おっきいんです
「うごるぐがああああっ!」
「わー、ほんとにおっきぃ~」
巨人を前にした魔女は、呑気に呟きました。
一度は重傷を負わされて敗走した傭兵団長達は震え上がっています。もちろん倒しに来たのですから、それでも戦う気力は萎えていません。
「ねえねえ、●●●もおっきいねぇ」
「……お嬢、大物過ぎるぜ」
傭兵団長は呆れ半分、感心半分で呟きました。
巨人はほとんど丸裸ですから、人間ならば見えてはいけない場所も丸見えだったりします。
おっきいんです。
……何がとは言いませんが。
……言えませんが。
さっそく傭兵団長達は攻撃を開始しました。
まずは弓担当が遠距離攻撃を。
ある程度巨人を怯ませたら、今度は剣を持った部下達が斬り込みます。
重傷を負った部下も愛しの団長の為に頑張ります。
愛があれば巨人退治だって出来ると信じています。
愛は偉大です。
魔女の方は、こまめに魔法を使います。
「ぶちっ、ぶちっ、ぶちっ」
魔女がそう言う度に、巨人の身体がびくびくと硬直します。確実にダメージを与えているようです。
「……何をしてるんだ? 決定打にはなっていないみたいだが」
「ん? すね毛を抜いてるんだよ。痛いだろうと思って」
「………………」
確かに効果的ですが攻撃がみみっちいです。
「そろそろ大規模魔法を頼みたいんだが」
「え~、もうちょっとすね毛抜きたい。それが終わったら●●毛に挑戦するつもりだったのに……」
「お願いします! 早く大規模魔法を発動させて下さい!!」
巨人の為にも! と切実に傭兵団長が頭を下げました。
目の前で●●毛を抜かれて悶え苦しむ巨人の姿など、見るに堪えません。
「ちぇ~。分かったわよ~。まったく……」
ぶつぶついいながら魔女はルナソールに込めた大規模破壊魔法を発動させます。
「トールハンマー!」
魔女が呪文を発動させた瞬間、空が一気に曇り、大量の雷が降り注ぎました。天候操作魔法に雷撃圧縮をアレンジしているのでかなり強烈なダメージを叩き込めているはずです。
魔女の真骨頂は呪文アレンジです。
本来のトールハンマーは広域殲滅呪文ですが、今回は巨人に一点集中しているので局地的な破壊力は他の追随を許しません。
当然、それを食らった巨人もただでは済まないはずです。
「………………」
「………………」
ただでは済まないはずなのですが、ほとんど無傷でした。
「ええと……なんで?」
傭兵団長が唖然としながら呟きます。今回は魔女の大規模攻撃を切り札と考えていました。それが全く効かないとなると、退治は絶望的です。
しかし魔女の方は冷静でした。
巨人を分析して、解答に至ります。
「うーん。どうも、魔法防御力がぱないみたいだよ。あの巨人、どこかの神様の血を引いてるみたい」
「なっ!?」
巨人族ならば神様の血を引いていることも珍しくありませんが、まさか人間に迷惑をかけているはぐれ巨人がそうだとは、まったくもってついていません。
「うーん、困ったぞ」
あんまり困っていない風に魔女が唸りました。
余談ですが、すね毛ぶちぶち魔法が効果有りだったのは、純粋魔法ではなく小型精霊を使役してぶちぶち抜かせていたからです。
●●毛を抜く羽目にならなくて、小型精霊さんも心底ホッとしていました。




