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竜の国 ~異変~  作者: 夢野 幸
第一章 ハジマリ
4/54

1-3

「……ボクの勝ち!」

「いや、まぁ……勝てるとは、思ってなかったけどね?」

 と、ヴェントは腕を組み、呆れたようにため息をついた。ユーは拳を高く突き上げながらも、白い目をするヴェントに苦笑する。

「いくらなんでも、海に飛び込むことはないんじゃない? 危ないなぁ」

 ユーは、全身ずぶ濡れになっていた。海水が滴る(したたる)服を絞りながら、小さなくしゃみを漏らす。

「翼を広げようと思ったら、ちょっと間に合わなくって……」

「無茶するよ」

 ヴェントは笑いながらもユーの服を絞るのを手伝い、ポーチの中からタオルを取り出すとユーにかぶせた。ユーも大きめのタオルをバッグの中から引っ張り出して、ヴェントのタオルで頭を拭く。その間に、ヴェントはユーの翼を丁寧に拭いていった。

「局長さんが大変そうだね」

「家ではちゃんと大人しくしてますー」

「解ってるよ。こんなにワンパクなのは、ボクといるときだけだって」

 ヴェントが言うと、ユーは柔らかく微笑みながら彼に抱きついていき。まだ水分が取れきれないまま抱きつかれた方も、服を濡らしながら、楽しげな声を上げて頭を撫でるのだった。


 ユーはそのまま、崖でヴェントと別れるとまっすぐに家に帰った。玄関を開けると、局長さんが目をパチクリとさせる。

「ユー? どこで遊んできたんだい?」

「アハハ……崖で遊んでて、海に突っ込んじゃった」

 笑いながら言うユーに、局長さんも微笑んだ。それから部屋の奥に入ると大きめのタオルをユーにかぶせ、まだ濡れている彼の翼と頭を拭く。

「風邪を引くといけないから、お風呂を入れようか。少し時間がかかるだろうから、暖かい飲み物を淹れよう」

「はーい! ありがとう、局長さん」

 と、顔をあげた時だった。局長さんの首筋に赤黒いものが見え、ユーは動きを止めた。それに局長さんは首をかしげ、ユーを見る。

「ユー、どうしたんだい?」

「あ……局長さん、これ……」

 タオルを頭からかぶったまま翼を広げ、ユーはそのホクロにそっと触れた。局長さんもまた、ユーの手の上からそれに触れ、わずかに擦る。

「あぁ、このホクロかい? 最近出来たんだ」

「そ、か……」

 そのホクロに触れた瞬間、なんとなく動悸どうきが乱れ、手の甲が痙攣した気がした。それでもユーは表情を変えず、床に足をつけると翼を畳む。

「なにか、心配事?」

「う、ううん。なんでもないよ」

 視線を泳がせながらも、ユーは首を振った。そんな彼に局長さんは再び首をかしげるも、炊事場へ向かう。

「さぁ、ユーがお風呂を出たら、夕食にしよう。今日はシチューを作っているよ」

「やったぁ! 局長さんのシチューはとってもおいしいから、大好き!」

 満面の笑みを浮かべるユーに局長さんも嬉しそうに微笑み、暖かいミルクをユーに渡すと炊事場へ向かうのだった。

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