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しばらく飛び、ヴェントは頭を掻き毟る(かきむしる)と地上に足をつけた。一度深呼吸をし、フラフラと傍の木に近寄ると背を反らせ額を木の幹に思い切り叩き付ける。
「何をしてるのさ、ボクは……! あせって怒鳴り散らして勝手に飛び出して! ガキか!」
額から何かが流れて、ヴェントは木から頭を離さないままそれに指を這わせた。予想通り指先は赤く染まっているが、もはやそんなこともどうでもいい。
「落ち着け、落ち着けボク。そうだよ、焦っても仕方がないんだ。まだ、何も、全く方法がなくなったわけじゃない……」
頭では解っているのに、心はどうしても焦っていた。
もしこうしている間に、両親の斑点が広がって行っていたら? もしこの間にも苦しんでいたら、もし……?
思考は止めどなく。悪い方へ、悪い方へと影を伸ばす。
「父さん、母さん……!」
崩れ落ちるようにヴェントは膝を折ると、木に寄りかかったまま座り込んだ。
突如ユーが目を鋭くし、翼を広げた。わき目も振らず飛んで行くユーにジューメは目を丸くし、慌てて後を追う。
「ユー、どうした!」
「わからない! だけどヴェントが!」
ユーは、言葉を止めた。額から血を流すヴェントが木に背を向けて座り込んでおり、その周りには男たちが立っている。彼が力なく握っている剣をもぎ取るように奪い、値踏みをするようにねめつけていた。
「ヴェント!」
「てめぇら!」
ユーとジューメの声で、男たちは二人に気が付いたらしい。ヴェントの剣を手にしたまま空に向け、逃げ出した。ジューメは咄嗟にヴェントの体を起こしてサッと診る、左肩口に切り傷があるようだが他に酷い怪我はないようで、額からの血もすでに止まっている。
「待ちやがれ!」
ユーは眼を展開し、その中からクロウを取りだすと男たちを追った。どうやら空で待機していた者もいるようで、十人の男が目の前でにやついている。
「よう、坊や。一人でオレ達の相手をしようって?」
「はっ……。新しいクロウの切れ味の実験台にくらい、なってくれよな?」
以前のクロウは、指で刃を挟むようにして持つものだったが、ユーが眼の中から取り出したクロウは根元が一本の鉄パイプにより繋がり、それを握って刃を指の間から出すような形になっていた。




