3-2
歩き続け、ふと空を見上げてみるとすでに陽は落ちており、星が出てきていた。それでもジューメは淡々と歩いている。自分たちの周りが明るかったのは、ジューメが周囲に炎を浮かべてくれているおかげだった。
「ジューメ、そろそろ休もうよ?」
「あのなぁ……。こんなところで休んでも、食料も調達できなかったら水分すら手に入れられないだろ。向こうで水の音がしてるから、もう少し我慢しろよ」
「……あ、ホントだ。水の音が聞こえる」
ジューメが言うと、ヴェントも風に耳を澄ませた。ユーも同じように耳を澄ませてみるが何も聞こえず、ジューメを見上げる。
「すごいねぇ……」
「ホント、風の竜人のボクでも風を使わないと聞こえないくらいなのに」
「お前らみたいに集落の中で生活してないから、イヤでも敏感になるさ。もう少し踏ん張れ」
「うん」
「わかったよ」
先に先に歩いて行くジューメの背を、ユーとヴェントは炎のやさしい光に包まれながら、駆けるように追うのだった。
しばらく歩いた先でジューメとヴェントが言った通り川が見え、三人はそこで休むことにした。ジューメは荷物の中から竹筒をいくつか取り出し、川に沈めながら浮かべていた炎を一つに集め、地面に振れない程度の場所へ浮かべる。
「ヴェント、風でいくらか食料を調達できるか」
「わかった!」
ヴェントはすぐに翼を広げ、飛んで行った。ユーはそれを見送り、自分に対する指示を待つ。
「んで、お前は、だ。……なんでまた泣きそうな顔してたんだ」
「え……?」
予想もしない言葉に、顔を上げた。ジューメはユーから顔を背けたまま、苦々しい表情で頭を掻く。
「やっぱり気づいてねぇか、自分で」
「ボクが、泣きそうだった……?」
「あぁ。バッグを握って、な。……たぶん、ヴェントも気づいてるぜ」
ユーは口をきつく閉じ、バッグを開けた。その中から手紙を取り出すと、両手で優しく包み込む。
「……局長さん、ボクは何も言ってないのに……言えなかったのに。ボクが旅に出ようとしてること、解ってたんだ」
と、手紙を開いた。ジューメはその様子を静かに見守る。
――ユー、何も言わないでも、きみがどこかに行こうとしているのは解ったよ。いつ帰ってくるのかは分からないけど、帰って来るときにはシチューを作って待っているからね。だから、お友だちとも一緒に食べよう。無事に帰ってくるんだよ――
あぁ。謎の病気にかかっても、自分が何も言わないで出てきても、局長さんは自分をきちんと迎えてくれるんだ。病気に負けないで、ボクらを受け入れてくれるんだ……。
そう思った瞬間、目から涙がこぼれていた。手紙にいくつもシミをつけ、いくら拭っても止まる気配は一向にない。
「ったく……。ほら」
ジューメは自分の荷物の中から布きれを出し、ユーに放った。
「我慢をするなと言うのに。……お前たちはまだまだガキんちょだ、背負うな、気負うな。何かあったらぶつけちまえ、大人になったら中々出来ねぇぞ」
ユーの隣にドカリと腰を降ろすと、ジューメは深く息を吐き出しながら頭を乱暴に撫でた。ユーはしゃくり上げ、ボロボロと出てくる涙を布きれに吸わせながらもクスクスと笑ってしまう。
「さっさと解決して、さっさと帰るぞ。……オレも久々に、まともな料理口にしたいしな」
ぶっきらぼうに、そっぽを向きながら言うジューメにユーは小さく頷き、頭の上に載っている大きな温かい手を感じながら、微笑んだのだった。




