3-5
雲を抜け、頂が見えるとそこに、龍の姿と飛び回るジューメが見える。
「ま、待てって! オレの話を聞け!」
「黙れ、炎の龍よ! なにをしに来た、我が縄張りに無断で入りおってこの小僧が!」
「だから! 龍じゃ! ねぇって!」
「戯言を聞く耳は持たん!」
ジューメの焦燥に満ちる声と、体の芯に響く怒号が鼓膜を震わせた。近づいてみると龍の周囲では風が暴れまわり、ジューメは襲い来る風から、バランスを崩さないように体を捻り墜落しないようしながら顔を歪めている。
「ジューメ!」
「ユー、ヴェント! 来るな!」
青緑の鱗をした龍はジューメの言葉で二人に気が付いたのだろうか、その鱗と同じ色をした切れ長の目がギロリと動いた。
「……我が同胞の幼子か。それに、お前は……」
山頂を取り巻いていた風が、止んだ。ジューメは大きく息を吐き出すと二人に近寄り、揃って龍を見上げる。その目はジューメを見ていた時と変わり、穏やかなものになっていた。
「お前たちのような幼い者が、よくここまで来た」
「オレの時と対応が違い過ぎやしねぇか……」
恨めしそうに見え上げるジューメを、龍は鼻で笑った。それにピクリと眉を動かすが、また風を暴れさせられたら敵わないと押し黙る。
「お前が一人で来たから警戒したのだ。昔から平気で人の縄張りに入って来おって、挙句我が力で己の力を増して帰っていく。お前たちとは仲良く出来ん」
「龍じゃねぇってーのに……オレは竜人」
「龍さん! 教えてください、ボク達の国で変な病気が広がってるんだ、もう亡くなった人も出来てる……何かわからないですか!」
ジューメの言葉を遮らん勢いで、ヴェントは叫んだ。風の龍は顔を下げてヴェントを瞳に写す。隣にいるユーが国で流行っている病の事を簡潔に話すと、龍がわずかに目を細めたのが判った。
「そのような病、聞いたことがない」
「そう、ですか……」
「雷の龍のもとへ行ってみるといい。彼は我よりも博識だ」
風の龍はそう言うと、ヴェントの手元に口を運んだ。何かが掌に置かれ、視線を落とす。そこには小さな竜巻があり、中心には指針が揺れていた。
「行け。我にはこれ以上、何もすることが出来ん。……我はもう、お前たちの中では伝説だ」
と、目を閉じた。三人はそれにも拘らず(かかわらず)深く頷き、指針を見つめる。針は、今いるところよりも高い場所を示していた。
「……行こう。龍さん、ありがとうございます」
その針がさす方向へ。三人は目を閉じる龍に背を向けると、翼を動かした。




