似た者同士?
「はあ~い♪ あ・た・し♪」
『………………』
通信魔法を発動させた魔女は、さっそく勇者に連絡を取りました。開口一番にそんな声を届けられた勇者は、ぶっちゃけドン引き状態です。
「おーい。かえってこーい」
『はっ! ゆ、夢か!?』
「違うから。ちょっとした悪ふざけだから」
『そ、そうか……。あまりにも気持ち悪かったからつい現実逃避したくなったぞ』
「………………」
通信越しに攻撃魔法を届ける方法を今度研究してみようと決意する魔女でした。
「……で、かくかくじかじかで……なんだけど。何かいい方法ないかな?」
『ほー。巨人退治か。珍しいことやってんな~』
魔女が勇者を頼ったのは単純な理由です。
単に年の功というか、無駄に長生きしていれば巨人の弱点ぐらい知ってるんじゃないの~? みたいな理由です。
「勇者が来てくれれば一番手っ取り早いけどね」
『あ~、無理無理。俺は今現在、月詠の里で混浴温泉堪能中だから。美女の裸体を目の前にしているのに巨人のむさ苦しい身体なんて見たくねえし』
あまりにも酷い理由でした。
「そっかー。じゃあ弱点だけ教えてよ。後はこっちで何とかするから」
しかし魔女はそれで納得しました。非常に似通った精神性です。
つまりどっちもダメ人間です。
『教えてやってもいいが今度にゃんこを一日レンタルさせろ』
「却下」
『………………』
似通った精神性なだけに趣味も似通っています。相容れるかどうかは別ですが。
「報酬ならオリハルコンでいいでしょ。武器の新調時にでも使いなよ」
『……できればにゃんこの方が』
「じゃあ代わりに黒鍵騎士を拉致ってきてよ。トレードレンタルにしようじゃない」
『なるほど。それでいこう』
……本人たちの知らないところで人身御供的な取引が進められています。にゃんこに関しては魔女に決定権がありますが、黒鍵騎士がとっても哀れです。近々拉致られてしまうであろう黒鍵騎士に合掌。
『で、巨人の弱点だったな。実はな……かくかくじかじか……って感じなんだよ』
「……分かった。面白そうだから私がやってみる」
『がんばれよ~。ちなみに巨人の牙と爪は素材アイテムとしてはかなり高く売れるから倒したら剥ぎ取ってやれ』
「そうする~」
魔女は通信魔法を切りました。
……ちなみにこれだけのんびりで問題ありありな会話を続けている最中、時間稼ぎのために傭兵団達は必死で戦っています。
「弱点分かったよ~」
「お嬢! 待ちかねたぜっ!」
傭兵団のみんなは涙目でした。
自分たちが命懸けで戦っているときにあそこまで気楽な会話をされていたのですから、まあ当然の反応でしょう。
その分、弱点情報への期待は最高潮に高まっています。これで弱点が無効だったら逆ギレして魔女に襲いかかりかねません。
「じゃあいっちょ試してみますか♪」
魔女はサブアームに用意していた短剣を手に取ります。
そして勢いよく巨人へ飛び掛かりました。




