4-3
ジューメは加勢をしに行こうかと大剣に手を伸ばしたが、ユーの表情を見てそれを止めた。
「眼を開いたら、相変わらず荒いんだな……。おいヴェント、大丈夫か」
「だい、じょうぶ……。ちょっと斬られたけど、傷は浅いと思う。ユーは……」
「ユーならあそこ……いや、ここ、だな」
ジューメが空に視線を上げ、そのまままっすぐ降ろすと、ユーが男たちを地面に叩き付けながら急降下してきた。男の足の付け根に突き刺していたクロウを引き抜いた瞬間、ジューメが頬を痙攣させるように口の端を持ち上げ、ヴェントも舌打ちをしているユーへ目を向ける。
刃の形状は今までと変わりのないように見えたが、一面に、目を凝らさなければわからない程度の返しがついていた。……それは刃を刺されたモノの肉を抉るようにしながら、切りつけられるもの。
「ちっ。実験台にくらいなれ、って言ったのに……。切れ味はまぁまぁ、ってところか」
倒れる男たちを冷たく見下ろしながらユーは刃を眺め、滴る血を布きれで丁寧に拭った。それから眼を閉じ、クロウをしまう。
「もう少し、改良出来そうだなぁ。もうちょっと刃を長くしよう」
「……ユー、その、新調したのか? てか自分で?」
頬を引きつらせながら言うジューメに、ユーはヴェントの前に座り込んで心配そうに見上げながら、コトンと首を傾げた。
「うん、ほら、前のクロウはルシアルで壊れちゃったから……。新しくしたんだけど、使う機会が中々なくって、使い勝手が判らなかったんだよね」
「……今度からオレが相手してやるよ……」
「アハハ、ハ。ちょっとボクじゃあ無理かなー」
引きつった笑みを浮かべている二人に、ユーは再び首を傾げた。それでもヴェントの肩口の傷と額の傷にそっと触れ、目尻を下げる。
「ヴェント、大丈夫?」
「平気だよ。……ごめん、ちょっと冷静になれた。焦ってるのも不安なのも、ボクだけじゃないはずだよね」
目を伏せ、僅かに声を震わせるヴェントの頭をクシャリと撫でると、彼の怪我していない方の腕を掴みジューメは立たせた。ユーも一緒に立ち上がり、ヴェントに剣を渡す。
「水の竜人の集落に行くぞ、何か手がかりがあるかもしれない。奴らなら、深海へ行く方法も知っているかもしれないからな」
「それに、怪我の治療もちゃんとしないと」
ジューメとユーの言葉に、ヴェントは一度深くうつむくと、しっかりとうなずいて顔を上げた。剣を腰に下げ、翼を開く。
「行こう」
「決定、だな。出発だ」
ユーとヴェントは地面を勢いよく蹴り上げ、空へ向かった。その背を見つめ、ジューメは一度盗賊たちに憐みの視線を向けると二人の後を追うのだった。




