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竜の国 ~異変~  作者: 夢野 幸
第十四章 決別
47/54

14-1

 言葉の意味をくみ取れず、ユーはわずかに首をかしげた。そんなユーに微笑みかけながら、サーは翼にそっと触れる。

「フフフ、私はね、我慢が出来なかったんだよ。出来なかった、どうしても」

「……何がだ」

「おや、きみならば解ってくれると思っていたんだけどなぁ。闇の竜人の村に、いる事がだよ」

 話している間にも、サーの体は変化していた。腰の辺りから二本の足が飛び出し、翼が大きさを増していく。

「平凡で平和すぎて退屈で……。眼の力を、魔界の力を使うことができるのに、魔界を封じるためだとか世界のためだとか、眼を継承していかなければならない。この素晴らしい力を使うことすら、この腐れるほど平和な世界では許されなかった。それが苦痛で、怨めしくて、耐えられなかった」

 優しい笑みが、僅かに歪んだ。ユーはクロウを、今度こそ取り落とさないようしっかりと握りながら、サーの一挙一動を見つめる。

「でもね、ウィユ。父さんがそんな苦しい日々を送っている時に、眼からぼんやりと……魔界の長様が姿を現したんだよ。そして父さんに、こう言ったのさ」


『お前を、眼の呪縛から解放してやろう。自由になれる、その眼の力を、存分に使うことが出来るぞ』


 その時の会話を思い出したのだろうか、サーは恍惚な表情になった。腹部にある眼に手をかざし、口の端を歪めながら縁をなぞっていく。

「もちろん飲んだよ、念願の自由に……この、余る力を使えるチャンスだ。飲まないわけがないさ」

「何を持ち掛けられた」

「この国さ」

 間髪を入れない返答に、ユーはクロウを握る手に力を込めた。サーはそれを見て笑い、ユーに手を伸ばす。彼の頬に手を置くと、幼い子供を見るような眼差しで顔を覗き込んだ。

「だけど私は、レガーとウィユには手を出さないようにお願いしたんだよ? 家族は愛していたからね」

「よく言うね、ボクは魔界の住人に、殺されかけたよ」

「そう……あの寄生虫には私も焦った」

 舌打ちをし、サーはわずかに離れた。俯きながら眉を寄せ、顎に手を置く。

「全く……ポスダーの奴は下僕の分際で、随分と勝手なことをしてくれたよ。確かに村を滅ぼすようには命じていたさ」

 ユーの顔が歪んだことにも気づかないよう、サーは独り言のように言葉を紡いでいった。呆れたため息をつき、肩を竦め緩々と首を振る。

「闇の竜人が残ってしまえばそこの老いぼれが、封印の鍵を別の血筋に写してしまう可能性があるからね。……だけどきみのことは捕えるように、命じていたんだ。でもあいつは私の指示を聞かず、ウィユ、きみを殺そうとした……」


「でも」


 微笑みながら上げた顔には、誇らしそうな表情を浮かべていた。

「さすが私の息子だ! 本当ならば私直々に裏切り者を消し去ってもよかったんだけど、きみはポスダーに負けるほど弱くはないと思っていたよ。そして実際、生き残ることが出来た。フフ、少し話が逸れたね」

 向こうの方ではヴェント達が戦っているため、本当ならば武器同士がぶつかる音やいろんな声がしているはずなのに、ユーの耳にはそれらが一切入ってこなかった。顔が熱いのが判り、鼓動の音が鼓膜の奥からガンガンと頭を殴る。

「ポスダーには村を滅ぼした後、レガーを捕らえてルシアルの元へ行くよう伝えてあった。もちろん、私もその時点で長様と繋がっていることを気づかれないよう、建前上捕えられていたよ」

 そこでようやく、ユーの表情に気づいたのだろう。愛おしそうに見つめると今度は両手だけでは物足らず、背後に生えている腕をも回して四本の手で顔を包み込んでしまう。

「レガーも隠れ里の住人だからね、そこから解放されるための方法を彼女に話したらなんと言ったと思う? ……あなたは、狂っている。ってさ」

 手を払うこともなく淡々と見返してくるユーに、ゾクリと背を震わせた。薄く開いた口から舌をだし、チロリと唇を舐める。

「それでも父さんは、母さんを傷つけたくはなかった。だから長様に、知恵を借りたんだよ」


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