12-2
「ジューメ、ユー、笑ってるよ」
ヴェントはユーの顔を覗き込みながら、自身も微笑んでいるのを感じていた。ジューメも片目を開いて、ふと口元を和らげる。
「どんな夢を見てるんだろうね」
「さぁな……」
そう呟いて再び目を閉じながらも、ジューメは確かに微笑んでいた。それを見たヴェントはますますその瞳を優しいものにする。
「どんな夢を、見てるんだろうね……」
食事を終えたユーは、レガーの膝の上に座っていた。ドアが開き、村長が家の中に入って来ると、ユーは膝を降りて遠慮なく村長にも抱き着いて行く。そんな彼に長は目を細め、そっとユーの頭に手を乗せる。
「おやおや、今日のウィユはどうしたんだい? レガー」
「フフ、甘えん坊さんなんですよ、今日は」
夢のはずなのに、長の手は暖かかった。視界が滲んでいくのを、長の体に顔を押さえつけることでごまかし、顔を上げると精一杯の笑顔を浮かべる。
「うん、今日のボクは甘えん坊だ」
「自分で認めたぞ、この子!」
「たまにはいいわよね? ウィユ」
レガーの手が、長の手が。本物と間違えてしまうほど、暖かかった。目を半ば閉じると感づかれないように伏せ、きつく、二人に抱き着いて行く。
そうすると二人も自分を包み込んでくれて。幸せで、悲しくてまた、泣きそうになってしまった。
夢の中で数日が経ち、ユーは幼いころの自分の特等席だった、炊事場がよく見える食卓のイスに座り、足をブラブラと揺らしていた。頬杖をつき、思わずため息を漏らす。
(父さんにも、会いたいな……)
父の姿は、夢の中にはなかった。父のことを訊ねようとしてもそこだけはいつも声が聞こえず、知るすべがないのだ。
テーブルに突っ伏し、頬を膨らませたが、夢の中に何を求めるのかとユーは苦笑した。顔を上げたら炊事場に立つ母の姿が、竜人とは違う――ルシアルの大天使であるという証の、純白の翼がよく見える。
(母さんは光の竜人で、ルシアルの大天使様だったんだよね)
自分がそう言ったら、母はどれだけ驚くだろう?
想像し、肩を揺らしてクスクスと笑ってしまった。その声が聞こえたのだろう、レガーが振り返る。
「どうしたの? ウィユ」
「ううん、なんでもない!」
「ふふ、変な子」
そう言って頭をなでてくる母の手を優しく握り、ユーは目を閉じた。
だが。
ユーは、その幸せな時間が『壊される』ということを、忘れていた。
そして、今いる空間が所詮は夢であり、自身の記憶をなぞっているに過ぎないことを。
どう足掻いても、過去の出来事なのだということを……。




