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「あっつい! ねぇ、これ以上近づくのは無理でしょ!」
ヘルズ火山の火口、その上に三人は来ていた。
上空と言ったが、その火口は片方の掌で隠れてしまうほど遠くにあり、それでも服の下は止めどなく汗が流れている。
「炎の竜人の集落なんて、生易しいものだね……。アンス、どうやって行くの」
「この潜水艇を使えばいいのでしょうが……。問題はどうやって
入るか、ですね」
「空中で潜水艇の中に入るわけには、いかないでしょ……どうしたの?」
アンスとヴェントの視線が同時に動き、ユーは彼らの視線を追って自身の背後を見た。だがすぐに、後頭部に受ける視線に気づくと目を瞬かせる。
「なに?」
「マトゥエの面に潜水艇を乗せてさ、ボク達が入った後にユーも入って、消せば……」
「出さないよ! あんな物ヒョイヒョイ出さないって! 暑さで思考がやられてるよ! ヴェントが風で潜水艇を下から支えてればいいんじゃないの!」
「あー……」
勢いよく首を振りながらユーがヴェントに言うと、彼はボーっとした表情でそこに小さな竜巻を生みだした。パン生地をこねるよう、風を手で弄っていき、上昇気流にする。
「アンス、ちょっと潜水艇を出してみてくれる?」
「え、えぇ……」
アンスは気流の上に向け、箱を放り投げた。すると潜水艇がそこに現れ、ヴェントは風をその下へ上手く滑り込ませる。船体が傾くとユーがどうにか支え、風の上で安定させることが出来た。
「おぉ……」
「い、今のうちに中に入ろう。火口までは外の様子が判れば、ボクが風でどうにかする」
急かすように言うヴェントに、ユーとアンスは即座に潜水艇の中へ入った。ヴェントが最後に入ると扉を閉じ、アンスがパネルを表示する。キチンと火口が表示されており、ヴェントは真剣な面持ちでパネルを睨んでいた。
船体が揺れながら、緩やかに降下していくのが判った。二人は邪魔をしないようヴェントから視線を背け、口をつぐむ。
火口まであとわずか、というところだった。船体が大きく揺れ、急降下を始めたのだ。マグマに突っ込むとパネル一面を赤く染め上げながら潜水艇は沈んでいき、アンスは機械の元へ、ユーはヴェントに近寄る。
額に脂汗をびっしりと浮かべ、深くゆっくりと呼吸を繰り返しながら、半ば瞼を閉じていた。自分たちの想像以上に、風を扱うことは体力を使うのだろうと、ユーはヴェントの体を抱きしめてアンスの動向を見守る。
彼は機械を叩きながらパネルを見上げ、緩々と首を振りこちらに来た。
「誤算です、これでは何も見えませんね……」
「え……ここからは、出られるよね?」
「ヴェントさんの回復を待つことになりますが、マグマの表面に浮上することは可能ですので、その後先ほどのように風でどうにかしていただくことになるかと……」
「オレの縄張りに無断で入ってこようとは、いい度胸をしている!」




