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おばけが来たっ!

 魔女とにゃんこがスカルくん達の待つ愛しの我が家へと帰ってきて、数日が経過しました。

 にゃんこはいつも通り魔女のお手伝いをしたり、スカルくん達と遊んだりしています。

 勇者に文字を教えて貰ったので最近は読書にも熱心です。

 まだまだ魔導書は読めませんが、初心者用教本ぐらいなら問題なく読めるようになりました。

 分からない文字があると、

「ますたぁ。これなんってよむの?」

 と訊いてきます。

 魔女との萌え約束をきっちり守ってひらがな喋りのままです。

 漢字喋りにしても魔女はにゃんこを嫌いになったりしないことは分かっていますが、それでもこのままの方がより好ましく思われるのでにゃんこはひらがな喋りを続けています。

 大好きな魔女にはめいっぱい愛されたいのです。

 なんて健気なんでしょう。

 ここまで性格の違う主従関係というのも珍しいのではないでしょうか。

 あの魔女を相手にしているのにまったく、これっぽっちも、欠片ほどもひねくれる気配がありません。

 天然記念物級の健気っぷりです。

 きっとにゃんこは最上級の儀式魔法が使えるようになったとしてもひらがなで呪文を唱えてくれるでしょう。

 素晴らしい未来予想図です。


「こちらに紅の魔女はいるかしら?」

 唐突に客人がやってきました。

「?」

 にゃんこは首を傾げてしまいます。

 喋り方は女の人なのに、声はかなり低いからです。

 まるで男の人のようです。ちょっとだけしゃがれた声になっています。

「たまにいるんだよね。『ハスキーボイス』っていうんだけど。声に似合わず外見は美人だったりするから『ギャップ萌え』とかいう場合もある」

 魔女の言葉を思い出しながらにゃんこは玄関に向かいます。

「えっと、はすきぃぼいすで、ぎゃっぷもえのひと?」

 微妙な単語を連ねながら扉を開けました。

「こんにちは。あら可愛い猫さんねぇ」

「っ!?」

 扉を開けた瞬間、にゃんこは硬直してしまいました。

 外で仕事をしているはずのスカルくん達も残らず硬直してしまっています。

 魔女が見ていたら『サボってると材料にしちゃうぞ!』とか一括されそうな光景です。

 もちろん魔女の恐ろしさを知っているスカルくん達は好き好んで仕事をさぼったりはしません。

 しかしこの状況で平然といつも通りに振る舞えるほど、図太い神経の持ち主でもありません。

 そもそも神経などとっくの昔に失っていますが、そこは言葉のアヤと言うことで。

「あわわわ……あわわわわ……」

 にゃんこも自失状態になりかけています。

「どうしたの?」

 真っ青になったにゃんこを見て、お客さんは心配そうに屈み込んできます。

 その頬に触れようとして、にゃんこは真っ先に逃げてしまいました。

「ますたぁーっ! おばけーっ! おばけがきたーっ! たすけてぇぇぇぇっ!!」

 泣きながら魔女の所に駆け込んでいきます。

 ついこの前生霊を見たばかりだというのに、お化けが怖いというのも失笑ものですが、そこはにゃんこを 責める方が酷かもしれません。

「ま、お化けとは失礼な子供ねっ!」

 客人は玄関で立ちつくしながら失礼なにゃんこの背中を睨みつけました。

 客人の風体を今更ながらに説明すると、筋肉質・長身・厚化粧・フリフリのワンピース・偽物の巨乳、といったところです。

 つまり、もの凄く無理のある厚化粧筋肉質オカマでした。

 ……そりゃあにゃんこも逃げ出すはずです。

 お化けに見えても仕方がありません。

 こうして魔女の家は初のオカマを客人として迎えるのでした。



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