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竜の国 ~異変~  作者: 夢野 幸
第二章 再会
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2-2

 ヴェントの家にたどり着き、家の中に入ってみると、彼は呆然と天井を眺めていた。自分が入って来たことにも気づいていないようで、正面に回り、そっと手を肩に運ぶ。

「ヴェント」

 虚ろだった瞳に光が戻り、焦点がユーに合った。見る間に表情が崩れていき、眉を寄せると、ユーにきつく抱きつく。

「父さんも……!」

 たった一言だったが、ユーには何が起きているのか、判った。泣きじゃくるヴェントの背を撫で、顔を覗きこむ。頬を走る涙を拭ってやりながら、深呼吸をして口を開く。

「ヴェント、聞いて。リ・セントーレでも斑点が出ている人がいる。……局長さんにも、出たんだ」

 お医者様から聞いたことを簡潔に話すと、ヴェントの顔色はますます悪くなった。机に突っ伏し、背を震わせる。

「どうしようもないの……! リ・セントーレのお医者様でもわからないんだったら、どうすればいいのさ!」

「落ち着いて、ヴェント。……ボクは少し、斑点について調べてみようと思うんだ。ほかの集落にも、広がっているかもしれない」

 ヴェントは、顔を上げた。ユーは泣くこともなく、まっすぐと自分を見ている。しかしその手は見て判るほどに震えており、それを堪えようと強く拳を握っていた。

「話を聞いて、集めて、手がかりを探す。ボクは出来ることをしたい。……ヴェント、力を貸してくれない?」

 思わず、自嘲的に笑ってしまった。それから乱暴に涙をぬぐい、立ち上がる。それを見たユーも、瞳の光を強くした。

「もちろんだよ! 今から行くの?」

「ううん、さすがにもう遅いからさ。明日の朝行こうと思ってるんだ」

「ボクは朝から、この集落を全部回るよ」

 二人はうなずき合い、一度、握った拳をぶつけた。ユーはベッドに眠っているヴェントの両親に目をやり、首を振ると彼を見上げる。

「じゃあ、ボクは帰るよ」

「気を付けてね」

 短く交わし、ユーは再び闇に姿を消した。


 翌朝、ユーは普段より早い時間に手紙が入ったバッグを肩にかけ、局長さんの見送りのもと風の集落へ急いだ。

 集落へ向かう途中、ヴェントがこちらに来ているのが見え、ユーは止まった。ヴェントもこちらに気が付いたのだろう、飛ぶ速さが少し低速になり、自分の前で止まる。

「ユー、風の集落は全部聞いて回ったよ。……残念だけど、斑点が出ていること以外、情報はなかった。ボクはこれから、雷の竜人のもとに行くよ」

「わかった。ボクは手紙を配りながら、聞いて回るね」

 互いに、視線は鋭かった。それを交え、二人はその場を後にする。

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