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105、暴食との遊び その三




その頃、執事と子供一人が入るくらいの袋を担いでいるメイドは一通りが少ない道を走っていた


その二人の前に立ち塞がったのは忍装束の女とガタイの良い猫の獣人


「そこのお二人さんちょっといいかい?」


ベイルが声を掛け前に出た時、執事とメイドは無言で仕事をまっとうする


袋を持つメイドは壁を走って登り屋根から屋根へと逃げる

執事は顔を見た二人の邪魔者を始末しようとする

彼等はプロだ

並みの相手なら傷一つ、服に汚れ一つ付けずに仕事を終える


ただし、相手が並みの相手だった場合はである


メイドが壁を登るのを一瞬、一秒にも満たない刹那で確認した執事

それが命取りになった


執事が視線を戻すとすでに獣人の拳が顔の前に迫っていたのだから


メイドが跳び移ろうした屋根には先客が立っていた

メイドはソラを見て別の屋根に跳ぶ

跳んでいる間にメイドは見た

自分が跳ぶ移ろうとしている屋根に砲弾のような速度で先回りしている忍を

メイドが屋根に跳ぶ移るまでの僅かな時間


その間にソラは風を背に受け飛び、メイドに踵落としを決めた


ソラはメイドの意識が途切れたのを確認し、肩に執事を担ぐ獣人に頷きかける


盗賊頭『目標の生け捕り完了した』


スカイ『……捕獲と子供の保護、完了』


天才『はい、お疲れー』


狂魔女『じゃあ、私の家に持ってきなさい。拷問はスマートじゃないから私の力で喋らせるわ。それとソラちゃんは帰っていいわよ!ここからは大人の時間だもの!イケない子なら話は別だけど』


「……分かった」


道化の仮面を被った少女は一人で帰路に着く

その仮面の下にどんな表情があったかベイルは分からなかった




少年は親の顔を知らない


幼い頃、親に捨てられたか、親が死んだか、どちらか分からない

少年は貧民層で自分と同じように親無しの子供達と生きていた

食い物を盗んでは殴られ蹴られ、それでも必死に生きてきた

親を恨んだことはないと言ったら嘘になるが顔も知らない相手をいつまでも恨んでいる訳にはいかない

食い物を盗んでは殴られ蹴られ、仲間は弱り次々に死んでいく

そして、次々に新入りが増えてくる

いつの間にか親無し達のリーダーになった少年は自分より幼い子供達のため自分の食事を後回しにし、自分には何も残らず何も口にしない日々が続いた

でも、仕方ない

それが親無し達のルールだから

我慢するしかない

この空腹を我慢するしか

我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢


そんなある日、食い物を盗まれた店主が剣を片手に追いかけてくるではないか

親無し達は必死にこれまでにないくらい必死に逃げた

だが、子供と大人の差は埋められない

仲間は斬られ残った少年も逃げ込んだ路地裏で行き止まり追い込まれる

普段ならこんな失敗はしなかった

極度の空腹と追いかけてくる死の恐怖で正常な判断が出来なかったのだ

少年は後悔と諦めを込め最期の言葉を口にする


「腹一杯、飯、食いたかった、な」



そのとき《口》が開いた



突然、目の前の店主の頭が消えたのだ

死体に慣れている少年はパニックにならなかったものの何が起こったか理解出来なかった

だが、口の中に広がる鉄の味を、腹は何かに満たされていることだけを理解していた

暫くして気付いた

自分の腹を満たしたのは目の前に転がっている死体の頭だと

彼は心の中で人間らしく叫んだ

しかし、それは「自分はなんてことを!」などという下らない下らない下らない後悔から来るものではない


あぁ、自分は愚かだ!

こんなにも美味い食い物(人)が身近にあるのに気付かなかったなんて!


嘆き、狂ったように笑い出す


これからは食い物に困ることはないんだ!

食い物はたくさんたくさん落ちているもの!歩いているもの!


少年は店主の亡骸を骨も残さず平らげ親無し達の待つゴミ溜めに帰る

もう食い物を盗む必要はないんだと一刻も早く伝えるために


その日、サンドラ王国貧民層のゴミ溜めで共に育ってきた仲間の血肉を喰らい《暴食》が生まれた


それから暫くして少年は化物として名をサンドラ王国に響かせた

だが、化物が親無しの少年だと誰も知らなかった

少年は自分に怯え逃げる若い女の恐怖と血肉を喰らい、自分の正体を知らずに狩りに来た冒険者の誇りと血肉を喰らう毎日を送る


だが、国王エドワード=ドートリシュにより暴飲暴食は終わりを告げた




《暴食》は走馬灯を見ていた


「……オーバーキルかと思ったんだが、まだ満足していただけなかったか」


雄樹は見ていた

《暴食》は【コキュートス】で氷の彫像になったのを

死んだと確信して彫像を砕こうと近寄った時、彫像が《暴食》が己を覆う氷と白甲冑の腕を喰うのを

全身に《口》を纏い起き上がる化物の姿を


「喰う!喰う!まだ、足りない!喰い、尽くす!我慢は、もう、しない!」


《暴食》はかつての化物の姿を取り戻す





読んでいただきありがとうございます!




全裸『可愛い彼女が欲しい』


黒勇者『急にどうした?病院行くか?』


反乱者『そう思うなら服を着てみてはどうでしょう?』


全裸『もしも、もしもだぜ?可愛い女の子に告白されたらどうする?』


黒勇者『スルーしやがった』


輝く男『俺が告白されるなんて当然のことだ』


男全員『ハッ(嘲笑)』


全裸『仕切り直しだぜ?絶世の美少女に告白されたらどうする?ヒャッホーイだぜ!』


盗賊頭『そうさな。いきなり付き合わずお互いを知り合うところから始めるな』


強欲『青い、青いねぇ』


黒勇者『文通とかしそうだな』


盗賊頭『どういうことだ……?』


反乱者『告白ですか……私は妻がいますしね』


男全員『黙れよ既婚者』





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