11-3
「それは……」
「何か知ってるの? ライトニアさん!」
ライトニアはその斑点を見て、喉の奥で低く唸り、目を吊り上げた。
「知っている、というよりも、感じる。我々が愛する大地から、命を奪った者たちの力を」
「じゃあ! やっぱり、これが関係しているんですか!」
眼光を鋭くするライトニアに両手の甲を見せながら、ユーは唇を噛んだ。肩を震わせ、自身も忌々しげに『眼』を睨む。
「ポスダーは……魔界の住人は、倒したはずなのに」
「封印が、ひどく揺らいでいる……? いったい、何が?」
両手の眼を見て、ライトニアは酷く動揺していた。爪先で、傷つけないよう、ユーの手に触れると顔をグッと近づける。
「なぜ? ダリエスに、なにかあった? それならば、同じ世界にいるのだ……私が気づかないはずが……」
「ライトニアさん、ダリエスさんがいるところを教えて! ボク達が行く、行かないといけないんだ。新たな光の竜人の長、大天使ラポートに世界を託されている」
勢いよく顔を上げたユーの表情に、迷いはなかった。ライトニアはふと微笑み、爪先で頭を撫でる。
「解った。……すまない、幼いお前たちを、過去から続く戦いに巻き込んでしまった」
「今更だろ、あの寄生虫との戦いの時点ですでに巻き込まれてるわ。……一つ聞く、ここに来る前、コンというユーにそっくりな奴に襲われた。あいつは何者だ」
問いかけるジューメの口調は厳しく、瞳は、火山で見たソーリスの様だとユーは思った。ライトニアはそんな彼に苦虫をかみつぶしたような表情をする。
「その、背負っている大剣……布で包んであるな、もしかすると、あれにやられたのか」
「あぁ、人からもらい受けた大事なもんを、見事叩き砕いてくれたよ。あいつは何者だ」
複雑な表情で、ライトニアは視線を逸らした。龍も表情が豊かなんだなぁと、ユーは思わず微笑み、隣のヴェントもクスリと笑ってしまう。
「す、すまない……その、その子については、私から話をしていいものかどうか、判断しがたい。せめて、その大剣をなおしてやろう」
言われ、ジューメが大剣を取り出して地面に置くと、ライトニアが折られたそれにそっと口を近づけた。光が流れ込んでいくのを、呼吸を潜めるようにして静かに見つめる。
ライトニアはしばらくそうしていたが、ゆっくりと顔を上げた。
「これは元々、表の世界の物だ。闇に冒されていないのならば、なおすのは容易い」
「ありがとう、ライトニア。……お前が言えなくても、いつか、正体を暴いてやるさ」
唸るジューメに、ライトニアはどこか申し訳なさそうに頭を下げた。だが、すぐにユーを見つめ、彼の言葉を待つ。
「ライトニアさん、ダリエスさんはどこに?」
「……私とは反対の場所に。表ではお前たち闇の竜人が生きていた場所に、いるのだが……」
「……あぁー……。七歳で村を出てから、一度も戻ってないし……場所、覚えてないや」
乾いた声で笑うユーに、ライトニアは目を和らげた。翼を広げ、高らかに吼えると、その体が輝く。
「安心するがいい、私が彼の元に行くための、導となろう」
光は地面を這い、一直線に伸びた。ユーはその先を見つめ、目を細くし、ライトニアを見上げる。
「この光をたどっていけ、そうすればダリエスの元に行ける。……彼の元にたどり着くまで、光を絶やさずにいよう」
「ありがとうございます。……行こう!」
翼を広げて先に行く三人に遅れ、ユーは一度、ライトニアに向けて頭を下げた。彼は体から光を伸ばしたまま、ユーの頭を撫でる。
「ウィユ=オスキュリート。……世界を、頼む」
「解りました」
力強く頷き、ユーは三人の背を追うように翼を動かすのだった。




