12-1
裏の世界にも夜は訪れるらしく、日が暮れるころに四人は光の道を外れ、森の中で休むことにした。ユーが突如体調不良を訴えたのだ、額に手を置いてみるとわずかに熱を持っているようで、頬が紅潮しているのが判る。
「ごめん……早く行かないと、いけないのに」
「無理をして倒れられても困る、今日はゆっくり休めよ」
ジューメは自身の荷物から毛布を漁り、ユーに放り投げた。それを受け取ると体を丸くするように毛布の中に潜り込み、そのまま目を閉じる。
「ユー、大丈夫かなぁ?」
「薬を持って来ればよかったですね」
「一晩休めば回復するだろ。オレ達も、体を休めるぞ」
ジューメの言葉に従ってヴェントはユーの傍で横になり、アンスは自身の趣味に没頭することにしたのか、地面に一枚布を広げるとその上に機械を置いて弄り始めた。ジューメは近くの木に寄りかかり、それぞれのことをしている二人を見つめる。
「……今日はゆっくり休め。ダリエスの元に着いたら、何が起きるか判らないからな」
と、自身もまた、緩く目を閉じるのだった。
(――また、夢の中だ)
ユーは辺りを見回しながら、ぼんやりとそう思った。そこには、幼いころ一緒に遊んでいた友人たちがおり、ぼんやりとしたまま無意識に近寄っていく。
「あ、ウィユ!」
「ウィユ―、一緒に遊ぼう!」
「え? でも、ボクは……」
ふと、おぼろげに記憶に残っている友人たちと、自分の視線が同じことに気づき、思わず自分の体を見た。村を出た時と同じ、そして幼い彼らと同じ大きさ。戸惑っていると彼らに手を引かれ、大きな木が一本生えている空き地に入っていった。
「木登り競争しようよ! どっちが早く登れるか!」
「つばさは、ダメ―!」
「……うん」
――あぁ、こうやって……遊んでいたっけ。今だけでも、夢の中だけでも……甘えて、いいかな?――
ユーはそう思って微笑むと、すでに木を登り始めている友人たちを追いかけるよう、木へ手をかけるのだった。
思い切り遊んで、日が暮れはじめた頃に、ユーは自分の家に帰った。家の中をキョロキョロと見回していると、母の姿を炊事場に見る。ユーはその背に、勢いよく抱き着いて行った。
「母さん……!」
「あら、おかえりなさい、ウィユ。今日は何をして遊んだの?」
振り返った母は、記憶にある姿と寸分違いなかった。暖かく光に反射する金色の髪を揺らしながらユーに視線を合わせて腰を降ろし、体をギュッと抱きしめる。
「今日はね、木登り競争をしてきたよ! ボク、勝った!」
そう言うと母、レガーは優しく微笑み、ユーの頭をなでた。それがなんとなく嬉しくて、表情を崩す。
しかしふと、周囲を見渡し、首をかしげてしまった。
「母さん、父さんは?」
訊ねると、母の口が動いた。何かを言ったのは確かなのに、まるでその時だけ声帯がなくなってしまったかのように、掠れた声さえ聞こえてこない。
「母さん? 聞こえないよ?」
「………」
やはり、聞こえなかった。今度は反対方向に首をかしげるが、どこかに出かけているのだろうと思うことにした。
記憶が正しければ、村にいるときから、父、サーはよくどこかに出かけていたから。
「ね、お腹すいた! 今日のご飯はなに?」
「今日はシチューよ」
「やったぁ!」
そのうちに帰ってくるのだろうと思い。ユーは笑い、早くご飯を食べようと、食事の準備を手伝うため母に並んだのだった。




