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迷車両で行こう43

 この頃N700系1000番台には悩みがあるようです。

「はぁ・・・。」

「どうしたの。ため息なんかついて。人間関係でもうまくいってないの。」

ため息をつくN700系1000番台にN700系3000番台が聞きます。

「なんでさぁ、僕は「のぞみ1号」や「のぞみ64号」の運用に入れてないんですか。」

「・・・「のぞみ1号」。・・・「のぞみ64号」。どういう意味。」

「知らないんですか。」

「知らないわけないでしょ。あんた後輩のくせに先輩をバカにしすぎだよ。あの6時00分に東京でる「のぞみ1号」と18時55分に博多を出る「のぞみ64」号がどうかしたの。」

N700系3000番台が聞き返します。「のぞみ」の存在は知っていますが、N編成はそれがどういう「のぞみ」かというのを知らないんです。

「「のぞみ1号」は東京都博多の間を4時間55分で走っていますし、「のぞみ64号」は博多と東京の間を4時間50分で走っています。」

「へぇ。「のぞみ」でも所要時間に差があるんだね。でも、その運用に入れないっていうのをどうして嘆く必要があるの。君は運用が決まっていないんだから、仕方ないんじゃ無いの。でも、「のぞみ」の運用には確実に私たちが入ることが確定してるんだから、すぐに運用に入れると思うよ。そう悲観することもないさ。」

「N2編成先輩。あなたは最速「のぞみ」の運用に入りたいって思わないんですか。」

「思ってないわけじゃないよ。欲を言えば「のぞみ64号」の運用で一番早く東京まで行ってみたいわ。でも、もし運用に入るなら、500系先輩の4時間49分を切る「のぞみ」で運用に入りたいわねぇ。」

そこにN700系0番台Z53編成が入ってきます。

「ただいま。」

「お。後輩。お仕事お疲れ様。」

とN2編成が声を掛けます。

「あっ。先輩。今日は何で走ってきたんですか。」

「「のぞみ267号」です。」

「そうなのかぁ・・・。先輩はよく運用に入っていますね。うらやましいです。」

「そんなことないですよ。あの運用って結構疲れますから。」

「もう。東京から新大阪までしか走らないのに。そんなこと言ってるんじゃないよ。」

N700系1000番台G4編成の隣にいたN700系0番台Z32編成が口を開きます。N700系0番台Z32編成は全般検査に入っていたので身体はピカピカです。

「あっ。Z32編成先輩。」

「Z32先輩は「のぞみ1号」か「のぞみ64」号の運用に入ったことがあるんですか。」

すかさずG4編成が聞きます。

「入ったもなにも。私はどっちの運用にも入ったことがあるんだけど。」

「羨ましいです。」

「羨ましいってねぇ・・・。1323人の席に座っているお客様に危険が及ばないように、1000キロ以上をトップスピードで走るってことがどれぐらいきついことか。分かってるでしょ。」

「それは十分わかってるつもりですけどね。」

「・・・。」

「本当に分かってるのかなぁ・・・。でも、どうしていきなりトップスピード運用に就きたいと思ったの。」

「それは思いますよ。新車のお約束ですから。それに、昼間の「のぞみ」は2時間33分が基本時間ですよ。さらにN2編成先輩たちがよく運用に入る30分発の「のぞみ」は浜松から西明石までの間岡山行きの「ひかり」にふたをされて、2時間36分で走ることを余儀なくされているんですよ。そんなにたらたら走る「のぞみ」の運用に誰が好きで入りたいと思いますか。だいたい。前を走る「ひかり」や「こだま」が遅いのが原因なんですよ。東海道新幹線にはもう「のぞみ」ぐらいしか走ってないじゃないですか。もう途中の駅も全部廃止してもいいんじゃないんですか。「のぞみ」の停車駅以外。」

「・・・。」

「・・・。」

これには何も言えないN700系0番台Z32編成、Z53編成、3000番台N2編成であった。

「まったく。君は僕によく似ているなぁ。」

聞き耳を立てていた500系V6編成が口を開きました。

「あっ。500系先輩。」

「まったく。新車だからと言っても、君はN700系の一部なわけだし。それに東海道新幹線にはたくさんの「のぞみ」が走っていることだし、いつかは運用に入れるよ。その時を今は待てばいいんだと思うね。」

「もう。落ちぶれが何を言うかと思えば。」

「落ちぶれとはなんだ新人。」

「まぁ、落ち着いて。G4編成。」

お告げ:はぁ。もう。君は今までの新車の中で一番血の気が多いねぇ。

「えっ。」

お告げ:そこまで最速「のぞみ」にこだわるなら、1日だけ「ひかり」も「こだま」も走らせないでおこうか。それをしたら、どれほどのお役様が混乱に陥ると思っているんだい。それでも最速「のぞみ」がいいっていうなら、私たちは手伝わないから、一人でやるんだねぇ。

「えっ。ちょ・・・。ちょっと待ってくださいよ。それって全部僕一人でやれってことですよねぇ。そんなこと無理ですよ。いくら早く東京と大阪の間を走っても5時間経たないと同じ場所に列車が戻ってこないって絶望的じゃないですか。」

お告げ:そうって欲しくないなら、大人串、今ある「のぞみ」運用についていなさい。いずれ君には最速「のぞみ」の運用を組ませるから、それまで待っていなさい。


 次の日。念願の「のぞみ1号」運用にG4編成は入れたそうです。

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