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そして飛び始めて三日目に、三人は山脈へたどり着いた。ユーはその山を見上げて思わず絶句し、ヴェントも言葉を無くしている。
「この山脈で最も高い山に、風の龍はいるとされている。……山頂に登った者も、上がった者もいないそうだ。まぁ、こんな山。相当な物好きでも上がろうとは思わないだろう」
その山脈の頂上は雲を突き抜けており、自分たちがいる高さでは霞にも見えなかった。雲の流れを見てみると強い風が吹いているようで、軽い気持ちで飛んで上がれば風に巻き込まれてバランスを崩してしまうのは目に見える光景である。
「ジューメ、どうやって調べたの? 文献はどこで見たの?」
ヴェントからの素朴な疑問に、ジューメは苦笑しながらゆっくりと顔を背けて行った。それに二人は同時に首を傾げ、彼の正面に回る。なんとなく口元は引きつり、額には汗が浮かんでいるように見える。
「ジューメ?」
「……まぁ、その。風の竜人の、続長の家にちょーっとお邪魔して、ちょーっと家の中漁らせてもらって、な?」
「………」
「ほ、ほら! さっさと行くぞ!」
白い目をした二人の視線から逃げるよう、ジューメは山に沿うようにして飛び始めた。
雲に差し掛かり始めた頃、突風に煽られ、ユーはバランスを崩した。咄嗟に体勢を立て直そうと翼を大きく開くがますます風に押されてしまい、ジューメが伸ばした手も届かない。
「ユー!」
体を押す風とは別に、背から風で支えられた。ヴェントに手を掴まれどうにか体勢を戻すと、苦々しく微笑む。
「ありがとう」
「ううん……このあたりの風の強さは、異常だよ。ジューメは大丈夫?」
「オレは平気だ、お前たちは一度山に下りて休め、先にみてくる」
ジューメはそう言うと、返事も待たずに行ってしまった。酸素が薄くなっていることもあり、風に煽られ体力を削られていた二人は素直にうなずくと降下し地面に足をつけ、呼吸を整える。
どれほど経っただろうか、ヴェントが不意に顔を上げ、翼を開いた。
「ヴェント?」
「上の方で、風が暴れてる……。行ってみよう!」
言うが早いかヴェントはユーの手を掴み、自分たちを風の球で包み込むと突風を防ぎながら頂上に向かって勢いよく翼を動かした。




