九本のもふもふ!
「ふわ~。幸せ幸せ~♪」
魔女はご機嫌MAXでした。
「にゃう~」
にゃんこも便乗してご機嫌でした。
「むぅ……一体何故こんなことに……」
魔女とにゃんこのご機嫌な原因である客人は難しい表情で首を傾げていました。
一体何故こんなことになったのだろうと。
九尾の妖孤は首を傾げるのです。
九本の尻尾を魔女とにゃんこにもふもふなでなですりすりされながら……。
時間は少し遡ります。
にゃんこのファイヤーランス実演練習を終えてから、魔女とにゃんこは家に戻ろうとしました。恐怖に震えるスカルくんはもちろんガン無視です。スルーです。
どっかーんっ!
「わっ!」
「にゃうっ!?」
いきなり空から狐が落ちてきました。
結界を突き破って落ちてきました。
空から落ちてきたので、もちろん狐は地面にめり込んでしまっています。生きているかどうかも怪しいものです。
「うぐ……」
ぴくぴくと身体を震わせながら、狐はどうにか生きていました。
よく見ると尻尾が九本あります。
地球世界の物語でよく知られた九尾の妖孤のようです。異世界にもいたのか……などと変な感心をする魔女でした。
「九本……」
九本のもふもふ尻尾を目にした魔女は、うずうずとなっています。しかし見ず知らずの狐にいきなり飛び掛かって尻尾もふもふセクハラフルコースを敢行するのはちょっと気が引けます。なけなしの理性を総動員して、どうにかこらえます。
……常識的行動に理性を消費しないで下さい。
魔女の人格は日々壊れつつあります。
耳尻尾もふもふに関しては完全に壊れつつあります。
もう引き返せないところまで来ているのかもしれません。
ちょっとだけ内気だったごく普通の女子中学生は、遠い夢の彼方に消えてしまいました。
「いたたた……なんやこの凶悪な魔力溜まりは……!」
狐が喋りました。
妖艶なおねいさんっぽい声です。
「しゃべった!」
にゃんこがびっくりします。自分だって喋る猫だということをすっかり棚に上げています。そこがまた萌えポイントです。あばたもえくぼの変則的使用法で、あほな部分が胸キュン! みたいな感じです。
「そりゃあ妖孤なら喋るぐらいはするでしょ」
魔女の方は冷静沈着です。耳尻尾うずうずを堪えて冷静な振りをしています。今のところは見上げた忍耐です。……冒頭のシーン通り後で台無しになりますが。
「まったく酷い目に遭ったで~」
ぼふん、と狐が変化しました。
「おねえさんになったっ!」
「で、でかいっ!」
狐は着物姿で胸元ぼいんの美女に変化しました。髪の毛は緑色で、なかなかに整った顔立ちをしています。声と同じく妖艶なおねいさんという感じです。
魔女の『でかい』はもちろん、狐のおっぱ……もとい胸元をさしているのでした。
「………………」
そんな二人の、特に魔女の第一声に微妙な反応をする九尾の妖孤なのでした。




