表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の国 ~異変~  作者: 夢野 幸
第十四章 決別
48/54

14-2


 ――大天使の間には穏やかな笑みを浮かべているサーと、両手と翼を縛られたレガーがいた。コンダムの体に寄生しているポスダーはわずかに顔を歪めながらその場に立ち、怯え、震えているレガーを視界に入れると嘲笑を浮かべる。

「さて、サー、様。これからいかがいたしますか」

「お前は黙っていなさい」

 静かに、斬り捨てるよう言うとサーは自身の眼をその場に展開した。姿かたちがはっきりしないほどに薄っすらと出て来たそれに向かい、膝をつく。

「魔界の長よ、闇の竜人は私と子を残して滅びました」

『よくやった、サー=オスキュリート』

 サーが膝をついている相手を見て、レガーは息を飲むときつく目を閉じて顔を逸らした。彼はそれに微笑みながら彼女の傍にそっと座り直し、困ったように眉を寄せる。

「魔界にとって大天使が邪魔な存在である、ということは解っております。ですが私は……妻を傷つけたくないのです。知恵を、お貸しください」

『ならば一つになればよかろう……本当の意味で、な。必要な力を、我が貴様に与えてやる』

 サーはそれを喜び、進んで『力』を受け入れた。黒い何かが彼の中に入ってしまうと、彼女の正面に両膝をついて座り込み頬を両手で包んでしまう。

「……サー=オスキュリート。世界を魔界に売った、世界の裏切り者よ。私は決して……決してタダでは死にません。どうしてあなたを愛してしまったのだろう、一族を捨ててまで……!」

「レガー、きみは死なないんだ。私と共に生き続けるんだよ」

 魔界の長から流れていた黒いものが、今度はサーからあふれ出してきた。それはレガーを、そしてサー自身をも包み、覆い隠していく。

 そしてその黒がなくなった時、レガーの姿は消えた。


 話を終えると、サーは目を細めて天を仰いだ。それから翼に、背から生えている白い腕に触れる。

「レガーの……白く透き通った、絹のように滑らかな肌。陽の光をした小川の流れのように美しい、柔らかい髪。私を捕らえて放さない……月みたいに優しい瞳。全て、私だけのものだ。そしてウィユ」

 ユーはとうとうサーの手を払い、クロウを突き出した。その切っ先はサーの喉元に向けられ、背後には眼を展開している。そして手の甲からも、瞳を突き刺すほどの光が溢れていた。

「それ以上言うな……黙って聞いていれば、ふざけたことばかりぬかしやがって!」

「ふざけていないよ、ウィユ。父さんの話を聞かないとは、悪い子だ」

 サーはわずかに眉を寄せると、四つの手を開いた。そこに、クロウが現れる。

 その形状は先ほど戦った時とは明らかに変わっていた、そもそも彼は、武器に触れていないのだ。三枚だった刃は四枚に変わり、開いた手の形に沿って浮いている。

 ――そして背後には、ユーと同じように眼を展開していた。

 不意に地鳴りがし、サーが立っている付近の地面が割れた。それはすぐにユーの元まで伸び、慌てて翼を広げる。走り行く亀裂はダリエスの傍で戦っている三人の元まで届くような勢いで、短時間のことなのに、背にしっとりと汗が浮かぶのを感じる。

 この地割れは恐らく、サーが展開した眼から流れてくる『力』のせいだ。

「そんな悪い子には、お仕置をしないとね」


 サーがユーに向かい、突進したと同時だった。切り捨て、倒れていたはずの屍が、再び動き始めたのだ。ジューメは舌打ちをして顔を歪めると大剣を構え、ヴェントに視線を投げる。彼は青ざめて歯を打ち鳴らし、返り血を浴びている手は遠目でもわかるほどに震えていた。

「ヴェント! アンスとダリエスを守れ、ここはオレがやる!」

 ヴェントを襲おうとした、恐らく男性だったのだろうその体に向け、息を吐き出すと同時に大剣を振るった。男性は掠れた悲鳴を上げ、すすり泣きながらもゆらりと立ち上がる。

「ボヤッとするな、早く行け!」

 硬直しているヴェントを突き飛ばしながらも、大剣を振るうことは止めかなった。萎縮していた瞳孔がわずかに開くのが見え、ジューメは再びヴェントの背を押す。

 ようやく、翼を開いてダリエスとアンスの傍に行く彼を守るよう、炎の柱を立て、ギチリと眉を寄せた。

「クソッたれ、一体何度こいつらを苦しめれば!」

 悪態をつきながらも、ジューメは戦った。

 返り血に身を、大剣を、大地を染めていく。その色はもはや赤くはなく、闇のような漆黒だった。

 

 ダリエスも守られているだけではなかった、血の気を失い、顔を白くしているヴェント、そして機械により自分を守っているアンスの二人を自身の尾で囲い、腕を振り上げ、周囲にいる屍を二人に近づけないように払っている。

 だが、いくら払い飛ばそうと、屍はすぐに動き始めるのだ。ダリエスは低く唸ると、目に鈍い光を宿す。

「サー……。この者たちに取りついている魔界の者どもは、奴から流れる魔界の力を元に、動いている。その力を止めない限り、この者たちに安息はない」

「そんな!」

 ダリエスの言葉に。二人は黒龍につられるよう、サーと戦っているユーを見た。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ