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「……すまない」
雲海を突き抜けた更に上空に、雷の龍はいた。彼は話を聞くと、申し訳なさそうに首を振る。
「私も、そのような病は聞いたことがない」
「じゃ、じゃあ! 他の龍さんなら、炎の龍さんや水の龍さんなら、何かわかりますか!」
声を震わせながら必死に顔を上げ、目を見開くヴェントに龍はスッと目を細め、再び首を振った。
「奴らのもとに、お前たちは行けまいよ」
「どうして!」
「炎の龍、ソーリスはマグマの中に。水の龍マリアナは深海六千メートル以上の海底に住んでいる。風の龍……ブリストは何も言わなかったのか? そもそもお前たちのような幼子に私の居場所を教えるのもどうかと思うのだが……」
ヴェントの表情に張り付いたのは、絶望だった。ジューメもきつく眉を寄せて俯き、ユーも目を伏せる。雷の龍サドリアはそれを見て深く息を吐き、深く頭を下げた。
「竜人で、我らの元まで来る者は今までいなかった。……いや、これからも恐らく、いない。それを幼い君たちがよく来た。だからこそ力になれない事……本当に済まない」
「いや、ありがとうサドリア。オレ達はもう行く……」
ジューメは静かに告げ、ヴェントの背をそっと押した。ユーもまた、サドリアに背を向ける。
「オスキュリートの者よ」
ヴェントとジューメが飛び立った直後、ユーは一人呼び止められて振り返った。
「お前は、何か感じているか?」
「え?」
首をかしげると、サドリアは緩く目を閉じ、緩々と首を振った。それに再度首をかしげながらも軽く頭を下げ、二人を追う。
「……私の、思い過ごしならばいいのだが……」
空を仰ぎ。サドリアは、静かに目を閉じた。
久しぶりに地上に降り立ち、三人は地面に座り込むとただ俯いていた。誰も何も言わず、言えず。嫌な静けさが取り巻いている。
「他に手がかりは、なしか」
風が吹き、ジューメはそちらを見た。ヴェントが肩を震わせ、自分で気づいていないのだろうか、風を生み出している。
「ゆっくりしている時間は、ないのに……! 今、この間にも、父さんや母さんの斑点は増えていってるんだよ! 何か、なにかないの!」
「ヴェント、落ち着け」
「落ち着けるもんか! だって……ブリストさんもサドリアさんも何もわからなくって、他の龍さんのところには行けないって言われて! どうするのさ、このまま放って置けって言うの!」
「ヴェント」
「いいよ! ボク一人でも進む!」
「ヴェント待って!」
ユーの制止も耳に入れないようにしてヴェントは翼を開き地面を蹴りあげ、森の中を駆けて行ってしまった。それを追おうとすると肩に大きな手が置かれ、振り返る。
「少し落ち着かせてやれ、焦る気持ちもわかる。……あいつもまだ、子供、なんだ」
そう言って伏せている目は、ひどく辛そうだった。口元の笑みも弱々しく歪んでおり、ユーはうなずきながらもヴェントが飛んで行った方角を見つめる。
「……うん」




