103、暴食との遊び その一
《暴食》と言われた男は太っていて、背は低く、雰囲気は人間というより獣のようだった
《七大罪》の一人のデブとタイマン張ることになった
別に無視して執事とメイドを追い掛けることも出来るが……何故か奴を放っておこうという気になれなかった
奴の口の周りに付着している血を見たからだろうか?
いや、違う他人が殺されたからといって気にする俺じゃない
あれは敵だ
戦う理由はそれだけで充分
「一応、聞いておくぜ。お前、この家の人間を喰ったのか?」
口から血を肉を溢しながら《暴食》は
「肉、肉、肉ぅ!」
俺を喰らいに来た
それは単純な突進
太ってるくせに速い
俺は【亜空間】から槍の穂先を《暴食》に向けて打ち出し、自分で突くまでもなく《暴食》は己の突進の勢いをもって槍に突き刺さる――はずだった
「いただきます」
《暴食》は口を大きく開いて槍を喰った
「わぁお」
この程度で倒せる相手など最初から思っていなかったが喰うとはなー
槍を口に含みながら迫り来る巨体を横にかわし、短剣で腹を斬ろうとし、《暴食》は口に含んだ槍の柄で短剣を弾き、お互いに距離が空く
「槍、美味く、ない」
槍を噛み砕き飲み込む《暴食》は不満げな顔をする
「美味かったら驚きだ【ファイア・バースト】」
《暴食》の頭を炎で爆破する
これはあくまで目眩まし
これで倒せたら嬉しい
でも、倒せる訳ないだろうな……
爆発で目、耳、鼻を封じれたはず
【空間転移】で後ろに回り込み
【ウィンド・サイズ】で首を狩る……!
しかし、首に風の鎌が届く前に《暴食》は強引に床を踏み抜き己の体を落とした
俺は巻き込まれ落ちないようバックステップで下がる
「そう簡単に殺られてくれねぇわな」
あれは視覚、聴覚、嗅覚を封じられた後、どうすればいいか分かっている、いや、体験している者の動きだった
俺のような経験不足な素人と違う経験から来る動きか……勘と違うのかね?
下がった先、髪を焦がした《暴食》が口を開いていた
多少はダメージあったのな
「速……」
床を踏み抜いてから、速攻で俺の傍の床を喰い上ってきたのか?
それにしては音が……
「今度、こそ、喰う!」
思考を遮るように《暴食》の生臭いが強くなる
不快だ
「短剣、二本になりまーす」
俺は風魔法の加速付きで振り返りながら短剣で凪ぎ払う
《暴食》は身を屈め、短剣をかわしたが、もう一本は屈んだ程度で避けれる軌道ではない
床を踏み抜いて逃げられないよう結界を展開済み
床を踏み抜けないことを理解した《暴食》は手札を切った
いや、上るときにも切っていたのだ
《暴食》と短剣の間に黒い一本の線が引かれ――音もなく口のようなものが開いた
口?口か?口にしか見えない
なら、口だな
短剣はその《口》にあるギザギザな歯に食いちぎられた
「チィ……!」
刃を食われた短剣を後ろに投げ捨てバックステップをすると見せかけて横に跳んだ
後ろに下がるのはマズいと雄樹の勘が告げていたから
雄樹がいた場所には《暴食》本人の口が
後ろでは投げたはずの短剣が消滅、否、空間に空いた《口》に咀嚼されていた
あの《口》は複数出せる魔法か……?
雄樹は心の中で疑問し、違うと結論した
あれは《暴食》の魔法ではなく特技的な何かと解釈する
根拠は相対している《暴食》は魔法を無詠唱で使える者ではないだろうから程度である
あれはデブが《暴食》と言われる由縁なのだろう
「異世界で常識ほど信用ならないものはねぇよな?」
《暴食》は獲物の言葉に耳を貸さず、喰いに来る
愚直にまでの突進
速度はあるが一直線に進むだけなので避けるのもあしらうのも簡単
問題は音もなく開く《口》
前触れがあるだけマシだ
なければデッドエンドで終了してた
「その《口》いくつ出せるんだ……?」
当然、答えは返ってこない
肉肉言ってるだけだ
「なら、こっちも超級魔法を使うぜ」
最近、アンナの書庫で見付けた超級魔法
「【英雄に代わりて闘う雷を以て敵に死を我に勝利をもたらせ――ブリューナク】!」
雷で作られた五つ槍の穂先が現れ、《暴食》を貫こうと走る
《暴食》は己に向かってくる魔法を喰らうため下がりながら己の体を覆うほどの《口》を開いた
「《口》のサイズ変更可能なのか」
【ブリューナク】は《暴食》に到達する前にその白い牙に砕かれ黒い穴に喰われ――なかった
五つの穂先はそれぞれ意思を持ち、《口》に喰われまいとその場で急停止したり、軌道を前から上や横などに変更したり、後退したりしたのだ
「……!?」
「これこそ【ブリューナク】。どうだ驚いたろ?」
俺の言葉通り、雷の穂先に驚き動きを止める《暴食》
その隙を突き別々の角度から《暴食》に襲い掛かる【ブリューナク】
――《暴食》は汚い顔で笑った
読んでいただきありがとうございます!
はいはーい!天の邪鬼でーす!
戦闘シーンが好き故、書くのが下手な天の邪鬼でーす!
好きなものほど書けないんですよ作者
無力系主人公が足掻いて足掻いて大きな絶望を乗り越えるのとか百合モノとか学園モノとか書いてみたいんですがこれがアイデアが出てこない
かろうじて書けるのがベタな異世界モノなんですよー
まぁ、作者の国語力低すぎなんで書けてるという程じゃないですけどね
お兄さん頑張るよ
せめて二流程度の文が書けるように!
それより先に受験勉強しろと聞こえた気がするけど幻聴だよね?
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