた


即座に無事な腕で【亜空間】から長い槍を引き抜く


「痛いの行くぜ?」


言うが早いか踏み込み身を捻り最大の力を持って槍を唯一無防備の足裏にぶち込む

いつも通り、ショコラの毒塗ってますが何か?


「、、、!!?」


《暴食》は声にならない耳障りな悲鳴を上げた

槍を穂先だけではなく柄の深くまで突き刺された《暴食》は痛みと苦しみにのたうち回る


《暴食》が止まったのは《狐の巣穴》の床を半分以上喰いちらかした後だった

《口》は解除され白目を剥いているデブは物を言わず転がっている


「死んだか?」


あ、これフラグや

小説を読む度、自分は建てまいと思っていたが無理でした

まぁ、どうでもよすぎて数秒したら忘れるだろう


「おぉ、小生Lv44に上がってるよ」


死んでないフラグは回収されずに済んだようだ

……やっぱり死ってのは呆気ないものだ

何の感動も湧かないな


「で?なんでお前に経験値入ってるんだ?」


ジジイ一切合切手出ししてないぞ

俺の足にすがり付くのはノーカンだ忘れようキモいし足引っ張っただけじゃね?


「さぁ、近くにいたからじゃないかなぁ?」


俺の足元からカウンターへ戻るジジイ


「そういやさ、Lv上がったら何か変わるのか?俺、初期からLv500だから分かねぇんだ」


俺、また来世があれば絶対チート断るわ

ゲームは最初から楽しみたいものだ

まぁ、LvMAXなだけでチート能力なし、ステータスLv300相当だからマシだろうけど

他の勇者はさぞ退屈していることだろう


「そうだねぇ……6歳若返った気分だね」


ジジイに聞いたのが間違いだったか


「それより大丈夫かい?腕と足が大変なことになっているよぉ?」


「大丈夫に見えたら頭が沸いてる証拠だろうよ」


下らない雑談をしていると頭の中に声が響いてきた


『テレレレレッテッテ~♪』


なんで効果音?なんでド○クエのLv上がったときのやつ選んだ?Lv上がってねぇよカンストしてるよ


『不満か?なら別の効果音でやり直そう』


頭の中を他人に覗かれるのって本当に不快な感じがするんだな

今、実際に体験して知ったわ

てか、何の用だよ神様(笑)やり直すなよ?


『(笑)とはなんだ私は偉いんだぞ?凄いんだぞ?』


部下(ミュラー)に駄神とか呼ばれてるやつが何言ってんだか

さっさと本題入れや愚神


『初めて会ったときと違って容赦ないな!?私はメンタル強くないぞ!豆腐のような強度だぞ!』


はいはい俺が悪うございました

本題はよ


『心の籠ってない謝罪だな……。本題は君のチート能力についてだ』


うん、それのことか簡潔に頼むぜ

……腕と足が本気で痛いんだ


『人間は大変だな。では簡潔に……

雄樹は【暴食の口】を習得した!』


は?何名前で呼んでんの?


『そこ反応するのか!ミュラーだって呼んでるじゃないか!』


で【暴食の口】って何?

まさか、さっき殺った《暴食》のあれじゃないよな?


『無視か……もう雄樹って呼び続ける!決定だからな!【暴食の口】はそのまさかだよ。雄樹が倒したおデブさんが持ってた能力だ』


なるほど、もういいな?じゃあ、また来年


『え?もっとお話を楽し――』


プツンという音と共に神からの通信が切れる、てか切った

原理は全く分からんが成せばなることもあるな


「戻ってきたかいボウヤ。意識がどこかに飛んでいたようだったよ?」


いつの間にかカウンターでクッキーを齧っているジジイ


「意識はあったはずなんだがな……」


雄樹は辺りを見回し驚きの表情を作る

《暴食》に荒らされたはずの《狐の巣穴》はいつも通りの状態になっていたのだ

喰われたはずの扉には傷一つなく、《暴食》がのたうち回って抉られていたはずの床は僅かな凹みすらなくなっていた


「いつの間に戻した?」


愚神と喋っている間に直した?

いや、早すぎるし俺は何か動きがあれば気付く


「この程度のことにいちいち驚いちゃ駄目駄目だよボウヤ」


《強欲》は得意気にクッキーを持っていない方の手で水晶をころころと転がしていた

それを見て納得した


「魔道具か。万能だな」


《暴食》の死体がないが気にしたら負けだな

《強欲》がどんな手札を持っているかは知らないが万能の領域では死者を蘇らせることは出来ないだろうからな


「じゃあ、俺は帰るわ【空間転移】」


俺は家に帰ることにした

腕と足から伝わる激痛を堪えながら動く

まだショコラを奪い返してねぇんだ




雄樹が去るのを確認した《強欲》は棺桶の前で笑っていた


「いやはや君がこうも簡単に殺されるとは思わなかったよ」


届くことのない言葉を歌うように口にする

棺桶の中にいる《暴食》に向けた言葉を


「豚君……君は己の人生を喜劇と感じたかはたまた悲劇と感じたかは小生には分からない。

死人は喋らないからねぇ。

……おやすみ《暴食》、名もない小生の友よ」


《強欲》は同じ《七大罪》の一人の物語を想い目を閉じ祈りを捧げる


「まぁ、小生は喜劇だったと思うけどね。君は本当に小生の思い通りに動く、面白味には少々欠けるけど良い遊びを見せてくれたよ」


そして老害は嗤う嗤う


「しかし、人の最期を観るのは飽きないね。

ボウヤはたくさんの最期(ものがたり)を小生に観せてくれるはずだ。

メインディッシュのボウヤはどんな最期を観せてくれるのか楽しみだ。

実に悦しみだ」


《強欲》はその名に恥じぬ悦を求める

求め続ける

いつまでもいつまでも





読んでいただきありがとうございます!




はいはーい!天の邪鬼でーす!

割りとシャレにならないくらい余裕のない天の邪鬼でーす!

書いてて思ったんだけど……《暴食》弱っ!

五話で出番終わっちゃったよ!

他の《七大罪》はもっと長くなるはず……(震え声

下書きで《七大罪》二人目と対面してるところなんだけど五話以上になるかな……?


下書きから写すの面倒すぎて泣けますね……





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