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巨人退治の取扱説明書

 魔女は飛行魔法を使って巨人へと飛び掛かります。

「お嬢!」

 傭兵団長が悲鳴にも似た声を上げて魔女を呼びます。巨人が持つハンマーに正面から叩き伏せられるのを心配したのでしょう。

 巨人は命知らずの魔女に制裁を加えようと、先の尖ったハンマーを振り下ろします。

「へっへ~ん。当ったらないよ~だっ♪」

 恐慌状態の傭兵団長達と違って、魔女は余裕ばりばりです。命がかかっている戦いの最中ですら自分を見失わないこの胆力は、ある意味で尊敬できます。

「それっ!」

 そのまま巨人の股をすり抜けます。

 勢いよく地面に陥没したハンマーは、しばらく抜けそうにありません。

「えっと……ここかな?」

 魔女は短剣を巨人の尻に突き刺しました。

「ギャアアアアアアァァァァァアアアアアアッッッッッ!!!」

 その瞬間、巨人は悲鳴を上げて倒れました。

「おおっ!?」

 傭兵団長達が驚きに眼を見開きます。

 ズズン、と地面を揺らす勢いで倒れ込んだ巨人は、そのまま白目を剥いて死亡しました。

「いや~。倒した倒した」

 魔女の方は肩を竦めながらその辺の石に腰掛けます。ちょっと疲れたので一休みです。

 傭兵団の方はおそるおそる巨人の死体を剣で突いています。まだ死んだことが信じられないのでしょう。

 傭兵団長は座り込んだ魔女のもとへ移動して、一体何がどうなっているのかを質問しました。

「いや。だから弱点だよ。弱点。そこを一点攻撃したらああなったの。まさかあそこまで効果覿面だとは思わなかったけどさ」

「だから一体どこを攻撃したんだ?」

「尻の●」

「………………」

「どうやら尻の●が弱点らしいんだよね。だから短剣でかん●ょーしてみたの。そしたらああなったってわけ」

「……お、俺達の苦労は一体……」

 部下を一人死なせかけ、他にも重傷を負って命からがら逃げてきて、それでもここで倒さなければと命懸けの決意と共に戻って来たあの覚悟を、根こそぎ台無しにされた気分です。

「まあまあ、倒せたんだからいいじゃん。この先また巨人を退治する機会があったら役立てればいいんだし」

「そ、そうだな……」

 街の脅威はひとまず去りました。ここは素直に喜ぶべきところです。

 しかしどうしても、どうしても色々なモノが台無しにされた残念気分だけはぬぐい去ることの出来ない傭兵団一同なのでした。


 巨人退治のセオリーはかん●ょ~一発。

 これでで一つ賢くなりました。

 ……賢くなったはずです。



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