8-3
潜水艇を地面におろし、眼を閉じると、ユーは二人が出てくるのを待った。
「残念というか、やっぱり、というか。情報は得られなかったね」
「えぇ……。それにしても、随分と気性が荒い方でしたね、龍の鱗が頑丈でよかったです」
「そういう問題でもないと思うけど……。ボク、会話自体はちょっと朦朧としてるんだよね」
「ごめんねヴェント、無理させちゃった。結局マトゥエ出しちゃったし、最初から出してればよかった」
それぞれ地面や木の根に座り、頭を寄せた。ヴェントにソーリスとの会話を簡単に話、これからの行動をどうするか相談している。
「もう、ジューメさんと連絡を取りますか」
「あ、ボクその前に行きたいところがある」
ユーの言葉に、ヴェントとアンスは同時に顔を向けた。ユーは苦笑しながら頭を掻き、緩く腕を組む。
「フランメルさんに……さ、ジューメの事、聞いてみようかと思って。余計なお世話かもしれないけど」
集落には何があっても近寄らないと言った彼。集落の外で生活をしている竜人たちは確かにいるが、彼のように『絶対に』集落へ戻らない。という人は、今まで聞いたことがなかった。
「自分の集落に行きたくないって、相当だよね」
「ボクみたいに、もうないならまだしも。……それに今の斑点の状況も、知りたいしね」
「あまり他人のことを詮索するのは、と思いますが。異変を調べる意味では、行ってみて無駄にはならないでしょう」
と、三人一致で。ジューメに連絡を取る前に、炎の集落へ向かうことにするのだった。
あまり時間をかけるわけにもいかず、ユーがアンスの手を引いて飛ぶように炎の集落へ飛んだ。相変わらず気温が高い集落だったが、火口の上にいた時と比べれば随分と涼しく感じる。
「ユー、ここって、いつもこうなの?」
「ううん……斑点が、進行してるのかな……」
ヴェントが「こう」と尋ねたのは、集落の人気のなさだった。ユーは彼の問いに、即座に首を振る。外には今、子供の一人もいなかった。地面に立ち、とりあえず族長の家に向かってみる。
「フランメルさん、失礼します」
断りを入れて中に入ると、彼は横になっていた。枕元に腰を落として顔を覗き込むと、気配に気づいたのだろう薄く目を開き、柔らかい笑みを浮かべる。
「ユーか、お前は大丈夫なのか?」
「ボクは、ボク達は何ともありません。でも、フランメルさん」
見えている肌には、無数の斑点があり、服で隠れている箇所にもそれが広がっているだろうことは簡単に想像がついた。体を起こそうとする族長の体を押さえつけ、ユーは立っている二人を見上げる。
「……聞けたらいいな、とは思ったけど、さ。ジューメと合流しよう」
「思った以上に、時間はないみたいだね……。うん、判った。風に頼んで声を運んでみる」
ヴェントは先に家を後にし、ユーはフランメルの胸が上下していることを確認すると立ち上がった。アンスも、無意識だろうか、自身の腕を緩く握っている。
「ルシアルに急ごう。ちょっと特殊な集落だけど、大丈夫」
「特殊な集落? 光の竜人の集落だ、ということは伺いましたが、それはどういうことでしょう」
「うーんと、光の竜人の血を持つ人が同伴しないと、中に入れない集落なんだ。だけどそれは大丈夫、ボクが持ってる」
「……混血とは、珍しいですね。まぁ、とりあえず先へ進みましょう、ヴェントさんも無事、ジューメさんと連絡が取れたようですよ」
ヴェントが開け放って行ったドアから外を見てみると、彼が軽く手を上げていた。ユーとアンスはそれに答え、一度フランメルの様子を見つめて外に出る。
「ボク、風でこうして連絡が取り合えるなんて知らなかったよ。風を使って、もっと色々やってみよう」
「ジューメのおかげだね、話は聞けなかったけど……斑点の状況は判ったし。ヴェント、合流地点まで案内してよ」
「わかった」
本来の目的は果たせなかったが、現在の問題に対する残り時間があまりないことは解り。三人はジューメと合流するため、炎の集落を後にするのだった。




