7-2
水の集落を後にすると、ユー達は森に入った。アンスはいつもと変わらない表情であたりを眺め、ヴェントは背伸びをするとジューメを振り返る。
「ソーリスさんがいる場所、どこだろうね。マグマの中だって聞いてるけど」
「ヘルズ火山」
誰よりも早く答えたのは、アンスだった。呟くよう言った彼を三人は見つめ、考えている風の彼が、再び口を開くのを待つ。
「もし、炎の龍……ソーリスさんもマリアナさんと同じほどの体長があるのならば、一番有力なのはそこでしょう。他の火山では、体長に対して火口が小さい、龍が姿を変えることが出来るのならば話は変わりますが」
今までに会ってきた龍は、ほとんど同じほどの体長だった。アンスの考えが正しいのであれば恐らくその火山にいるのだろう。
「そして、マグマの中に住んでいると言いましたね。再びこの潜水艇が使えるでしょう、炎の竜人であるジューメさんの鱗を研究して製作している物です、海底よりもそちらの方がふさわしい」
淡々と言うアンスを、呆然と見つめる三人は、傍から見たら滑稽だっただろう。
今から情報を探さなければならないと構えていたら、こうもあっけなく解決してしまったのだ。
「ヘルズ火山は、炎の竜人の集落付近にあったと思います」
アンスが言うと、ジューメはうなずいた。どこか苦々しい表情を浮かべ肩を竦める。
「ダメ元だ、とりあえず行こう……と言いたいところ」
「ダメ元ってなにさ! ボク達が弱気になってどうするの!」
ジューメの言葉を遮るようヴェントが声を荒げ、目を吊り上げた。詰め寄られたジューメはかき消された言葉の内容を彼方に放り投げ、殺気立つ彼をなだめる。
「悪いって……」
「えぇ、効率は悪いのではないでしょうか」
二人の横を通り過ぎながら、アンスははっきりと言った。今度はその言葉で眉間にシワを刻み、一人歩くアンスを睨みつける。
「どういうことさ」
「まあまず、無駄だと考えていいでしょう。みなさんの話からすると……これまでに風の龍、雷の龍と会っても解らなかった、そして深海へ潜ってみても収穫はゼロ。ならばなぜ炎の龍と会うことにより、答えが解ると思うのです?」
そこまで言って、アンスは含み笑いを浮かべながらヴェントを見上げた。
「あぁ、これが病によるものではないと気づかず、ここまで収穫がないのにそれでも期待しているあなたには。効率が良いか悪いか、わからないですか」
「お、おまえなああああああああああああ!」
ヴェントの中で、何かが切れたらしい。目を逆三角形にすると一人でテクテク歩いて行くアンスに飛びかかろうとした。ジューメが慌てて背後から腕を押さえるように止め、ユーもヴェントの正面に回って彼の体を押さえる。
「あんのガキ、昨日から人の事バカにするだけバカにしてええええええええ!」
「お、落ち着けよヴェント! な?」
「ヴェント、とりあえず落ち着こう! 人が変わってるから!」
足をバタつかせ、ジューメの腕を振りほどこうと体を捩りながらもヴェントの目はアンスだけを見ていた。そんなヴェントに、睨まれている本人はヒョイと肩を竦めて足を止める。
「ですが……事実ですよね?」
「お前もお前で煽るな! こいつのキャラがぶっ壊れてんだろ!」
ジューメが呆れながらも、声を荒げたその時だった。
ユーの瞳が鋭く光り、それに気が付いたのだろうジューメはヴェントを降ろすと同時に身構えた。アンスは一人視線を彷徨わせて、眉を潜める。
「どうしたんです……?」
「ユー、何がいるか判るか?」
「具体的には判らない。でも……魔界の住人だっていうのは、間違いないよ!」
四人を囲むように、見覚えのあるマントが現れた。ヴェントは剣に風を纏わせながら、ジリッと、手に力を込める。
「煙ザコ! なんで!」
「でも、戦ったことがある奴なら、対処できるね」
「面倒くさい事に変わりはないけどな!」
ジューメも大剣を炎で包み込み、ユーはクロウを構えた。アンスはとりあえず、それがこちらに害を成すモノだということは把握したのだろう。帽子を地面に置き、その中を漁り始める。
「やるぞ!」
ジューメの声を合図に。三人はマントに向け、飛び出した。




