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プロローグ
「いったい……これは、なんなんだ……!」
「苦しいよう……助けて……」
悲痛な声が、国のいたるところから聞こえてくる。
とある洞穴にいる赤髪の男は、知人の風の竜人を通し、その悲鳴を何度も、いくつも聞いていた。
水から、雷から、風から。中央からも、己が生まれた炎からも……集落の外からも。寝ても覚めても、その声が聞こえてくる。
「……たく。動くしかねぇのかよ」
立ち上がり、男はそばに置いていた大剣を手に取ると翼を広げ、洞穴から飛びだった。
懐かしい、友の元へ。