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全ての集落を回り終えると、ユーはヴェントの家に向かった。彼はすでに戻ってきており、ユーが来たことを確認すると家を飛び出して首を振る。
「雷の集落でも、やっぱり出てるみたい。そこのお医者様も、原因は判らないって」
「……炎の集落でも、何人もベッドの中にいた。水の集落では亡くなってる人もいたよ……」
その言葉に、ヴェントの表情は凍り付いた。ユーも漆黒の瞳を伏せ、胸元をきつく握っている。
そんな彼に声を掛けようとするが、きつく口を閉じているユーに、ヴェントは同じように口をつぐんでしまった。二人とも黙ったまま、深くうつむいている。
不意に、ユーが深く息を吐き出したかと思うと、顔を上げた。
「ヴェント、ボクは……龍を探しに行こうと思うんだ」
「ユー……?」
ヴェントは思わず、耳を疑った。しかしユーの瞳は真剣で、握る拳に力を込め、体に押し付けて震えを押さえようとしている。
「ボク達の祖先、龍なら……何か知ってるかもしれない、何か判るかもしれない」
もし。
ほかの者がそれを聞いて入れば、伝説上の存在、おとぎ話の存在に何を求めるのか。と、指をさして笑うだろう。バカバカしい、子供の遊びに付き合ってはいられないと、誰も耳を貸すことはないだろう。
だがヴェントは、自身の目で、金色の龍を見たことがある。伝説やおとぎ話なんかではなく、事実であることを知っている。
「……龍に、助けを求めるの?」
「ヴェント、ボクはひとり」
「水臭いことはなしだよ!」
ヴェントはユーの鼻頭に、軽くデコピンをした。予想をしていなかったその行動にユーは鼻を押さえ、目を丸くしてヴェントを見上げる。
「ボクも行く、きみだけで行かせられるわけないだろ」
ユーが苦笑するのを見て、ヴェントは歯を見せて笑った。頭の後ろで手を組み、少しだけ余裕が戻った表情で深呼吸をする。