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金色の鱗を持つ龍、ライトニアはこの世界にないはずの気配を感じ、ゆっくりと顔を上げた。はるか遠く、木々の隙間から覗いている空に懐かしい姿を見つけ、目を細める。
「おぉ、オスキュリートの者よ……その、友人たちよ。なぜ、この世界に?」
休めていた翼を広げ、ライトニア跳びあがった。すると遠くでユー達が驚くのが判り、喉を鳴らすように笑う。彼らがこちらまで来るにはあとどれほどかかるだろうか、だが、自身が彼らの元に行くにはあっという間だろう。
久々に空を翔ると、ユー達もそれに気づいたらしく、そこに止まった。
「ライトニアさん!」
「一年ぶりだな。この世界に……平行世界に、何用で?」
ライトニアは四人を包み込むように腕を動かし、ゆっくりと下降していった。それに合わせてユー達も地上へと体を向ける。
地上に降り立つとライトニアは翼を畳み、足を折るように地面へ腰を降ろした。それからチラリとアンスに瞳を動かし、ユーを見る。
「あ、彼はアンス=インヴェンター。新しい友達です」
「今、平行世界と仰いましたね。ここはまさか、あちらの世界と瓜二つなのではなく、同じ世界だということですか」
ユーが言い終るとほぼ同時に、アンスは口早く言った。ライトニアは彼の言葉に、ほぅ、と短く感嘆の声を漏らし、うなずく。
「……? ライトニアさん、どういうことですか?」
「ねぇアンス、どういうこと? 同じ世界?」
それぞれ訊ねるユーとヴェントだったが、アンスはただライトニアを見ているだけだった。なんとなく、座るよう促された気がして、四人も地面へ尻を着ける。
「少し、長くなる」
ポツンと放ったその声は、低く、どこか悲しげだった。空を見上げる目は、遠い。
「私が知っているところしか、話せない。……それでも、構わないか」
「私は、単に知的好奇心を満たしたいだけです。それに、今後もしかしたら役に立つ知識となるかもしれません」
躊躇いなく、濁すこともなくキッパリと言い切るアンスに思わず笑みを零し。ライトニアは、薄く口を開いた。
――遥か昔、裏の世界と表の世界は一つだった。伝説としてではなく、風の龍も、雷の龍も、水の龍も、炎の龍も。そして光と闇の龍も大地に悠々と横たわり、竜人とも力を合わせ、仲良く平和に暮らしていた。
……ある、事件が起きるまでは。
『それ』の存在は、力を持つ龍ならば気づいていた。勘が鋭いものならば、感じていた。だが『それ』がこの国と関係があるとは欠片も思わず、互いに干渉できるだろう、という憶測すら立てることなく過ごしてきた。こちらからは触れることはなく、あちらからも手を伸ばしてくることはない。それが当たり前であると、思い込んでいた。
『それ』が――魔界が、国に干渉して来たのだ。
次元が歪み、魔界の門が開かれ、闇の住人が流れ込んできた。平和は一瞬にして破壊され、龍は自身が生き、愛する大地を守るために戦った。
竜人の中には龍と共に戦う者や、戦うだけの力や精神がなく、逃げ隠れる者。また、同胞を裏切り、魔界の住人に味方をする者も現れた。それでも龍は、湧き出る水のようにやってくる魔界の住人と、命を賭して戦った。不慣れな闇の力に中てられ、幾頭もの龍が体を蝕まれながら倒れていった。
どれほど時が流れようと、その光景を忘れることは出来ないだろう。




