10-2
棒を手放し、翼を広げ、宙がえりをするように身を翻した。その勢いで地面に接している得物の先端を、テシトゥーンに向け蹴り飛ばす。
僕が避ける暇もなく、ユーが庇う時間もなく。棒は的確に、テシトゥーンの喉元を貫いた。貫通する棒の行き先を目で追うといつの間にかコンがそこで構えている。飛んで来た棒を掴むと上半身を捻りながら、たった今貫いた喉へ振り下ろした。頭部が合わせて地面に飛び、頭を失った体は消滅していく。
「ほらー、つまんなかったー! 遅いし。きみと遊びたい!」
「マジか……!」
口角を軽く上げ、薙ぎ払うように振るった棒を、地面を蹴り上げることで避けた。右手のクロウを手放して代わりに再びマトゥエを引っ張りだし、面で棒を打ち返す。
単純に考えれば、コンの二倍ほどの長さがある棒と、ユーの五倍ほどの大きさがある鎚がぶつかればより大きく、重い鎚が、すなわちマトゥエの方が打ち勝つだろう。そしてそれは、ユーもそう思っていたからこそ、持っていたクロウではなくマトゥエで迎え撃ったのだ。
――結果は。ユーが力負けし、空中で体勢を崩すこととなった。それを見たコンは冷たく笑い、翼を痙攣させる。
「させないよ!」
コンが空へ向かおうとした瞬間、ヴェントが生み出した竜巻に体をさらわれた。ユーはその間にどうにか体勢を立て直すが、コンの目がつり上がったのを、見逃さない。
「邪魔しないでくれる?」
「ヴェント、逃げろ!」
ユーは慌てて翼を畳んでコンに向かい、手を伸ばしたが、それは空しく(むなしく)宙をかいた。彼はヴェントに一直線に飛び、棒を光に戻して拳に纏わせる。
「寝ててよ」
ヴェントが咄嗟に構えた剣を左手で往なし、右手を地面につけて肘を曲げ、伸ばす反動で跳躍した。そのまま躊躇いなく、ヴェントの首筋を思い切り蹴り飛ばす。
「ヴェント!」
「こ、この野郎!」
崩れ落ちるヴェントの体をそっと地面に横たえているコンに、ジューメは翼を広げると大剣を振り上げた。勢いを殺さず、全身全霊の力で、躊躇わず振り下ろす。
――ありえない――
それを目の当たりにしたユーは、息をすることも忘れるよう、光景に見入っていた。ジューメも息をのみ、体を硬直させる。
コンは大剣を、片手で受け止めていた。それも、指でつまむように。
「おじさん……んーと、おにーさん? も、本気出してくれないんならいいや」
「何をっ……」
大剣を持つ指に力を入れ、剣の腹に向かって拳を振り上げた。光が纏う拳は大剣を半ばから折り、それでも勢いの止まらないそれをジューメの鳩尾に食い込ませる。
顔を歪ませ、灰から空気を吐き出すと、声もなく気を失った。コンはジューメの体を横たえながら、顔を紅潮させて体を震わせるユーを見る。
「これでちゃんと遊べるね」
「ふざけんなよ……」
マトゥエの柄が砕けんばかりに握りしめ、翼を畳むと突っ込んだ。振りかざされたユーの得物を見て、コンは拳の光を再び棒に変えると受け止める。
「よくも、二人を!」
「だってぇ、風のお兄ちゃんは遊ぶの邪魔するし、龍のおにーちゃんはちゃんと遊んでくれないんだもん!」
ユーが振り回すマトゥエを、コンが頬を膨らませながらも平然と受け止め、鈍い音が幾度も響き渡った。棒が弾かれたり、マトゥエが弾かれたりと、互いの力量に差はないように感じるが、ユーはきつく眉を寄せていく。
自身の息が徐々に上がっていくのに対し、コンは平然と棒を振るっているのだ。




