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竜の国 ~異変~  作者: 夢野 幸
第二章 再会
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2-1

「……あなたも、ですか」

 お医者様は局長さんの斑点を見るなり、一言そう言った。どこか疲れているような、諦めているようなため息をつきつつ、ペンを走らせてここでの会話を簡単にまとめている。

「も? と言うことは、ほかにも……?」

「えぇ。すでに、リ・セントーレだけで十件はありますね」

 そう言うお医者様の顔色も、悪かった。ユーはうつむいたまま、膝の上で握った手を震わせ、手の甲を見つめる。

「まだ、原因は判っていません。……家で安静にして、無茶をなさらぬようしてください。とくに局長さん、ユー君がいるから大丈夫でしょうけど……配達など、して回らないように」

「わかりました。ありがとうございます」

 局長さんは頭を下げ、ユーの手を握ると立ち上がった。ユーは不安そうに局長さんを見上げるが、見上げた表情はとても柔らかく、ユーと目を合わせるとその顔を更に優しいものにする。

「ユー、大丈夫だよ。だからそんなに心配そうな顔をしないでおくれ」

 大きな、しわくちゃな手を頭に置かれ、ユーは思わず目を閉じた。局長さんがクスクスと笑う声が聞こえ、無意識に、繋いでいる手に力を込める。

「さ、帰ろうか」

「うん……」

 胸に広がっている不安は、消えないままに。ユーは翼を広げると、局長さんと共に家へ向かうのだった。

 

 夕食を済ませ、ユーは帽子を頭に乗せると玄関に向かった。翼を広げているユーに局長さんは首をかしげ、後に着いて行くように立ち上がる。

「どこに行くんだい?」

「ちょっと、ヴェントのところに!」

 慌てるよう、短く答えると、地面を蹴りあげて夕闇に飛んだ。


 リ・セントーレだけですでに、十件も斑点が出たと言ってお医者様の元に相談があっているのだ。それなのに、この国で一番技術が発達している「はず」のリ・セントーレでも、斑点の原因が判らないという。

 何かが、可笑しい。治まらない胸騒ぎを抱えたまま、ユーはヴェントの元に急いだ。

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