11-2
幾度陽が沈み、月が昇ったか判らない。
その戦いに終止符を打ったのは、その当時、最長老となってしまった闇の龍、ダリエスだった。魔界の住人が流れてきている門を見つけ出し、己の力を賭け、眼を鍵とし門を封印した。結果として魔界の住人が国に流れてくることはなくなり、自分の世界へ帰ることも出来なくなった闇の者たちは退治されていき、徐々にその数を減らしていった。
だが。魔界の闇に冒されたこの国は、命を食われつつあった。
このままでは残っている生命まで、魔界の闇に毒され消えてしまう。そう判断した闇と光の龍は、世界を二つに分けた。
生が宿るものが残る世界を『表の世界』とし、かろうじて生き残り、ダリエスが守り切った龍。ブリスト、サドリア、マリアナ、ソーリスを世界の守護として置いた。
そしてダリエスとライトニアは、蝕む闇を払うため、生が失われつつある世界。『裏世界』に残った。
しかし、世界を分けるときにはすでに、ダリエスの力のほとんどは魔界の門を封じるために使われていた。また、彼の力だけでは補えないところもあったため、表の世界にも門を封じる者を置かなければならなかった。
そしてその任は、ダリエスの力の影響を最も受け、闇との戦いで最も貢献した血族、オスキュリートに委ねられることとなる。その血族の体のどこかには、ダリエスが門を封じるために使った『眼』が刻まれた。
別に、ライトニアは自分の力を引く者たちをこの戦いの伝承者とし、闇の一族を、オスキュリートの血族を支えるよう命じた。
「……これが、この裏世界と、魔界との戦い後の世界の始まりだ」
「なるほど。あなた方が言う、力、というものを掴めませんが……」
「う、む。なんと言ったらいいのだろう……」
「あぁ、いえ。構いませんよ、あなたの口ぶりからすると恐らく、あなた方龍にとっては空気と同じようなものなのでしょうから。空気とは何か、という説明をするくらいには面倒でしょうし、掴めていないだろうことも承知です」
アンスはいつの間に、ペンと紙を出していたのだろう。それらを帽子の中にしまいながら平然と言った。真剣に話を聞いていたつもりなのに、アンスの声で思わず我に返ってしまい、ユーは俯きながら苦笑する。
「あなた方の力を使い、世界を蘇らせようとしているのですね。そして同じ世界だからこそ、いずれ元に戻したときに不都合が起きないよう、一切を同じにした」
「その通りだ。聡明な、マリアナの同胞よ。……ウィユ、お前はこの世界に、何を望む?」
声を掛けられ、ユーは立ち上がり、表の世界で起きていることを簡単に話した。それが病ではないこと、原因が今の時点で解っていないこと。そして、アンスが実際に自身の斑点をライトニアに見せた。
彼の家を出た頃は二の腕だけだったそれが、手首まで広がってきている。




