104、暴食との遊び その二
《暴食》は歓喜していた
こんな魔法は初めてだと
《暴食》は望んだ
極上の魔力で作られた極上の魔法がどのような味がするか喰ってみたいと
先程と同じ様に下がりながら己の前に二つ目の《口》を開く
雷の穂先は一つもその《口》に捉えられることはなかった
が、《暴食》は三つ目と四つ目の《口》が【ブリューナク】を飲み込んだ
「同じ、動き」
《暴食》は頭が悪いがそれでも分かるくらい単純なことだ
【ブリューナク】は意思を持ち動くが複雑な動きを出来るほど明確なものではない
同じ動きをするのではないかと《暴食》は足りない頭で考え実行した訳だ
「《口》、設置型か。超級魔法でも破れない盾ってとこだな。一つ目が消えるまで5秒かかった。自由に消せるかどうかも知りたいところ」
《暴食》に聞こえないように雄樹は小声でぶつぶつと言っていた
《暴食》は味をしめたようで五つ目の口を開いた――魔法を放った雄樹のいる場所に
当然そう来ると予想していた雄樹は軽く、しかし速く六つ目が来ても避けれるように警戒しながら前に走る
《暴食》は迎え撃つ
雄樹は往なす
《暴食》は《口》を展開する
雄樹は見て予測し避ける避ける
《暴食》は雷の穂先と獲物を近付かせない
雄樹は魔法と武器を駆使し敵を狩り取ろうとする
既に言葉はなく、呼吸一つが命取りになる遊びが繰り広げられていた
《暴食》は滅多にない上玉な獲物に笑みが絶えない
雄樹の顔には笑みはない
だが、この遊びに気分が高揚する
「……分かったぜ《口》は五つが限界だな」
「だから、なに?」
余裕綽々な《暴食》
それが分かったところで状況は変わらない
【ブリューナク】は更に一本喰われた
このままではジリ貧だ
このままならだが
雄樹は前に走る
《暴食》はそれを迎え撃つ
「いただきます」
雄樹の行動にはパターンがあることを《暴食》は気付いていた
そのパターン通り動く雄樹
次は前かフェイントを入れて右に進む
今、使用している《口》は三つ
二つをその進行方向に展開する
そして、雄樹は口元が歪む
「馬ぁ鹿」
雄樹は前にも右にも進まなかった
左にスライドしたのだ
雄樹はわざと分かりやすいパターンで動いて見せていた
頭悪そうなデブが引っ掛かり仕留めれると油断するように
雄樹は息を上げずにやってのけたことだが、《暴食》の速度に付いていけ、且つ、その速度で集中力を切らさず少しのズレもなく動かなければ失敗して肉を抉られることになる
まぁ、雄樹がそれの難易度にリスクに気付いていなかったからこそ出来たかもしれないが
雄樹は《口》が五つ開いている内に攻撃を掻い潜り《暴食》に触れた
「【空間転移】」
雄樹は《暴食》と共に飛び状況を変えた
雄樹と《暴食》の消えた屋敷は二人の戦闘によりボロボロになっていたところ残された【ブリューナク】によって崩壊していたが彼等にとって些細なことだった
雄樹は《暴食》と共に未だ氷付けになっている路地裏に出現した
「これだけの高度から落ちたら、上級魔法でダメージ無しのお前でもただではすまねぇだろ?」
サンドラ王国が一望出来る程度の高度に座標を設定してだ
《暴食》は上級魔法でダメージがなかったのではなく喰ったから当たらなかっただけなのだが些事である
「落ちる、ッ!」
《暴食》は何もない空中で足掻く
「落ちたくないならお前も浮けや」
風魔法で空中に留まっている雄樹
飛んでいるのではなく浮いているのだ
その浮いているだけでも割りと高度な技術なのだが自分が出来ることは他人にも簡単に出来ると思っている雄樹であった
「喰う、……!」
屋敷に展開していた《口》は全て閉じられた
《口》は最大限に使える
《暴食》は落ちてダメージを負うことより浮いている極上の獲物を喰えないことを危惧した
《口》を雄樹のいる場所に開こうとした
《口》が開かれる前兆の一線を見るまでもなく、そう来ると分かっていた雄樹は魔法を止め自然落下が始まった
二つ目の口を落下してくる雄樹を喰える位置にセットする
「【グラビティ・プラス】」
土属性の魔法の重力で雄樹の落下が加速する
二つ目の《口》は雄樹を捉えれない
それを踏まえて三つ目の《口》を展開する
「空中で動けないといつから錯覚していた?」
すぐ隣に結界を張りそれを蹴ることで体を横に跳ばす
「まだ、まだ!」
四つ目と五つ目の《口》を同時に己の前に展開する
獲物が自分に突撃を掛けようとさていると察したからである
四つ目と五つ目の《口》は混ざりあい村一つなら覆い喰い尽くすほどのカーテンと化す
「馬鹿だな、それは悪手ってやつだぜ?」
雄樹は風を纏いその場で一旦留まり
「【空間転移】」
使い慣れた魔法で死のカーテンを越える
「加速して蹴り入れるにも距離も《口》閉じるまでの時間もねぇし……食らいやがれ白甲冑ハンマー!」
《口》を使いきり無防備になった《暴食》に白甲冑を全力で叩き付けた
「ガハ、!」
それにより落ちる勢いが増し
結果、凍った地面にクレーターが出来た
「これくらいじゃ死なねぇだろう《暴食》?」
クレーターに雄樹はフワリと風に包まれるように、事実包まれ着地し
「【地獄に流れる嘆きの川よ罪を裁き永遠の停滞を与えろ――コキュートス】」
地面に白甲冑ごとめり込んでいる《暴食》を氷漬けにすることにした
読んでいただきありがとうございます!
はいはーい!天の邪鬼でーす!
ちょっとあとがきに書くこと切れていた天の邪鬼でーす!
ふぅむ、何書く?
投票でもしますかな
勇者六人いる設定なのですが、男4女2か男3女3にするか読者様はどっちがいいですかね?
それと、このキャラがメインの話が読みたいなどがあればどうぞ御要望ください
クリスマスの閑話で書きますので
これに誰も応えてくれないと予想してるお兄さんでーす!
予想通りだったらお兄さんの勝ちなのです!
何と勝負してるかって?
運命様ですよ(ドヤァ
頭がおかしいのは元からです(ドヤァ
「それを『惚れてる』のだと認識しているのなら『惚れて』いますぅッ!所詮――恋愛感情など錯覚なのですからぁッ!!」
by 成る程と納得した天の邪鬼