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模擬幻想試験  作者: 仙崎無識
一時限目~社会分野~
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一時限目:社会分野(2)

菖蒲(あやめ)に示された方向にあるのは、一軒家だった…と言えば聞こえはいいが、実際は日本史の教科書とかに出てきそうな茅葺(かやぶ)きの屋根の木造家屋だった。鍵もへったくれもない戸を開けて中に入ると(菖蒲曰く盗まれるようなものはないようだ)、見事なまでの1LK。

「…まじかーー」

思わず呟かざるをえなかった。ここでいつまで過ごすのだろうか。


入ってすぐのキッチン―(かまど)等がある場所―は土間となっており、そこから一段上がったところにリビング―畳敷きの、中央に鍋とかを引っかける金具が天井からぶら下がっている場所―がある。


取り敢えずまだ飯時じゃなかったので、靴を脱いで畳の上に寝転がる。

「・・・ふう・・・」

試験とはいえ戦争真っ只中の別世界に飛ばされいきなり斥候的なものをやらされ、改めて落ち着いて横になる機会が今までなかったのだ、と思う。


俺は「あの時」の理由を聞くためにここまで来て試験を受けた訳だが…『奴』に会えるかどうかも今の時点じゃさっぱりわからない。

「ま、考えてもしゃーないか」


起き上がって、両手を前に出し、手のひらを内側に向けて一定の間隔を保つ。

気分としては見えないボールを両手で持っているみたいな感じだ。

フォン、とパソコンの起動音みたいな音が響き、水色の球が具現化した。


所謂(いわゆる)、領域発動第一形態、「球体」(スフィア)である。

見たところ学校の実習で普段やっているのとあまり変わらない状態だから、試験中でも領域発動は難なく使えるのだろう、覚え書きにも有った通り。


「やっぱ落ち着くわ~」

水色の球を天井に向かって投げたり壁にぶつけたりする。そのたびに跳ね返って俺のところに戻ってくるので大した問題はない。


学校で習ったところによると、領域発動とは自分のいる空間に影響を及ぼす能力らしい。50年前にこの模擬幻想試験を導入することが決定されたとき、既に進化していた次世代電気機器や通信網の影響からか自らの想像力を装置(デバイス)を通じて行使することが可能となり始めていた。勿論このような能力は国などが主体となって推進し、今では学校の「情報」と「体育」の授業の一部が領域発動の実習に充てられている。

「球体」形態は基本中の基本で、中学の初めか、早ければ小学校の終わりに習う。基本ではあるもののその分奥が深く、「球体」を完全な球にするには領域発動に慣れておかねばならない。俺の創る球にしたって少し横幅の方が長い。

この「球体」は領域発動において重要な「領域」の確定を担う。どれほどの想像力であっても範囲外であれば無効力だし、どれほど微小な想像力でも範囲内なら発動する。

「球体」における「領域」の範囲、及び想像力の強さから発動者の力量が分かるので、発動者同士の領域が接触した場合 これを「領域接触・侵犯」という)、能力の強いものが弱いものの領域を支配できるようになる。この範囲のめちゃくちゃ広い奴を「絶対領域」と呼ぶ。(決してスカートと靴下の間、という意味ではない)


俺はまだ半径20mほどの円の中しか領域発動できない。また、物影などの後ろとか、目視できない場所に力を行使することはできない。つまり、今は家の中だけ、である。

赤羽(あかばね)とかはすげえ上手かったよな~」

と、高校のクラスメイトの名を呟いてみたりする。


皆どうしているだろうか。もう試験が終わっているのだろうか。

そんなことを考えていたので意識が彼方に飛んでいたのだろう、


「赤羽様がどうかしましたか?」


「!?」


振り返ると、青い着物を着た男が立っていた。



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