表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/363

魔女っ娘さんの二股宣言?

「いい湯だね~」

「やっぱり日本人は温泉だよな~」

「にゃうにゃう~。ぽっかぽか~」

「………………」

 ドワーフが棲むフリューガ火山、その中にある地下都市に魔女達一行は訪れていました。

 一行のメンバー構成は、魔女、にゃんこ、勇者、黒鍵騎士です。

 名物温泉に浸かっている四人のうち三人は極楽極楽な気分でしたが、内一人だけは微妙な表情で黙り込んでしまっていました。

「どしたの? ここの温泉気持ちよくない?」

「き、気持ちよくはあるのですが……」

 黒鍵騎士は近づいてくる魔女からちょっとずつ距離を取ります。子供といえど女の子。そして黒鍵騎士は立派な青年。ひじょーに目の毒な光景です。

 この温泉は男女別れていないので、しっかり混浴状態なのです。

「あははは。黒鍵騎士は純情だからな~」

 腰にタオルを巻いてにゃんこを膝に載せた勇者がからかうように言います。にゃんこは膝の上で大人しく……うとうとしていました。

「そ、そういう勇者殿は平気なようですね」

 勇者を睨みつけながら抗議してみますが、あまり効果はありません。黒鍵騎士としてはいきなり魔王城に現れて自分を拉致した勇者に色々ともの申したいところがあったのですが、それも魔女との混浴状態で一気に麻痺してしまっています。

「いやいや。だって俺、魔王と違ってロリコンじゃねえし」

「………………」

 そういう問題じゃない、とよっぽど言いたそうな黒鍵騎士ですが、賢明にも沈黙を選びました。

「ふふふふ~。濡れてしっとりな尻尾もなかなか……」

「くはぅっ!?」

 お湯の中であやしげな手が動きます。黒い尻尾をさわさわさわさわ。

「あ~。濡れ尻尾も最高~♪」

「ちょ、ちょっと魔女殿!? ここではやめてください! あうっ!」

 びくびくと身体を震わせる黒鍵騎士にうっとりと魅入る魔女。かなり病んでます。

「おーい。魔女さんやい。さすがにこの状況でそれ以上は止めておいた方がいいぞ~」

 にゃんこを膝に載せた勇者がストップをかけてきました。

「なんでさ?」

 セクハラ三昧ご満悦状態の魔女は不満そうに勇者を睨みます。

「いやいや。黒鍵騎士も一応男だからさ。いくら魔女がストライクゾーン大はずれのロリぺったんでも、お互い全裸でそんな場所を弄られたら理性が飛んじゃうと思うんだよ」

「と、飛びません!」

 真っ赤になって言い返す黒鍵騎士ですが、身体の方は正直なのか、ヤバい部分が元気になっています。

「じ~……」

 そしてしっかりとヤバい部分を眺める魔女です。もう少し慎みを持ちましょう。

「あうっ! こ、これはちがっ! だからそのっ!」

 その気はなくとも悲しいかな男の生理現象、みたいな。焦る黒鍵騎士に魔女はにっこりと微笑みます。

「魔王は論外だけど黒鍵騎士ならアリかもね~」

「なっ!?」

 あっさりと爆弾発言をかました魔女に対して、黒鍵騎士は真っ赤になって魔女を引き離します。

「おいおい。本気か? 黒鍵騎士が好みなのか?」

 勇者の方は完全に面白がっています。

「好みってゆーか、この耳尻尾を独占できるなら恋人関係もアリかな~って。顔立ちも悪くないしね~。にゃんこと一緒に両手に耳尻尾。うわ、考えただけで素晴らしい未来予想図!」

「……二股かよ」

 あまりにも堂々とした二股宣言に呆れ果てる勇者ですが、にゃんこの方が既に確定なのが笑えません。

「じょ……冗談ですよね……?」

 びくびくと、おそるおそる上目遣いで魔女を見つめる黒鍵騎士。一体誰の部下なのか忘れてしまいそうな態度です。

「黒鍵騎士は私じゃ嫌?」

「い、嫌というか! そういうのではなく……! 私は魔王陛下の側近であって黒鍵を受け継ぐ騎士でもありましてだからその……魔王陛下のお側を離れるわけにはいかないといいますか色々とええと魔女殿の気持ちは嬉しく思わなくもないのですが……」

 支離滅裂にいろいろとまくし立てる黒鍵騎士でした。完全にパニック状態です。

 女性に対して耐性がなさすぎです。

「ぶっ……!」

「くくっ……!」

 そしてそんな黒鍵騎士を見てお腹を押さえて噴き出しそうになるのを堪えている勇者魔女コンビ。

「あはははははは! 面白すぎだろ黒鍵騎士! いやあ純情だ! お前は乙女以上に純情だ! なあ魔女。悪くないぞ! 黒鍵騎士なら本気で悪くないぞ!」

「あははははは! うんうん。私もそう思う! 浮気とか絶対しなさそう! 旦那さんにするならこういうのがいいかも!」

「………………」

 そこに至ってようやく自分はからかわれていたのだという事に気付いた黒鍵騎士はがっくりと肩を落とすのでした。

「……早く陛下のもとに帰りたい」

 自分が仕えるべき主の元へ、切実に戻りたい黒鍵騎士でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ