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竜の国 ~異変~  作者: 夢野 幸
第二章 再会
9/54

2-4

「出発は、明日?」

「うん。今日全部支度を済ませて、明日の朝行こう」

「ガキ二人で、何をしようって?」

 頭上から聞こえてきた懐かしい声に目を瞬かせ(しばたかせ)、ユーとヴェントは顔を見合わせると揃って顔を上げた。そこには頭に描いた通りの人物が腕を組み、口の端を軽く上げてこちらを見ている。

「ジューメ!」

「あぁ! ジューメだ!」

 ジューメが地面に降りてくると、二人は同時に抱きついて行った。ジューメはその勢いに思わずよろめくが、倒れそうになるのを何とか踏ん張り、苦々しく笑う。

「久しぶりだな、お前たち」

「本当だよ! 一年ぶりだ!」

「ジューメ全然来てくれないんだもん! 時々、洞窟に行ってみても、そんなときに限っていないしさ!」

 目を輝かせながら言う二人の頭を荒々しく撫で、少し離れると再び腕を組んだ。表情はどこか難しいものになっており、ユーとヴェントもつられるよう、引き締める。

「……斑点の事で、話をしに来たんだ」

「斑点……!」

「まさか、ジューメも!」

「いや、オレには出ていないし、オレの知人も大丈夫だ。だが……集落の外で住んでいる奴らも、斑点のせいで何人か死んでいる。これも同じく、どこに聞いても原因不明だから性質たちの悪い病気だ」

 ジューメが言うと、二人は深く頷いてしまった。そんな二人の肩に手を置き、顔を覗き込むよう腰を曲げる。

「龍のところに行くって話をしてたみたいだな。オレも行く、ガキ二人だけじゃ不安だしな?」

 口の端を上げながらも、肩に置いていた手を引き寄せ、そのままユーとヴェントの頭を自身の肩に押し付けた。それに驚いて顔を上げる二人の頭をゆっくりと撫で、困ったように顔を背ける。

「なんだ……どう言えばいいか、わからねぇけど。お前たちの状況も、風の竜人の知り合いを通して、わかっているよ。……見ないでやるから、辛いときには我慢するな。お前たち子供が、そんな気丈になる必要、どこにもねぇんだからさ」

 どこか照れくさそうに、ぶっきらぼうな言葉で、ジューメは言った。それにユーとヴェントの背は震え始め、それでもそれを堪えるよう、体が緊張する。

「辛いのを我慢するな、泣きたいのを我慢するな。……子供の特権だろ」

 そう言って、頭を、体を優しく撫でてくれるジューメに。二人は甘えるようにして、声を上げた。


「ユー、どうしたんだい? 目が腫れているみたいだよ」

 二人と別れて家に帰ると、局長さんが心配そうに声をかけてきた。ユーは目を擦り、緩々と首を振る。

「ううん、帰ってくるとき、目にちょっとゴミが入っちゃって」

「擦っちゃったのか、大丈夫かい? 目を洗っておいで」

 無言でうなずき、ユーは手洗い場に向かった。鏡を見てみると充血した自分の顔が映り、弱々しく微笑むと顔を洗う。掛けてあるタオルを引っ張ると深く息を吐き出しながら、水気を取った。それから背後に感じる気配に、振り返ることなく口を開く。

「……局長さん、あの……」

「どうしたんだい?」

「……なんでもない。ね、ボクお腹すいちゃった!」

「いつも配達、ありがとう。ちょっと早いかもしれないけど、晩御飯にしようか」

 先に歩いて行く局長さんの後を追うよう、ユーは手に持つタオルを握り締め、ゆっくりと歩き出した。

 次回から3章に入ります。

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