9、勇者の居ぬ間に
ネロとエミリアは貴族など金持ちの集うカフェでお茶していた
「僕みたいな一般人がこんなところに居ていいのかな……?」
「そんな些細なこと気になさらなくてもよい何度も申しましたわよ?」
と、微笑むエミリア様
「そんなことよりネロ様のことを色々知りたいですわ!」
身を乗りだし聞いてくる
「そ、そんな面白い話ありませんよエミリア様?」
「ネロ様の話が面白くない訳がありませんわ。あと、呼び捨てでかまいませんし、敬語でなくていいですわよ?」
「そ、そんなお姫様を呼び捨てには出来ないよ!それにエミリア様も僕を様付けで呼んでるじゃないか」
「では、私もネロと呼び捨てに致しましょう。ですから、私のことをどうぞエミリアと呼んでくださいな」
う……!逃げられない?観念するしかないか
「分かったよエミリア」
「はい、ネロ!」
子供のような無邪気な笑顔に苦笑する
「で、私はネロのことを知りたいのですわ。教えてくださいな」
「面白くなくてもいいならいいよ」
それから僕は昔の話をした
暫くしてエミリアの笑顔が急に曇った
「ど、どうしたのエミリア?やっぱり僕の話面白くなかった?」
「い、いえそうではありませんの!少し昔の嫌なことを思い出しただけですの」
その視線の先にいたのは僕と同じく店の雰囲気に合わない男達だった
その男達の荷物は大きさの袋だった……女の子なら一人入るくらい大きい、否、
「あれ、人が入ってる?」
ビクッとエミリアが反応した
彼女の過去に何があったか大体察してしまった……
「後を追う?」
エミリアが嫌なら僕一人で行くよ、とは言わず
「……そうですわね。誘拐を見過ごすなんて私の理念に反しますわ!もう昔の私ではありませんもの!」
彼女は覚悟を決めた目をしていた
「決まりだね」
エミリアは過去を乗り越えようとしてるんだね
僕がしっかり守ってあげないと!
少女尾行中……
誘拐犯の男達は尾行中に『貴族の娘は高く売れる』とか言っていたから間違いなく黒だ
目的地に着いたようだ
男達は貧民層にある廃墟に入っていった
「ここが奴等のアジトですの……」
「僕達も行こう」
誘拐犯のアジトに足を踏み入れ
「なんだお前達は?」
一瞬でバレた
入口のすぐ横に誘拐犯達は集まっていた
「私は勇者のお供、エミリア=ドートリシュですわ!」
誘拐犯達は視線を鋭くし、それぞれの武器を手にしていた
「ほぅ、そんなお方が俺達に何の用だい?」
「とぼけても無駄だよお前達が貴族の娘を誘拐したことは分かってるんだ」
「ちぃ……!バレたからにはただでは返さねぇぜ」
「金髪の嬢ちゃん可愛いねぇ」
「あの娘も遊んだ後に売ろうぜ」
「男はどうする?殺すよな」
男装してるけど女です
「下衆共め……」
エミリアの見下しスタイル
流石、王族
「なんだとぉ?調子に乗るなよ女ぁ!」
襲いかかってくる男達
魔法を詠唱するエミリア
「【サンダーボルト】!」
雷属性上級魔法により丸焦げになって倒れていった
流石は王族屈指の魔法使いだ
誘拐犯は全滅かな?
「動くなッ!」
否、一人残っていた
男は気を失っている銀髪の女の子を人質にしていた
「動いたらせっかく助けに来たこいつの命はないぜ?」
「く……!」
「なんて、卑劣な……!」
エミリアの魔法は銀髪の女の子に当たる危険性があるから使えない
「へへ、兄ちゃん武器を捨てないと、どうなるか分かるよな?」
「……分かった」
僕は剣を後ろに投げ捨てて、
「【ライトニング・スピード】」
高速の突きを男の顔面に打ち込んだ
「これで、一件落着かな?」
動かなくなった誘拐犯を見渡し一息ついた
「流石、ネロ見事でしたわ!」
「エミリアこそ上級魔法凄かったよ」
僕達は笑いあった
その後、誘拐犯達は騎士団に突き出し、銀髪の女の子を保護して貰った
その日、誘拐犯と銀髪の女の子、レンブラント伯爵家の娘がネロを勇者と勘違いして「レンブラント伯爵家の娘、誘拐事件解決したのは蒼い勇者」という噂が広まる
雄樹は面白いと思い、更に噂を広げっていったのはまた別の話
読んでいただきありがとうございます!