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竜の国 ~異変~  作者: 夢野 幸
第十二章 夢
42/54

12-2

「ジューメ、ユー、笑ってるよ」

 ヴェントはユーの顔を覗き込みながら、自身も微笑んでいるのを感じていた。ジューメも片目を開いて、ふと口元を和らげる。

「どんな夢を見てるんだろうね」

「さぁな……」

 そう呟いて再び目を閉じながらも、ジューメは確かに微笑んでいた。それを見たヴェントはますますその瞳を優しいものにする。

「どんな夢を、見てるんだろうね……」


 食事を終えたユーは、レガーの膝の上に座っていた。ドアが開き、村長むらおさが家の中に入って来ると、ユーは膝を降りて遠慮なく村長にも抱き着いて行く。そんな彼に長は目を細め、そっとユーの頭に手を乗せる。

「おやおや、今日のウィユはどうしたんだい? レガー」

「フフ、甘えん坊さんなんですよ、今日は」

 夢のはずなのに、長の手は暖かかった。視界が滲んでいくのを、長の体に顔を押さえつけることでごまかし、顔を上げると精一杯の笑顔を浮かべる。

「うん、今日のボクは甘えん坊だ」

「自分で認めたぞ、この子!」

「たまにはいいわよね? ウィユ」

 レガーの手が、長の手が。本物と間違えてしまうほど、暖かかった。目を半ば閉じると感づかれないように伏せ、きつく、二人に抱き着いて行く。

 そうすると二人も自分を包み込んでくれて。幸せで、悲しくてまた、泣きそうになってしまった。


 夢の中で数日が経ち、ユーは幼いころの自分の特等席だった、炊事場がよく見える食卓のイスに座り、足をブラブラと揺らしていた。頬杖をつき、思わずため息を漏らす。

(父さんにも、会いたいな……)

 父の姿は、夢の中にはなかった。父のことを訊ねようとしてもそこだけはいつも声が聞こえず、知るすべがないのだ。

 テーブルに突っ伏し、頬を膨らませたが、夢の中に何を求めるのかとユーは苦笑した。顔を上げたら炊事場に立つ母の姿が、竜人とは違う――ルシアルの大天使であるという証の、純白の翼がよく見える。

(母さんは光の竜人で、ルシアルの大天使様だったんだよね)

 自分がそう言ったら、母はどれだけ驚くだろう?

 想像し、肩を揺らしてクスクスと笑ってしまった。その声が聞こえたのだろう、レガーが振り返る。

「どうしたの? ウィユ」

「ううん、なんでもない!」

「ふふ、変な子」

 そう言って頭をなでてくる母の手を優しく握り、ユーは目を閉じた。


 だが。

 ユーは、その幸せな時間が『壊される』ということを、忘れていた。

 そして、今いる空間が所詮は夢であり、自身の記憶をなぞっているに過ぎないことを。

 どう足掻いても、過去の出来事なのだということを……。

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