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ヘルズ火山に行く前にジューメと別れた場所、ドロドロザコと戦った辺りで彼と合流し、ソーリスの元でも情報を得られなかったことを簡単に話した。すぐにルシアルへ向かうよう相談すると、ジューメとヴェントの二人はユーの顔を伺う。
「ユー、大丈夫か」
「え? あー……。大丈夫だよ、どうしたのアンス?」
アンスはユーの手をヒョイと取ると手袋を少し上げ、手首に指を置いた。しばらく緩く目を閉じていたかと思うと、眉を寄せながら見上げる。
「心拍数が上がっていますね、緊張しているようですよ。無理はなさらない方がいい」
「うん、ちょっと緊張はするね。……今の大天使とはまだ、顔を合わせて話したことがないし」
「なんか、気になる言い方だな?」
ジューメが言うと、ユーは小さく笑った。帽子越しに頭を掻き、自身の手の甲へ視線を落とす。
「実は、さ。リ・セントーレに帰った後、一人でルシアルまで行ったんだ。とりあえず、今の大天使は女性だってことくらいしか知らない、どんな人かも判らないから、緊張はするよ。……あれからまだ一年くらいしか経ってないし。でも、乗り越えないといけない」
グッ、と強く拳を握り、顔を上げた。その表情には、迷いも恐れもない。
「彼女たちもボクと同じなんだから。行こう」
翼を広げたユーに、ジューメも口の端を軽く上げた。ジューメが翼を広げるとそれに続くように二人も畳んでいた翼を開く。
それから、ユーを先頭に、四人は地面を蹴ったのだった。
その集落にたどり着くまでに、二度、月が昇った。あまり長距離の移動に慣れていないのだろうアンスは時折ジューメに背負われて飛び、ヴェントはユーに手を引かれた。
「確か……このあたりだったよな。もうあいつはいないのに、なお、見えないのか」
「……死にかけたボクを、ボロボロの体で、助けてくれただけの力はあったんだもん。入ろう」
地面に降りると、ユーは三人を振り返った。彼らはユーに近づきながら歩き、むにゅんとした感触に眉を寄せながら集落の中へ入る。
集落の中を通っていると、いくらか好奇の視線を向けられたが、気にすることもなく塔に向かった。固く閉じられている門に目を閉じて深呼吸をすると、ユーはゆらりと、手を伸ばしていく。
だが、手が触れる前に、門は音もなく開いて行ったのだ。
「……だって」
「入る、か」
ひとりでに開いた門に誘われるように、ユー達は足を進めるのだった。




