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強い衝撃に体を揺さぶられ、船体に叩き付けられそうになった。ユーは咄嗟にアンスへも腕を伸ばし、ヴェントと彼を庇うよう自らクッションになる。パネルは真っ暗になっているが、よく目を凝らすと鱗の様なものが見えた。
「ソ、ソーリスさんですか!」
「何者だ、なぜオレの名を知っている」
グルグルと喉を鳴らす音が聞こえ、こちらを警戒しているだろうことは容易に想像ついた。ユーはヴェントをそこに寝かせ、パネルに這うようにして近づく。
「ボクは闇の竜人、ウィユ=オスキュリートと言います。ソーリスさんの名前はサドリアさんに教えてもらいました、ボク達は今、世界の異変について調べています」
他の龍の名が出たことで少し警戒が緩んだのだろう、しばらくパネルが真っ暗になったりマグマの色になったりと忙しかった。だが、ギラリとした鋭い黄色の瞳が映って落ち着く。
「世界の異変か何かは知らないが、オレにはその手の話しは判らん。ライトニアかダリエスに訊ねるのが一番だろうよ。……小僧ども、お前たちが今中に入っている、この入れ物はどうやって作った」
どのような異変が起きているのか、内容も聞こうとせず、ソーリスは一蹴した。異変よりも潜水艇の方が気になったらしく、撫でまわし、覗き込んでいる。その度に船体が激しく揺れるのだが、どうやら気性が荒いらしいこの龍はあまり刺激したくなかった。止める事もせず、アンスも機械へ近寄りながらこの潜水艇を作った経緯を話す。
ジューメの鱗の話をした時、ソーリスの目がわずかに見開かれ、口角が歪んだ気がした。グルグルと鳴っている音は、先ほどとは違ってどこか機嫌がよさそうに聞こえる。
「お前らのようなちっぽけな竜人が、自力でここまで来たことに敬意を表し、火口の外まで運んでやろう。そのあとはお前たちでどうにかしろ」
潜水艇の底から持ち上げられるのが判り、ユーは再びアンスへ手を伸ばすと二人の体を支えた。マリアナと比べると運搬も荒く、揺れる船内で歯を食いしばるよう耐える。
揺れが急に収まり、パネルを見てみるとそこにあるのはマグマではなく、青空だった。
「オレが運べるのはここまでだ、オスキュリートの小僧、あとはお前が運べるだろう」
「え、ボ、ボク……」
「運べん、とは言わせんぞ。ダリエスの力を引く闇の竜人よ、オスキュリートよ。彼に力を認められた血族の誇り、忘れるな」
ユーが返事をする前に、ソーリスは火口よりはるか上空で潜水艇を放した。自身は素知らぬ顔で再びマグマの中に飛び去り、突如空中に放り出されたユー達は全身から血の気を失う。
「あ、アンス開けて!」
反射的に潜水艇の扉を開いたアンスに、ユーは外に飛び出すと躊躇わず眼を展開した。マトゥエを掴み、面に潜水艇を乗せる。
「大丈夫か、衝撃は出来るだけ行かないよう、気を付けたつもりだが……」
「だ、大丈夫です。ですが……」
「結局、最初にヴェントが言ってた方法で運搬することになったな……」
マトゥエを片手で構えたまま。ユーは深々とため息をついて肩を落とし、そんな彼の様子にアンスは苦笑するのだった。




